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不法就労における企業側の予防対策
不法就労における企業側の予防対策について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.就労資格のない外国人が日本で働くための道具として、偽造在留カードが出回っています。
最近の偽造在留カードの中には大変精巧に作成されていて、素人目には本物と偽物の区別がほぼつかない物があります。
偽造在留カードを作成する目的は色々考えられますが、目的の一つに偽造在留カードを使って身分を欺いて事業所で働く目的があると考えられます。
不法滞在者の中には、不法滞在中に犯罪を生業にして生計を立てるよりは、きちんとした事業所で働いて安定収入を図る方が安全に生活出来て稼いだお金を本国に送金しやすいと考える者も少なからずいます。
就労資格のないにもかかわらず安定した仕事と定期収入の機会を狙って求人募集をしている事業所の面接を受け「自分は本当は在留資格がなく不法滞在なので本来仕事はできませんが、採用されたら日本人よりも頑張りますから採用してください」とアピールしたも、採用どころか不法滞在で入管に通報されるでしょう。
そこで偽造在留カードを作成して、人手不足で悩んでいる事業所をだまして就労する機会を得ようとします。
近年,中小メーカーを中心に人手不足が慢性化しており、中小メーカーを中心に派遣会社を通して募集しても人が来ない、ハローワークを通しても人が来ない等人手不足に悩む企業が多く、喉から手が出るほど人手が欲しい状況の中で、「採用するなら日本人限る」から「きちんと仕事してくれるなら外国人でも構わない」と企業側の採用マインドが変化してきています。
こうした背景において、人手不足で悩んでいる会社につけ込み就労資格のない外国人をあっせんして人手不足に悩む事業所に送り込むブローカーも絡んでいます。
2.偽造在留カードを提示されたことにより、正規の在留カードであると誤信して就労資格のない外国人を雇用した場合の受入れ側の責任について。
偽造在留カードであることを見抜けずあたかも就労資格のある外国人と思い込んでしまい、不法滞在者を主とする就労資格のない外国人を雇用してしまった場合、不法就労者を受入れた側は不法就労を見抜けなかったことについて不法就労助長罪等、不法就労に関する罪の成立を免れることはできるでしょうか?
不法就労助長について定めた入管法第七十三条の二には
「前各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らなかったことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」
とあることから、単に不法就労であることを知らなかったというだけでは不法就労をさせた責任を免れることはできません。
不法就労助長罪の適用を免れるためには、採用に当たり不法就労であることについて過失がなかったことまで求められます。
外国人の採用にあたって,「本当に働けるビザを持っているのか」という点を,適切な方法できちんと調べなければならないのです。面接のときに「ビザを持っていますか?」と口頭で聞くだけでは,「適切な注意を尽くさなかった」とされ,本当に不法就労であることを知らなかったとしても逮捕されたり,処罰されたりしてしまうことがあるのです。
また,不法就労をした側の外国人は、刑事罰の有無にかかわらず強制送還の対象となります。
例えば強制送還された外国人がメーカー等の生産工程に配属されていた場合、生産工程は作業者の人員区分が決まっているので、強制送還されて一度に何人もの人員が欠けると生産工程が人員不足でストップしてしまい、指定された期日に製品を納品することができないことも考えられます。
そうなると不法就労者を雇用してしまった事業者側は、経済的にも信用の面でも甚大なダメージを受けるおそれが生じます。
それゆえ継続的で安定した事業経営の為には、不法就労者の雇用は絶対に避けるべきです。
3.採用する側が偽造在留カードを見破る具体的方法について
在留カード等読み取りアプリを活用する方法があります。
在留カード及び特別永住者証明書のICチップに記録された氏名等の情報を表示させ、在留カード等が偽造されたものでないことを確認できるアプリケーションです。
偽造在留カードを見破るうえで効果的な方法ですが、確認には本人の同意が必要です。
もし本人が在留カードのアプリ確認に同意しないなら雇用は控えるべきです。
もう一つ偽造在留カードを見破る有効な方法として、採用にあたり住民票の提出を義務付けるという方法があります。
平成24年7月9日以降、3か月以上日本に滞在する外国人には日本人と同様に住民票が作成されることになりました。住民票と在留カードはセットになっており、在留カードが発行されれば住民票が発行され、在留カードが発行さなければ住民票も発行されません。
万が一在留カードの読み取りアプリの使用方法を間違っていたりカードの見落としがあっても、住民票と在留カードの記載事項を照合することにより,偽造在留カードを見破ることができます。
採用予定の外国人に住民票の提出を求めたときに、住所変更したので住民票がまだ出来ませんという回答や在留資格変更をしてまだ住民票に記載事項が反映されません、という回答があった場合は、住民票に変更事項が記載されるまで本採用は控えたほうが賢明でしょう。
住民票の偽造も全く考えられなくはないので、委任状を作成して本人の代わりに採用者側が住民票を取り寄せるという手もあります。
また技能実習生の転職は原則認められておらず、特定技能外国人の転職については事前に在留資格変更許可が必要であるということは、外国人を雇用する側の前提知識として押さえておくとよいでしょう。
以上不法就労と受け入れ側の対策について解説をしました。
外国人を不法就労させたことにより問題を抱えている事業者の方や外国人従業員の採用に当たって心配な方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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永住申請は難しくなったのか?許可基準を解説
「最近永住許可申請が難しくなったのではないか?」という声を耳にすることがあります。
永住許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
直近では2024年6月にも永住許可に関するガイドラインが改訂され、納税、公的年金及び公的保険料の納付の義務を適正に履行されていることが永住審査の要件として追加されました。
2024年6月改訂版 永住許可ガイドライン 出入国在留管理庁HP
その結果、永住許可申請に必要な書類のハードルが改訂前よりも高くなりました。
最近永住許可を取るのが難しくなったという声をよく聞きます。
弊所においても,
