報道解説 民泊経営による経営管理ビザの取得について

「民泊経営が移住の手段に」――。大阪で中国系民泊急増、SNSに「ビザ取得は簡単」
読売新聞オンライン 

こちらの報道を踏まえて,経営管理ビザについて解説します。

■日本のビザは「安すぎる」

「在留外国人統計によると、日本で暮らす中国人は2024年6月末時点で84万4187人で、過去10年間で約20万人増えている。特に経営・管理ビザで滞在する中国人は急増し、2024年 6月末時点で2万551人で、同ビザが設けられた2015年の2・8倍に増えた。  
移住する中国人が増える背景には、ゼロコロナ政策への反発や経済状況の悪化に伴う将来不安がある。  
中国では海外移住を意味する「潤(ルン)」という隠語も広がっている。発音表記が英語「run」と同じことから「逃げる」の意味で使われているという。
日本が人気を集める理由には、生活環境や中国からの近さがあるが、条件面もある。
海外移住コンサルティング会社「アエルワールド」(東京)の大森健史社長(50)は経営・管理ビザの要件「資本金500万円」について「格安だ」と言う。
大森氏によると、米国の同様のビザ(投資駐在員ビザ)を取得するには、20万~30万ドル(約3000万~4500万円)程度の投資が必要とされ、永住するには最低80万ドル(約1億2000万円)以上の投資が求められるという。
2022年に上海から経営・管理ビザで来日した王紅運さん(40歳代、男性、仮名)は、大阪市内にタワーマンションなど複数の不動産を持つ富裕層だ。「500万円で移住できる日本は安すぎる」と言い切った。
松村教授は「経営・管理ビザは、日本で事業を行う外国人のための在留資格だが、移住のために安易に使われているのではないか。
今後も移住する中国人が増えるとみられ、日本社会とのあつれきをうむ可能性もある。民泊を含め、事業の実態があるのかしっかりとチェックすることが必要だ」と指摘している。」

1.「経営・管理」ビザとは

外国人が日本でビジネス目的で滞在するための在留資格の一つとして「経営・管理」があります。
外国人が日本で事業活動を行う際に必要となる在留資格で2014年までは「投資・経営」と呼ばれていました。
「経営・管理」ビザの特徴として、年齢、学歴、職業経験、言語能力、婚姻状況、納税状況、資産、収入等の要件がないことがあげられます。
経営管理ビザを取得できれば、配偶者や子を家族滞在で呼寄せることができ,社会保険にも加入できます。
中国人の間では500万円以上のお金を日本に投資をすれば「割と簡単に取得できる在留資格」として人気が高く、2023年12月末の段階で、「経営・管理」ビザ全体の37,510人のうち中国籍19,334人で全体の51,5%が中国籍となっています。
近年「経営・管理」の在留資格で日本に滞在する外国人の中には、元々日本での経営活動にはあまり興味関心がなく、日本に移住する目的で「経営・管理」の在留資格を取得するケースも見受けられることが指摘されています。

2.「経営・管理」ビザの審査基準について

上記記事には経営・管理ビザを取得して「500万で移住できる日本は安すぎる」との記述がありますが、実際には500万を出資しただけでは「経営・管理」ビザを取得することはできません。
「経営・管理」の規模の要件における審査基準として第1号から第2号まであげられています。

(入管審査要領)以下解説します。
 第1号
「事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されない場合にあっては、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。」

事業所は単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われることが必要です。
いわゆるバーチャルオフイスは認められません。独立した事業所を賃貸するか取得する必要があります。
また経営活動において人及び設備を有していて、継続的に行われている必要があります。

第2号
「申請に係る事業の規模が次のいずれかに該当していること。
イ その経営又は管理に従事する者以外に本邦に居住する二人以上の常勤職員(法別表第1の上覧の在留資格をもって在留する者を除く。)が従事して営まれるものであること。
ロ 資本金の額又は出資の総額が五百万以上であること。
ハ イ又はロに準ずる規模であると認められるものであること。

第2号は外国人が経営又は管理に従事する事業の「規模」について定めたものです。
第2号イは、経営又は管理に従事する外国人以外に本邦に居住する常勤の外国人職員が2人以上勤務する事業であることを要件とするものです。
この要件を満たす場合は500万以上の出資は必要ありません。

第2号ロは、事業が会社形態で営まれる場合を前提とする規定であり、株式会社における払込済み資本の額(資本金の額)又は合名会社、合資会社又は合同会社の出資の総額が500万以上の事業であることを要件とするものです。

第2号ハは、イ又はロのいずれにも該当しない場合に、イ又はロに準じる規模であることを要件とするものです。

基準1号、2号から見てわかる通り、500万円以上の出資の他に事務所賃貸又は購入費用、法人設立費用等が必要であり、日本の都市部で「経営・管理」ビザを取得するには少なくとも初期費用として700万円から800万円はかかると思われます。

もっとも富裕層で日本の経営・管理の取得を考えている方々から見ると500万も800万もさして違いはなく、おなじ条件の在留資格を取得するのにアメリカでは日本の3,5倍程度かかることを考えると確かに日本の「経営・管理」ビザはリーズナブルでお得な在留資格であることは否定できません。
しかしながら経営・管理の在留資格が費用面で比較的リーズナブルに取得出来ても、事業の継続が難しくなれば次回の在留更新が難しくなる場合があるので注意が必要です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「経営・管理」ビザの手続きを取り扱って降ります。
「経営・管理」ビザについて興味・ご関心のある方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問合せください。

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