Archive for the ‘未分類’ Category

上陸拒否の特例について

2024-04-16

上陸拒否とは、特定の理由により外国人が日本に入国することを拒否される法的措置です。
日本国内でオーバーステイ等により強制送還された人が再入国を希望する場合、上陸拒否の特例が適用されることがあります。
ここでは上陸拒否の特例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が法的な背景と具体的な事例を交えて解説します。

事例

(架空の事例です)
Aさんは中学から高校に入学する段階で、東京におばあさんが住んでいたことから、東京の高校に留学することにしました。
Aさんは高校受験,大学受験と勉強に励み,日本の大学へ進学します。
ある時Aさんはサークル仲間のBさんから、「この葉っぱをタバコのようにして紙に巻いて吸ってみなよ。疲れが取れるよ。」と微量の大麻草を譲り受け,「少しくらい吸ったところでどうせばれないだろう」,と思い、軽い気持ちで大麻を吸うことにしました。
Aさんが公園で大麻を吸っているときに、たまたま公園を巡回していた警察官に見つかり現行犯逮捕されてしまいました。その後Aさんは裁判所に起訴をされ、裁判では懲役8月執行猶予3年の有罪判決を受けました。
Aさんは在留資格の取消しこそなかったものの、この事件が原因となって翌年の在留更新が不交付となり、本国に強制送還となりました。
本国に帰ったAさんは、インターネット関連の事業会社を立ち上げ現在急成長をしています。
Aさんは自分が青春時代を過ごした日本でネットビジネスを手掛けたいと考えていますが、自身は大麻取締法で有罪判決を受けていることから無期限上陸拒否(出入国管理及び難民認定法第5条四項,以下法)となっており、日本でビジネスをするどころか遊びに来ることすらできません。
Aさんはこのまま2度と日本に入国することはできないのでしょうか?

法務大臣の裁決の特例としての上陸特別許可について

Aさんが再入国しようとした場合,次の規定による許可を求めることになります。

(上陸の拒否の特例)
第五条の二 法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。

(条文解説)
法第五条の二は、平成21年法律第79号による入管法の改正で新設されました。
この条文が規定される前は、上陸拒否に該当する者についてはたとえ人道上許可すべき事情があるような場合であっても、通常の上陸許可をすることができず、そのような者に対して上陸を許可する場合には、異議申出の手続きを経て上陸特別許可を行う必要があり、手続きが大変面倒でした。

このことについて「平成21年度入管白書」によると、「例えば、退去強制歴があるため上陸拒否期間中の外国人が、本国で日本人と会って結婚した場合に、法務大臣が、諸般の事情を考慮して上陸特別許可を与えたような場合であっても、その後、その外国人が本邦に再上陸しようとするたびに、入国審査官、特別審理官、法務大臣と三段階の手続きを経て上陸特別許可をしなければならないことになるなど、合理的といえない場合もあることから、上陸拒否に該当する特定の場合であっても、法務大臣が相当と認めるときは、上陸を拒否しないことができる規定を設けた」と記載されています。(入管法大全P60)。

上陸拒否の特例における具体的な申請方法としては,在留資格認定申請証明書により日本から上陸拒否となっている外国人を呼び寄せ、在留資格認定証明書での審査を通して入管側が上陸特別許可の判断を行います。
上陸特別許可のように入国審査官→特別審理官→法務大臣の三段階の手続きが省略され,手続が大幅に簡略化されています。
次に法第五条の二にある「相当と認めるとき」とは、具体的にどのような場合に「相当と認めるとき」に該当するのかについてですが、「平成25年5月10日の衆議院法務委員会において、榊原法務省入国管理局長(当時)によると「相当と認めるとき」とは、「上陸拒否事由に該当する者であっても、
その入国目的に照らし、法務大臣が上陸を求めることが相当と判断する場合には、入管法第5条の二や第二十二条に基づき上陸を認めることがあります。」と述べ、さらにその判断の基準についての質疑に対して、「個々の事案ごとに、入国目的、上陸拒否事由の内容、当該事由が発生してから経過した期間、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断することになります」とあります。
(入管法大全P63)

そこでAさんについて上記に記載された「相当と認めるとき」をあてはめてみます。
Aさんは日本で会社を立ち上げインターネットビジネスの事業を展開したいと考えているので、「経営・管理」の在留資格で在留資格認定申請証明書により在留資格申請を行います。
以下①~④の事情を総合的に考慮して、Aさんが日本で「経営・管理」の在留資格が判断されることになります。
①入国目的:すでに本国で一定の成果を上げている自身が立ち上げたインターネットビジネスの会社を日本で立ち上げたい。
②上陸拒否事由の内容:軽い気持ちで大麻を吸ってしまった。Aさんは現在、当時の過ちを深く反省している。
③当該事由が発生してから経過した期間:Aさんが強制退去で本国に帰国してから丸10年が経過した。
④その他諸般の事情:Aさんは大変優秀な起業家であり、日本にもAさんが手がけるビジネスの協力者がたくさんおり、Aさんの事業は日本でも有望視されている。

上陸拒否の特例に関する理解を深めることは、退去強制を受けたあるいは日本で有罪判決を受け上陸拒否となった外国人で、再入国を希望する人々にとって重要です。
上陸拒否の特例の適用は大変複雑であり、個々のケースによって対応が全く異なります。
上陸拒否の特例を利用して日本に再入国したい場合は、入管業務に精通している弁護士や行政書士に法的なアドバイスや支援を求めることが、
上陸拒否の特例の活用において非常に重要となるでしょう。

在留特別許可,上陸特別許可(上陸拒否の特例)についてご不安なことがある方や,強制送還された人の再入国についてお問い合わせのある方は,こちらからお問い合わせください。

keyboard_arrow_up

0359890843 問い合わせバナー 無料相談について