「昔(今から20年以上前)の永住許可は簡単だった。2年間の社会保険納入歴の書類や5年間の納税・課税証明書の書類提出は求められておらず、永住許可を申請すれば誰でも取得できた」
という話を聞いたことがあります。
では近年永住許可は本当に取得するのが難しくなってきたのか、今から10年前の2014年と昨年(2023年)を比較して検証してみたいと思います。
今から10年前の2014年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。
審査既決済件数 50,788件 うち許可数 35,800件
許可率 東京入管管轄 68,6% 名古屋入管管轄 68,5% 大阪入管管轄 73% 全体の許可率は70%
2023年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。
審査既決件済件数 50,986件、うち永住許可 33,470件
許可率 東京入管管轄 71% 名古屋入管管轄 59% 大阪入管管轄 64% 全体の許可率は71%
上記の通り10年前の2014年と最近(2023年)の永住申請の年間の既決済件数と入管ごとの許可率、全体の許可率はさほど変わっていません。
ではなぜ永住許可を取得するのが難しくなったというイメージが持たれているかというと、永住許可申請に求められる必要書類のレベルが高くなっている事が原因と考えられます。
2019年に永住許可申請の見直しがあり、住民税の課税証明書・納税証明書の提出期間が3年から5年に変更され、新たに年金・健康保険の記録が2年分が追加となりました。
こうしたことから永住許可申請のハードルが上がり、最近永住許可申請が難しくなったというイメージを持たれているのだと思います。
ではなぜ永住許可申請のハードルが10年前と比較して明らかに上昇しているにもかかわらず、ここ10年の永住許可申請の申請数と許可率にあまり変化がないのかということですが、近年永住審査のハードルが上昇しているとが永住申請者側に浸透しており、申請の段階で許可の通る見込みのない申請は自主的に控えていること、現在の永住許可申請の審査基準に申請側が合わせてきていることが考えられます。
審査の基準
永住申請の審査のポイント以下の3つです。
1.素行が善良であること
2.独立の生計を営むに足りる能力を有すること
3.国益要件
素行善良要件とは以下の(ア)(イ)(ウ)のいずれにも該当しない者を指します。
(ア)日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられた事がある者。
ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを受けた場合で取消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、
その後更に5年を経過したときは、これを該当しないものとして扱う。
(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者。
(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等,素行善良と認められない特段の事情がある者。
上記の(ア)(イ)(ウ)以外に該当しない人が素行には特に問題がないと判断されるということになります。
独立生計要件とは、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の資産等からみて将来において安定した生活を見込まれることをいいます。
生活保護を受給しておらず、現在及び将来について自立して生活することが可能と見込まれる必要があります。安定した生活を見込まれる際の収入はどれくらいかということですが、申請者一人300万+扶養者一人追加ごとに80万が相場と言われています。
実務上の感覚でもおよそこのくらいの収入は必要と思われます。
国益要件とは、長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していることです。
具体的な要件は以下の①、②となります。
①原則として引き続き10年以上日本に在留していること。ただし、この10年以上の期間のうち就労資格(「技能実習」及び「特定技能1号」を除く)又は居住資格(定住者等)をもってひき続き5年以上日本に在留している事が必要です。
②公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理管理及び難民認定法に定める届出義務)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していることが必要です。
②に関しては以下の書類の提出が必須となっています。
(出入国在留管理局2019年5月31日改訂)
住民税の課税証明書・納税証明書 5年分
国民年金及び厚生年金・健康保険及び国民健康保険の記録 2年分
国税の納税証明書 1年分
以下永住許可申請に当たり注意すべき事項を挙げます。
*国益要件に関して、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者については、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している必要があります。
実子又は特別養子については、引き続き1年以上です。
日本人、永住者又は特別永住者の実子又は特別養子については直近1年です。
日本人、永住者又は特別永住者及び養子については直近3年です。
*税及び保険料納付に関して、納めるべき税金は全て納めてから申請すること。社会保険に関しては、必ず申請直近2年分を全て納めてから申請すること。
申請してから未納が発覚して慌てて追納しても、申請要件として定める期間に納付したとは認められず、追納した日を基準日として新たな納付が必要となります。
*特に社会保険については1か月でも納入漏れがあればアウトなので、申請前の直近2年間は毎月期限通りに社会保険を納めて、納入漏れがないように注意すること。
以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が永住許可申請について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では永住許可申請について取り扱っております。
永住許可申請をお考えの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。
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在留特別許可の申請とは
在留特別許可について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.在留特別許可とは?
