在留資格「経営・管理」の取得要件緩和について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
出入国在留管理庁は、外国人の起業を増やすために2024年度中に、「経営・管理」在留資格の要件に関する省令を改正する予定です。
日本国民や永住者、日本人の配偶者などの在留資格があれば、国内で自由に会社の経営や役員職につくことができますが、外国人は在留資格に応じてこれらの職に就くことについて制限されています。
「経営・管理」の在留資格とは、外国人が日本で会社経営や管理職として勤務ができる在留資格であり、以前は「投資・経営ビザ」として知られていましたが、現在では外国の資本が関与していなくても取得が可能となったため、名称が「経営・管理ビザ」に変更されています。
通常、「経営・管理」の在留資格での在留期間としては、3ヶ月から5年までの間の複数の期間が設定されていますが、申請者の提出した計画や状況により在留期間は決定され、初回では1年間が標準的な期間となっています。
外国人が「経営・管理」の在留資格を取得した場合、基本的には1年更新の在留資格であるため、原則として1年ごとに在留期間の更新手続きが必要になります。
「経営・管理」の在留資格の取得要件として、①独立した事業所の確保、②500万円以上の出資金又は2名以上の常勤職員の雇用、③事業の安定性・継続性が求められます。
以下、各取得要件についてご説明いたします。
・事務所の確保
「経営・管理」の在留資格を取得して日本で会社を設立するためには、事務所を確保する必要があり、「経営・管理」の在留資格を取得するには、独立した事務所が必要です。
事務所ごとに明確な仕切りがないバーチャルオフィスやレンタルオフィスでは事務所としては認められず、また原則として、自宅として利用しているアパート、マンションなどを事務所とすることもできません。
・事業規模の要件と安定性,継続性
「経営・管理」の在留資格を取得するためには、「経営・管理」の在留資格を取得する外国人本人による500万円の出資金又は日本に居住する常勤職員(日本人、特別永住者、日本人の配偶者、永住者等)を雇用するなどの事業規模が必要です。
設立する会社の事業に適正性、継続性と安定性があることも求められます。
事業内容や収支見込み、事業計画書などを提出して、適正性、継続性と安定性を示します。
ビジネスの実体があり、利益をだし事業継続できるのかという点について審査されることになります。
したがって、何年にもわたって赤字を出し続けることが想定される会社は認められません。
2024年度に独立した事業所の確保及び500万円以上の出資金の要件の緩和、在留期間が1年から2年への延長が予定されています。
また、在留期限の更新に際しても、一般的には毎年の更新が見込まれていますが、運営する事業経営状況や経営者の在留履歴、事業の規模、素行などに応じて、更新期間を2年や3年と延長することが許されるケースも存在します。
日本で会社を経営するために取得する「経営・管理」の在留資格では、学歴や職歴要件は要求されていませんが、誰でも申請ができる反面、日本で会社経営ができるのかという、事業規模と事業計画の面が厳しく審査されることになります。
2024年度の改正により、経営管理の在留資格取得の要件が緩和されると言われています。
具体的には、以下のように各取得要件が緩和がされる改正が予定されています。
従来は原則1年の在留期間であったのに対して、2年間に延長される予定です。
また、日本国内の独立した事業所の確保という要件についても、大学の研究室の一部などに拠点を設置する方法でも可能とされる予定です。
さらに、500万円の出資金又は2名以上の常勤職員の採用という要件についても、出資金なしでも可能とされる予定です。
これらの改正が実現されると、今まで認められなかった共同事務所での間借りやシェアオフィスでの事業所利用なども可能となります。
以上のように、外国人が起業しやすい環境をつくることで外国人起業家を増やしていく方向性が示されましたので、今後の法改正について注目が必要となります。