二重国籍の問題とは

二重国籍について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

次のような報道がありましたので,それを基に解説をします。

国籍はく奪条項違憲訴訟 最高裁判決

みずからの希望で外国の国籍を取得すると、日本国籍を失い、二重国籍が認められない国籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の訴えを退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
日本の国籍法は、外国の国籍をみずからの希望で取得した場合、日本国籍を失うと規定していて、二重国籍を認めていません。
国籍法の規定が、憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の上告を退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。これについて、スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った人など、8人は「意思に反して国籍を奪う法律の規定は個人の尊重を定めた憲法に違反し、無効だ」と主張して、国に日本国籍があることの確認と賠償を求めました。
2審の東京高等裁判所は今年2月、「複数の国籍を認めると、どの国が個人を保護するかをめぐって国家間の摩擦が生じたり、納税や兵役などの義務について矛盾が生じたりするおそれがある。
国籍法の規定は、その原因となる二重国籍をできるかぎり防ぎつつ、国籍を変更する自由を保障していて合理的だ」として、1審に続いて憲法違反ではないと判断して、訴えを退けました。
原告側は上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の岡正晶裁判長は、2日までに上告を退ける決定をし、国籍法の規定は「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
「二重国籍認めないのは“憲法に違反せず” 上告退け確定 最高裁NHK 2023年10月2日 17時52分」

この裁判は外国籍を取得すると日本国籍を失うとする国籍法の規定は憲法に違反すると原告側が裁判所に訴えた事件です。争点となった国籍法は国籍法11条1項です。
では国籍法11条1項の条文を見てみます。

〔国籍の喪失〕
第11条 日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、日本の国籍を失う。

「自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、」とはどのような状況かというと、例えば日本人がアメリカにある企業に就職した。あるいは科学者等がアメリカの大学に研究目的で渡米して、アメリカの土地柄や会社、研究所が自分に合っていた等の理由で、最初はアメリカの永住権を取得して、そのうちアメリカで市民権を得たいのでアメリカ国籍を取得するといったことが考えられます。
日本人がアメリカ国籍を取得するとどうなるかというと、国籍法11条1項の手続に従うと、アメリカ国籍を取得すると自動的に日本の国籍を失います。自動的に失うとはどのような意味かというと
アメリカ国籍を取得するのと同時に日本国籍を失うということです。

この場合日本国籍を失っていても日本の戸籍簿に反映されているわけではないので、「実質的に失われている」と表現されます。
アメリカの国籍を取得していながら同時に日本の国籍も保持しておきたいとするのは認めません、
いわゆる二重国籍は認めませんというのが国籍法11条1項の趣旨です。

この場合、自分は日本国籍を失う意思はなかった。日本国籍を失うのならあえてアメリカ国籍を取得することはなかったと言い張ってもそれは後の祭りとなります。
法務省側から言うと、国籍法11条1項に「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」と書いてあります。
法律で書いてあることに気が付かないのはあなたの責任で、こちらではきちんと法律に従った運用をしています。と言う見解です。
今問題になっているのは、国籍法11条1項の存在を知らず外国の国籍を取得したことで、自分の知らないうちに日本国籍を失った元日本人の方たちが少なからず実在していることです。
ここでは日本のパスポートの使用がどうなるのかということや、そもそも自身の日本人であるというアイデンティティはどうなっているのかが問題となってきます。
国籍法11条1項の問題は二重国籍に関する問題ですが、外国人が日本国籍を取得する場合の方法として帰化があります。

外国人が日本国籍を取得する場合と日本人が外国籍を取得する場合では扱いが異なります。
外国人が日本に帰化をすると日本に帰化をした外国人は元の国の国籍を離脱しなければ二重国籍となりますが、国籍法では帰化をした日本国籍取得者に本国での国籍を離脱することを強制する手続きは取っていません。
あくまで本国の国籍を離脱するか否かは自身の判断にゆだねられます。それゆえ日本国籍と本国の国籍の二重国籍が発生する余地が生じます。
しかしながら日本人が海外で外国の国籍を取得すると自動的に日本国籍を失うので、二重国籍が生じる余地はない、ということになっています。
国籍法第11条1項の規定は、日本人が海外国籍を取得した場合、自動的に日本国籍を喪失させる規定ですが、本人が例えこの条文を知ってても知らなくても(国籍法11条1項を知らないことに過失がなくても)外国籍を取得した日本国籍者は外国籍を取得した瞬間に日本国籍を失い外国人であることが確定されるというわけです。
せめて外国国籍を取得したことをもってあなたは日本国籍を失いました、と法務局から通知でもあればいいのですが、現状ではそれもありません。

従って外国の大使館や海外の外資系企業に勤務していて、周囲がみんな外国籍だから自分も周囲の人と同じ国籍を取得してみようかな、くらいの気持ちで海外にいる間にその国の国籍を取得して、しばらくたって海外の国籍を取得したことも忘れたころに日本に帰国すると、いつのまにか自分が知らない間に日本国籍を失っていた、ということもあり得るわけです。
自分はずっと日本人と思っていたのに知らないうちに日本国籍を失っていてなぜか外国人となりしかも日本にいる間は外国人として在留資格を取得していないので不法滞在状態になっているという、
これまで想像すらしていなかった恐ろしい現実に直面する危険性があるという事です。このように日本人が他の国籍を取得するという事は、同時に日本国籍を失う事と直結するということです。
海外の国籍の取得を希望する方は、是非国籍法11条1項について覚えておくとよいと思います。
日本国籍の喪失に関わる極めて重要な規定となっています。

国籍に関してお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

keyboard_arrow_up

0359890843 問い合わせバナー 無料相談について