退去強制の対象となった外国人の異議の申出に理由がないときでも、法務大臣の裁決により在留を特別に認める制度です。
在留特別許可については、「人道的な見地から特別許可を主張することはできても、在留特別許可を請求する具体的請求権はない」とされています(参考:入管法大全474頁)。
在留特別許可については出入国管理及び難民認定法(以下法)第50条に規定されています。
法第五十条 法務大臣は、外国人が退去強制対象者に該当する場合であつても、次の各号のいずれかに該当するときは、当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。ただし、当該外国人が無期若しくは一年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。)又は第二十四条第三号の二、第三号の三若しくは第四号ハ若しくはオからヨまでのいずれかに該当する者である場合は、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。
一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2前項の規定による許可(以下この条において「在留特別許可」という。)の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。
3在留特別許可の申請は、当該外国人に対して退去強制令書が発付された後は、することができない。
4在留特別許可は、当該外国人が第四十七条第三項の認定若しくは第四十八条第八項の判定に服し、又は法務大臣が前条第三項の規定により異議の申出が理由がないと裁決した後でなければすることができない。
5法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断に当たつては、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなつた経緯、本邦に在留している期間、
その間の法的地位、退去強制の理由となつた事実及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものとする。
6法務大臣は、在留特別許可をする場合には、法務省令で定めるところにより、在留資格及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。
7法務大臣が在留特別許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、出入国在留管理庁長官は、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
8法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断をしたときは、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
9主任審査官は、法務大臣から在留特別許可をする旨の通知を受けたときは、その者が被監理者であるときを除き、直ちに当該外国人を放免しなければならない。
10 法務大臣は、在留特別許可の申請があつた場合において在留特別許可をしない処分をするときは、法務省令で定める手続により、速やかに理由を付した書面をもつて、当該申請をした外国人にその旨を知らせなければならない。
在留特別許可が認められる「特別な事情」については、以下一から五まで規定があります。
一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2.在留特別許可が認められる場合
在留特別許可申請の典型例として、五「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」を理由とする日本人配偶者と結婚したことにより「日本人の配偶者等」の在留特別許可を申請する場合があげられます。
在留特別許可における「日本人の配偶者等」の該当性を判断するのに際して、①永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営んできたか(婚姻関係が客観的に安定かつ成熟していると判断される場合)②退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合でない。
ことの2点が在留特別許可申請の審査において重要なポイントとなります。
参考:法務省HP
3.「駆け込み婚」について
オーバーステイ等で逮捕された、あるいは入管収容施設に収容されてから日本人や永住者等と結婚することを「駆け込み婚」といいます。
「駆け込み婚」での日本人の配偶者の該当性判断については、上記①、②の観点から婚姻生活の実質があるかどうかが判断されます。
「駆け込み婚」に関する裁判例としては次のものがあります。
①婚姻の届出は裁決の3週間前であり、同居もしていないから、その婚姻関係は客観的かつ安定して成熟しているといえない(東京地判平成22年4月28日 平成20(行ウ)484,485)。
②婚姻が届けられた日は、裁決がされた日より約10日前であったにすぎず、このような状況を考慮すると、たとえ両者の間に真摯な愛情が保たれているとしても、その家族的結合の事情は、在留特別許可の拒否の判断において、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度に至っていることはできない。(東京地判平成20年6月27日 平19(行)424)
③両者の間に同居事実はなく、週1,2回程度Aが原告宅に泊まる程度で、しかも婚姻したのは、本件裁決の約1か月前にすぎないことからすると、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度にいたっているとはいえない(東京地判平成20年1月18日平19(行ウ)57」等があります。
参考:入管法大全486~487頁
上記の判例から明らかなように、警察に逮捕されたあるいは入管施設に収容されたということで「日本人の配偶者」の身分を得るために結婚したとしても、単に「婚姻の事実」だけで在留資格が得られるわけではありません。
婚姻生活において「永続的な精神的及び肉体的結合を目的とする真摯な共同生活が存在」することが必要となります。
4.在留特別許可申請に際して注意すべき点
在留特別許可の申請は退去強制令書が発付された後は申請することが出来ません(法50条第3項)。
退去強制令書が発付された後に在留の許可を特別にお願いする方法として「再審情願」と呼ばれる在留特別許可による申請がありますが、「再審情願」は法により規定された手続きではなく、在留許可の判断における入管による裁量も法50条第1項で規定された在留特別許可よりも広いとされており、在留特別許可申請よりも入国管理局の審査はきびしくなります。
5.在留特別許可申請の受付期間について
①又は②のいずれの時から、退去強制を発付される時までの期間です。
① 就労令書により収容されたとき(仮放免許可を受けている場合を含む)
② 監理措置に付されたとき
以上、在留特別許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は在留特別許可申請を扱っています。
なんらかの理由により在留資格がなくなってしまったが、どうしても日本に在留したい方は是非,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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在留資格「経営・管理 」における事業所の設置基準
在留資格「経営・管理」とは、事業の経営・管理業務に外国人が従事するために設けられた在留資格です。「経営・管理」の在留資格が認められるためには、事業を営むための事業所が日本国内に存在している必要があります。
