弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が再審情願について解説します。
(架空の事例です)
A君とB子さんは南米にあるC国出身の恋人同士です。ともに20代前半でお互い小学校低学年の頃に日系2世の両親に連れられて日本に来ました。
2人は小学校・中学校まで一緒の学校で二人は幼馴染でした。
A君は中学卒業後、両親の都合でいったん家族と一緒にC国に帰りましたが、最近また日本に戻ってきました。今度は単身での来日で、A君はD県にある大手自動車部品メーカーに派遣社員として働くことになりました。
B子さんは現在D県にある有名国立大学の4年生で、昨年日本国籍を取得しました。
来春から地元の大手自動車メーカーのT社に就職も決まっています。
2人は昨年5年ぶりに再会して恋人同士になりました。
2人はB子さんが大学を卒業したら結婚しようと誓い合いました。
2人が交際を始めてから2年目の夏、A君はお盆期間で会社が長期連休の時に市内の繁華街にあるクラブに友達と遊びに行きました。
少し羽目を外してお酒を飲み過ぎたので、酔い覚ましに友達と入った喫茶店で、たまたま店にいたお客さんとささいなことで口論となり、思わず相手を殴ってしまいました。
A君は体が大きく相手が小柄だったこともあり、相手の鼻を骨折させてしまいました。
相手側が骨折した診断書を警察に提出したこともあり、A君は傷害罪で起訴されました。
A君は裁判所で懲役1年6月、執行猶予3年の有罪判決を受けました。A君は控訴することなく判決は確定しました。
判決の日から3か月後がA君の在留期間の満了日でした。
A君は在留期間満了日の20日前に自分の在留更新申請手続きを行いましたが、在留期間経過後に入管から在留更新結果の通知が来ました。
A君は入管からの通知のハガキを持って出頭しました。
A君の在留更新申請は不許可でした。A君は在留申請不交付通知を受けたのち、その場で帰国準備の為の特定活動30日に在留資格変更手続きをしましたが、A君は既に仕事をやめていて所持金がないこともあり、結局C国行きの航空チケットを買わずに帰国することなく特定活動の30日間が過ぎてしまいました。
その後A君は入管から呼び出しがあり入管に出頭したところ、A君は入管施設には収容されずに仮放免となりました。それからA君は毎月1回入管に出頭していましたが、入管に出頭を始めてから半年後、いつものように入管に出頭したところ、そのまま入管施設に収容されてしまいました。
入管施設に収容されてしばらくしてからA君に退去強制命令が発布されました。
退去強制命令がA君に出された後、B子さんがA君の監理人となりA君は入管の収容施設から出てB子さんと一緒に暮らし始めました。
A君としてはB子さんと結婚の約束をしているし、C国に帰ったら無期限で日本に入国できないと知人から聞いていたので、A君は絶対にC国に帰りたくありません。
B子さんもA君を帰国させたくありません。
A君が日本に残ってB子さんとの生活を続けていくためにはどうしたらいいのでしょうか?
A君は退去強制命令を受けているので、このままでは日本に残ることができません。
いずれ退去強制手続きが執行され、A君は日本を離れることになります。
A君が日本に残るためには入管に在留許可を認めてもらう必要があり、A君が日本に残るための申請手続きとして、再審情願という手続きがあります。
再審情願とは
再審情願とは、退去強制発布処分後に事後的に生じた事情に鑑み、適法になされた当該処分を撤回して日本での在留を認めなければ人道上極めて問題であるといえる場合に、法務大臣に退去強制処分を撤回して在留を特別にお願いするものです。
法律によって手続きが定められているものではなく,あくまで法務大臣が裁量によって処分を撤回して在留を認めるという例外的な手続きです。裁判上も,法務大臣が再審情願に対して何かしらの回答をする義務までは認められていません(参考判例平成26年1月30日判決)。
具体例として日本人と恋愛関係にある外国人が日本人の交際相手と結婚を予定していたところ、何らかの理由で在留資格を失ってしまい、退去強制処分が出る前に婚姻手続きが間に合わず、退去強制処分後になって婚姻手続きが成立した場合等があげられます。
A君、B子さんのケースでは、まず第一にA君、B子さんの結婚手続きを済ませることが必要です。
B子さんは日本国籍なので、AさんはB子さんと結婚して「日本人の配偶者」となり、「日本人の配偶者等」の在留資格を認めてもらう申請をします。
A君の再審情願を認めるかどうかは法務大臣の裁量となりますが、再審情願の裁量は在留特別許可を判断する時の法務大臣の裁量よりも広いとされています。
従って再審情願を認めてもらうためには、単にA君とB子さんの2人が結婚したという事実のみを伝えるのではなく、結婚に至ったいきさつや動機も含めて、本来退去強制処分が発布されて本国に帰国しなければならないA君が、なぜ日本に残ることが必要なのかを丁寧に訴えていく必要があります。
理由書を作成してA君の在留許可の必要性を訴えたり、家族や知人に嘆願書を書いてもらうことも必要かもしれません。本ケースではB子さんはまだ大学生で就職しておらず、就職しない段階で結婚して再審情願をしても、2人は独立して生計を立てていく能力が乏しいと判断されるかも知れません。
そこでB子さんが就職して給料を得るようになってから再審情願を行うなど、2人が結婚してから生活できる経済力があることを示すことも重要になります。
またA君の在留許可が認められるまではA君は仕事ができません。
そこでA君が仕事が出来ない間は、B子さんがA君を養っていく必要があります。いつA君の在留許可が認められるかわからない状況で、B子さんが1人でA君の面倒を見ていくのは大変ですが、お互いの真摯な愛情を入管に伝えることができれば、A君の在留許可が認められるチャンスはあると思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では再審情願による申請手続きを扱っています。
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