「経営・管理」の在留資格を得るための要件の一つである事業所の設置要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.事業規模に応じたカテゴリー
在留資格「経営・管理」には事業所の規模(カテゴリー)に応じて審査基準が設けられており、カテゴリー1からカテゴリー4に区分されています。
カテゴリー1
①日本の証券取引所に上場している企業
②保険業を営む相互会社
③日本又は外国の国・地方公共団体
④独立行政法人
⑤特殊法人・認可法人
⑥公益法人等です。
カテゴリー2
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収表の源泉徴収税額が1,500万円状ある団体・個人
カテゴリー3
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人
(カテゴリー2を除く)
カテゴリー4
カテゴリー1,2,3のいずれにも該当しない団体。
2.事業所の確保のための審査基準(基準省令第1号)
「事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合は、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。」と以下のアとイの2つの要件を充足していることが必要です。
ア 経済活動が単一の経営主体の元において一定の場所すなわち一区画を占めておこなわれていること
イ 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的におこなわれていること
カテゴリー3と4では、事業所が確保されていることを証明する書類として、「不動産登記事項証明書」や「賃貸借契約書」が必要です。
要件アから事業所は独立した区画である必要があります。
3.住居を事業所とする場合
住居を事務所とすることは原則認められませんが、例外的に住居を事業所とすることが認められる場合があります。
以下、事例1から3まで住居を事業所とするが、要件アの「経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われている」と認められる事例を紹介します。
事例1
Aは、本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの、貸主との間で「会社の事務所」として使用 することを認めるとする特約を交わしており、事業所が確保されていると認められたもの。
事例2
Bは、本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資 格認定証明書交付申請を行ったところ、本店が役員自宅である一方、
支社として商工会所有の物件を賃借していたことから、事業所が確保されていると認められたもの。
事例3
Cは、本邦において株式会社を設立し、販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、会社事務所と住居部分の入り口は別となっており、事務所入り口には 会社名を表す標識が設置されていた。また,事務所にはパソコン、電話、事務机、コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され、事業所が確保されていると認められたもの。
4.事業所として認められなかった事例
住居を事業所とするが、経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていると認められなかった事例を紹介します。
事例4
Dは、本邦において有限会社を設立し、当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが、事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ、郵便受け、玄関には事業所の所在を明らかにする 標識等はなく、室内においても、事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず、従業員の給与簿・出勤簿も存在せず、室内には日常生活品があるのみで事業所が確保されているとは認められなかったもの。
事例5
Eは、本邦において有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には 社名を表す標識等はなかったもの。また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの。
5.事業所を設置する際の注意点
①事業所が賃貸物件であるときは、当該物件に係わる賃貸借契約においてその使用目的を事業用、店舗、事務所用等事業目的を明らかにする必要がある。
②賃貸借契約者のついては当該法人等の名義とし、当該法人等による使用であることを明らかにする必要がある。
③月単位の短期賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等の施設を利用したりする場合には、それを合理的とする特別な事情がない限り、「事業所の確保」の要件に合致しているとは認められない。
④事業所は実際に事業が営まれている場所であることが必要であり、住所及び電話番号等を借り受け、電話にはオペレーターが対応し、郵便物を転送するなど実際に経営又は管理を行う場所は存在しない「バーチャル・オフイス」等と称する形態は、事業所とは認められない。
6.住居として賃借している場合の注意点
①住居目的以外での使用を貸主が認めていること
②借主も当該法人が事業所として使用することを認めている。
③当該法人が事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること
④当該物件に係わる公共料金等の共用費用の支払いに関する取り決めが明確になっていること
⑤看板等を揚げていること。
参考文献:出入国在留管理局HP
以上,在留資格「経営・管理」の事業所設置基準について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留資格「経営・管理」を取り扱っております。在留資格「経営・管理」について在留資格認定証明書、更新、変更申請についてお考えの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。
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日本国籍喪失による在留資格申請と帰化申請について
日本国籍喪失による在留資格申請手続きと帰化申請手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がQ&A方式で解説します。
( 架空の事例です。)
参考:帰化許可申請/法務省HP
ケース1
Aさんは大学時代にアメリカの大学に留学しました。
大学卒業後、アメリカでの生活が気に入りそのまま現地の会社に就職しました。
就職先で知り合ったアメリカ人女性と結婚し、永住権を取得した後、Aさんはアメリカ国籍を取得しました。
Aさんがアメリカ国籍を取得してから数年経った頃、日本にいる両親からAさんに連絡がありました。
Aさんがアメリカに移住してから既に20年以上が経過し、Aさんの両親が高齢になってきたことからこの先実家のことをどうすればいいか相談したいという内容でした。
Aさんは3人兄弟の長男で、いずれは日本に帰って両親の面倒を見ていきたいという気持ちを強く持っています。
Q アメリカ人としてアメリカに住むAさんが、日本に戻って実家の管理や親の面倒をみるにはどのような手続きが必要になるでしょうか?
A 国籍法11条1項「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
国籍法11条1項からAさんはアメリカ国籍を取得したと同時に日本国籍を喪失しています。そのためAさんはアメリカ国籍者として日本に入国する手続きを取る必要があります。
具体的な方法としては、Aさんが3か月以上日本に滞在する場合は在留資格認定証明書により、日本にいるAさんの両親がアメリカにいるAさんを呼寄せる形をとります。
この場合申請取次の資格のある行政書士等、在留申請手続きの専門家の力を借りると在留申請手続きがスムーズに進むでしょう。
Aさんの両親は日本人なので、Aさんは日本人の実子の身分となり、在留資格「日本人の配偶者等」の資格で日本に入国手続きをすることになります。
Aさんの両親のどちらかがAさんの身元保証人となります。日本とアメリカの双方でAさんの在留資格認定証明書申請に必要な書類を集めます。
Aさんが来日後に両親の住む実家で生活する場合は、実家の住所を管轄する地方出入国在留管理局に「日本人の配偶者等」の在留資格認定書を申請します。
ケース2
Aさんの手元に期限未到来の日本国パスポートとアメリカのパスポートがあったので、アメリカ人として日本に入国するより日本人として入国した方が手続きが楽だろうと考え,Aさんは日本のパスポートを使って来日することにしました。
Q Aさんが日本国のパスポートで日本に入国した場合、Aさんにはどのような不都合が生じるでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍を取得した時点で日本国籍を失っていることから、Aさんが所有する日本国のパスポートは無効となります。
Aさんは無効なパスポートを使って日本に入国したことになり、不法入国(出入国及び難民認定法3条1項)の罪により、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは3百万円以下の罰金の刑に処せられるおそれがあります。パスポートの選択については十分な注意が必要です。
ケース3
Aさんが日本に帰国してから取り寄せた自分の戸籍事項証明書には自分の名前が記載されてありました。
Q この場合、Aさんの戸籍はどのような扱いになるのでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍取得と同時に日本国籍を失っているので、Aさんが日本国籍を喪失していることは間違いありません。
Aさんは国籍喪失の届出を自分が国籍喪失を知ったときから3か月以内に在アメリカ日本大使館又は自分の本籍地にある市町村役場に届け出る必要があります。
Aさんがこの届出を失念していると、Aさんの戸籍事項証明書の記載が訂正されずそのままになっている可能性があります。
Aさんはアメリカ国籍を取得したことにより日本国籍は「実質的」に失われていますが、国籍喪失届を提出していないので、戸籍事項証明書からはAさんの名前は削除されず残っておりAさんの日本国籍は「形式的」に残っている形となっています。
そのためAさんは本籍のある市町村役場に自分の国籍喪失届を提出して「形式的」にも自分の日本国籍を喪失させる手続きが必要となります。
ケース4
Aさんは日本で仕事先も決まり、この先アメリカに戻ることなくアメリカにいる妻と子どもを呼寄せて、日本で暮らしていきたいと考えています。
Q Aさんがこの先アメリカに戻らず日本で暮らしていく場合、どのような手続きを取ればよいでしょうか?
A この場合は「日本人の配偶者等」の在留資格から帰化申請手続きにより日本国籍を取得する方法があります。
国籍法8条3項で規定されている簡易帰化の方法によります。
Aさんは元日本国籍者で日本に住所を有するものであることから、国籍法第5条で規定する一、二、四の条件を備えないときでも、帰化許可申請が可能となります。
一 引き続き5年以上日本に住所を有すること。(居住要件)
二 十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること(行為能力)
四 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること(生計要件)
以上,国籍喪失と在留資格申請・帰化手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、日本国籍喪失による在留資格の申請、帰化許可申請手続きについて取り扱っております。国籍喪失後の在留申請手続きについてお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。
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刑事・行政処分後の在留資格
在留期間中に刑事処分や行政処分を受けた場合、その後の在留手続きはどうなるのか?弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が1から5までのケースに分けて解説します。
1.在留期間中に刑事事件をおこして無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられたケース
このケースでは、在留期間中に刑務所で服役することになります。服役期間中に在留期間が経過すると在留資格はなくなります。
服役中に入管審査官が退去強制手続きを進めることがあります。
どのような場合に退去強制(強制送還)となるのか,また,それはどのような手続きで進むのかは,出入国管理及び難民認定法に規定があります。
刑期満了又は仮釈放後は日本人のように刑務所から外に出られるわけではなく、刑務所から出入国在留管理署(以下入管)内にある入管収容施設に直接移送され収容されます。
収容令書により入管収容施設に収容されたまま退去強制手続きが進行します。
入管収容施設に収容される期間は原則として30日以内であり、収容されてから30日以内に被収容者に対して退去強制処分を出すか否かが決定されます。
被収容者に退去強制処分が出された場合、被収容者がどうしても帰国できない事情があって日本に在留したい場合は、入管の担当部署に在留許可申請(再審情願)を行います。
入管収容施設に収容されて収容施設から外に出て生活したい場合は、収容施設にある入管の担当部署に仮放免又は監理措置の申請をします。
2.出入国管理及び難民認定法(以下法)第24条で定める退去強制に該当する事由により刑事処分を受けたケース
法24条で定める退去強制事由により在留期間中に刑事処分を受けた場合は、仮に1年以下の懲役若しくは禁錮又は執行猶予付きの判決に処せられた場合であっても、法24条で定める退去強制事由以外の罪で無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた場合と同様に、在留期間中に退去強制手続きが始まります。
入管で法24条が定める退去強制事由に該当すると判断された場合、入管収容施設に収容される場合とされない場合があります。
本ケースで引き続き日本に在留したい場合は、入管が退去強制処分を出す前に在留特別許可申請を行い在留許可を得る必要があります。
法24条に該当する事由があると認定され、法務大臣により在留を認めるべき特別の事情があるとの認定がされなければ退去強制処分が確定します。
退去強制処分を受けた者がどうしても日本に残らなければならない事情がある場合は、再度の在留許可申請(再審情願)を行います。
法24条で定める退去強制該当事由として、他人名義のパスポートによる不法入国、不法就労のあっせん、在留カードの偽造又は所持、在留カードの偽造、不法就労、在留期間超過、人身取引、旅券法違反、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反、覚醒剤取締法違反等で有罪判決を受けた場合、売春又は売春のあっせん、勧誘等があります。
出入国管理行政の根幹を揺るがしかねない犯罪類型を限定列挙しています。
3.法24条列挙事由以外の罪で、1年以下の懲役若しくは禁錮又は罰金に処せられたケース。
原則として在留期間中に退去強制手続きは始まらず次の在留期間まで在留資格は継続します。刑事処分後の在留更新の時に刑事処分時の在留状況を審査されます。
在留更新の審査で「素行に問題がある」と判断され在留更新が認められない場合があります。
4.法24条列挙事由以外の罪で1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられたが執行猶予の言渡しを受けたケース。
3と同様の扱いとなりますが、4のケースでは刑事処分後の在留更新は「素行に問題あり」として更新が認められることはかなり厳しくなります。
5.在留期間中に速度超過や駐停車違反で行政処分を受けたケース。
速度超過や駐停車違反により行政処分を受けた場合、それだけで退去強制手続きに進むことはありませんが、
次の更新申請の時に「素行に問題あり」と判断され在留期間が短縮されることがあり得ます。
以上1から5までのケースに分けて刑事処分・行政処分を受けた後の在留手続きについて解説しました。
上記のケースから分かるように在留期間中に刑事処分を受けるとその後の在留更新手続きは極めて困難となります。
また行政処分のみの場合でも在留期間が従来の5年から1年に短縮したりすることもあります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は在留特別許可、再審情願の手続きを扱っています。
在留期間中に刑事・行政処分を受けてしまいどうしていいかわからずお悩みの方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。
重国籍と国籍選択について
重国籍と国籍選択について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
(架空の事例です。)
1.重国籍と国籍選択について
A子さんの父は戦前日本の統治下にあったT国の国籍で、母は日本国籍です。
A子さんの両親はA子さんの父親が日本の大学に留学しているときに留学先で知合い結婚しました。
父がT国籍でありA子さんもT国で生まれたことから、A子さんの両親はA子さんにT国籍を取得させることにしました。
A子さんの父は、A子さんの母が日本人であり日本の血を引いていること、将来A子さんが日本に行って生活することもあるだろうと考え、T国にある日本大使館でA子さんが出生後まもなくして国籍留保の手続き(国籍法十二条、戸籍法百四条)を行いました。
A子さんは小学校、中学校、高校まではT国で学び、大学からは日本の大学で学ぶことになりました。
成績優秀のA子さんは日本の国立大学薬学部に日本の一般の受験生と同じ筆記試験を受けて見事に合格しました。
A子さんはT国と日本の重国籍者でしたが、日本で生活していくには日本国籍者である方が何かと都合がよいだろうと考え大学時代は日本人で通していました。
A子さんは大学卒業後はT国に帰国して、日系の製薬会社に就職しました。
就職してからほどなくして、A子さんの自宅に日本の法務省から1通の封筒が届きました。封を開けると中には国籍選択をすべきことを催告する書面が入っていました。
国籍法第十四条一項「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有する事となったときが十八歳に達するときであるときは二十歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはそのときから二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。」日本の国籍と外国の国籍を有する人(重国籍者)は、国籍法で決められた一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります。
この期間を失念して国籍選択の手続きを取らなかったときの手続きについては国籍法十五条に規定されています。
第十五条一項「法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍を選択しないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。」
A子さんは重国籍者であることから、本来十八歳になったら自ら国籍の選択をしなければなりませんが、A子さんはこの規定を知らなかったので国籍法十四条に規定されている国籍選択の意思表示をすることができませんでした。しかしながらこの期限を徒過していたとしても、重国籍者はいずれかの国籍を選択する必要があることから、T国にある日本大使館を通じて法務省からA子さんあてに国籍を選択すべきことを催告する書面が届いたのでした。
T国に家族や友人が多くおり、勤務先も日系薬品メーカーであるものの現地採用であり原則日本への転勤は原則ないことから、A子さんは自分の国籍はT国を選択することにして日本国籍は離脱することにし(国籍法十三条)、国籍離脱届をT国にある日本大使館に届けました。
2.国籍離脱後の手続きについて
A子さんが日本国籍離脱の届出をしてから数年経ちました。
A子さんは勤務する日系製薬会社で順調に昇進して管理職の立場になり、部下を数人持つようになりました。
A子さんが管理職に昇進した翌年、A子さんの日頃の実績を評価していたA子さんの上司がA子さんを日本本社の管理職に推薦しました。
日本本社は東京にあり、T国にある現地法人よりも規模が大きく、本社採用の管理職となると給与も現試採用より格段に高くなります。
A子さんは今後の社内でのキャリアを考え日本本社転勤の話を承諾しました。
Q 現在A子さんの手元には日本国のパスポートとT国のパスポートの2つがあります。A子さんは日本の会社で働くのだから日本人として日本のパスポートで入国する方がT国の外国人として生活するよりも楽だろうと考え、日本国のパスポートを使って来日する予定です。A子さんは日本国籍離脱の手続きをしているのにも関わらず日本のパスポートを使って入国できるでしょうか?
A A子さんは国籍離脱届を在T国日本大使館に提出しており、国籍離脱届を大使館に届け出た時点で日本国籍は失われます(国籍法第十三条)。
A子さんの手元には日本国のパスポートがあり、まだ有効期間が経過していないことからこのパスポートを使って日本に入国できるかが問題となりますが、A子さんは日本国のパスポートを使って日本入国は出来ません。なぜならA子さんは国籍離脱手続きにより既に日本国籍を失っており(実質的に国籍を失っている状態)、A子さんのパスポートは本来効力がありません。
無効なパスポートを使って有効であるように装って入国した場合は、不法入国(法第七十条一項)として3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
そこでA子さんはT国のパスポートを使って入国しなければなりません。
Q A子さんが日本本社で働くためにはどのような在留資格が該当するでしょうか?
A A子さんが日本本社で働くために必要な在留資格として、「企業内転勤」「技術・人文・国際業務」「研究」等が考えられます。
これらの活動の在留資格認定証明書によりA子さんを日本本社側から呼寄せます。
Q A子さんは日本本社で知り合った男性と結婚し子どもが生まれました。A子さんはこの先日本で生活していこうと考え、もう一度日本国籍を取得したいと考えています。
A子さんが再度日本国籍を取得するのはどのような手続きが必要になるでしょうか?
A A子さんが再度日本国籍を取得するためには帰化による方法があります。
A子さんは以前日本国籍をあり現在日本に住所があるので、国籍法第8条第3項により、通常の帰化手続きよりも、居住歴、行為能力、生計要件の点で優遇されます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、国籍・帰化に関する手続きを取り扱っています。
重国籍で国籍についてお悩みの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。
「永住者の配偶者等」の在留資格
「永住者の配偶者等」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
1.「永住者の配偶者等」の在留資格とは?
永住者の在留資格をもって在留する者若しくは特別永住者(以下「永住者等」という。)の配偶者又は永住者等の子として、日本で出生しその他引き続き日本に在留している者のために設けられた在留資格です。
「永住者の配偶者等」の該当範囲は入管法別表第2の「永住者の配偶者等」の項の下欄に記載されており、「永住者等の配偶者又は永住者等の子として日本で出生しその後引き続き日本に在留している者」が該当します。
「永住者の配偶者等」の活動として具体例として次の(1)と(2)があげられます。
(1)永住者の配偶者の身分を有する者
①「配偶者」とは、現に婚姻中の者をいい、相手方の配偶者が死亡した場合は含まれません。また、婚姻は法律上有効な婚姻であることを必要とし、 内縁の夫婦である場合や外国で有効に成立した同性婚は含まれません。
②社会通念上夫婦として共同生活を営むという婚姻の実体を伴っていない場合には、永住者の配偶者としての活動を行う者とは認められません。また社会通念上夫婦と言えるためには、合理的な理由がない限り同居して生活していることが必要です。
(2)永住者等の子として出生し、出生後引き続き日本に在留する者
①出生の時に父又は母のいずれか一方が永住者資格をもって在留していた場合又は本人の出生前に父が死亡し、かつ、その父が死亡のときに永住者の在留資格をもって在留していた場合が含まれます。
②本人の出生後、父又は母が永住者の在留資格を失った場合も、「永住者」の在留資格をもって在留する者の子として出生した場合も含まれます。
③「子として出生した者」とは実子をいい、嫡出子のほか、認知された非嫡出子も含まれますが養子は含まれません。
④永住者の親が本国で子を出産した場合、その子は「永住者の配偶者等」に含まれるかですが、「永住者の配偶者等」の在留資格が認められるためには、子が日本で出生したことが必要であり、母親が永住者の在留資格であっても、母親が再入国許可を受けて出国し外国で子を出産した場合は 「永住者の配偶者等」に該当しないので注意が必要です。
2.「取得在留許可」と「取得永住許可」について
(1)「取得在留許可」
入管法第22条の2第1項により、出生その他の事由により上陸手続きを経ることなく日本に在留することになる外国人は、
出生した日から60日以内に在留資格取得の手続きを行う必要があります。
この規定により新たに在留資格を取得することを「取得在留許可」といいます。
(2)「取得永住許可」
永住者の子が日本で出生した場合には、「取得在留許可」の手続きにより、「永住者の配偶者等」の在留申請手続きを行いますが、この時に「永住者の配偶者等」の在留資格取得申請と同時に永住資格の取得申請も行う事が認められています。
この手続きによる永住許可申請を「取得永住許可」といいます。
この手続きにより、本来日本で生まれた永住者の実子又は特別養子については、日本在留後引き続き1年以上日本に在留していることが永住許可申請の条件であるものの、1年以上の在留期間を経ないで永住許可申請をすることが可能となります。
子の出生から60日以内に「永住者の配偶者の配偶者等」と「永住許可申請」を同時に申請した場合に、万が一永住許可申請が不交付だった場合でも、永住者の配偶者等の在留資格の取得許可が認められる場合は、「永住者の配偶者等」の在留資格が許可されます。
永住者の子が出生してから1年を経過しなくても子の永住許可申請ができる点で、申請者側にはメリットの大きい規定となっています。
参考:出入国在留管理庁 入国・在留審査要領
永住許可申請手続きに関しては,出入国在留管理庁HPにて提出書類等についても案内があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「取得永住許可」手続きを扱っております。
永住者の在留資格をお持ちの方で、お子様の出生により日本での在留許可と併せて永住許可もお考えの方は是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問合せください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
「日本人の配偶者等」在留資格認定証明書の標準処理期間
・外国人の夫又は妻を日本に呼び寄せるため、在留資格認定証明書の申請をしたが、2か月経ってもまだ入管から返事が何も来ていない。
・一体どうなっているのかとても心配しています。どうしたらいいでしょうか。
時折,このような内容のお問合せを頂きます。
大切なパートナを日本に呼び寄せるべく、入管からの許可通知を一日千秋の思いで待っている場合も多いと思います。
申請結果通知が来るまで2か月も3か月もかかっていると本当に審査しているのだろうか、自分の書類に何か問題があるのだろうか。本当に審査が通るのだろうか、色々不安になってくることがあるでしょう。
しかしながら入管は配偶者の日本への呼び寄せ等、申請する側にとって大変重要な申請書類を忙しいからと言って放置しているわけでは当然ありません。
申請書が役所に届いたら、役所は遅滞なく審査を開始することになっており、申請を受け取らない、受け取っても放置しておく、申請書を返却するなどの取扱いをしてはいけないことになっています(行政手続法第7条)。限られた人員の中で慎重に審査を進めると当然審査に時間はかかります。
しかしながら申請人側は申請結果が出るのを一日千秋の思いで待っているのに、入管側が審査に慎重なあまり審査に1年も2年もかけていては、申請側は受入れの準備もしなければならない中で大変な負担となってしまいます。そこでこうした状況に対処するため、入管は行政手続法第6条に基づき標準処理期間
(申請を受け付けてから許可が出るまでの期間)を公表しています。
入管HPでそれぞれの在留資格の標準処理期間について,これまでの処理状況が資料として掲載されています。
弊所でお問合せの多い外国人の夫、又は妻を日本に呼び寄せるための申請「日本人の配偶者等」の標準処理期間は、令和6年1月1日から令和6年3月31日までの平均で76,8日となっています。
ちなみに就労資格である「経営・管理」では在留資格認定証明書の標準処理期間は100,2日、技能が101,0日となっています。短い方では、技能実習1号イが29,1日、技能実習2号ロが25,2日、技能実習3号イが22,5日、技能実習ロが21,6日となっています。
技能実習の在留資格認定証明書の標準処理期間は「経営・管理」の標準処理期間の3分の1くらいですが、なぜ技能実習の審査機関が短いかというと、
技能実習の在留申請書類は日本の監理団体が一括して作成しているので、入管側は技能実習部門の審査人員が少ないこともあり、監理団体が作成した書類の内容を基本的に信用することにしているのでしょう。
自分がした在留申請が入管HPで公表されている標準処理期間より明らかに時間がかかっている場合は何らかの事情があって審査が遅れている可能性もあります。
その時は在留資格申請をした入管に審査状況を問い合わせてみてください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書を取り扱っています。在留審査の申請状況の確認も申請人に代わって弊所の申請手続き担当者が行いますので安心です。
「日本人の配偶者等」の在留資格認定証明書による申請は、ぜひ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。
在留資格「技術・人文・国際業務」について
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が在留資格「技術・人文・国際国際業務(出入国管理居HP)」について解説します。
事例
Q A国に本社がある化学メーカーの東京支店で、今回新たに研究開発部門の新規事業立ち上げを行うことになりました。
研究開発事業に携わるの技術職の社員を10名をA国から中途採用して東京支店に呼び寄せる予定です。この場合採用した技術職社員を東京支店に受け入れるには、どのような在留手続きが必要でしょうか?また申請にあたりどの様な点に留意したらよいでしょうか?
A 中途採用の技術職社員を海外から日本にある支店に呼び寄せるには、在留資格「技術・人文・国際業務」での手続きとなります。
在留資格「技術・人文・国際業務」とは、日本にある公私の機関との契約に基づいて行われる自然科学の分野若しくは人文科学の分野の専門的技術若しくは知識を必要とする業務に従事する外国人又は外国人特有の感性を必要とする業務に従事する外国人を受け入れるために設けられたものです。
1.「技術・人文知識・国際業務」の該当範囲について
入管法別表第1の2の表の「技術・人文知識・国際業務」の項の下蘭は、本邦において行うことのできる活動を以下の通り規定しています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(一の表の教授の項、芸術の項及び報道の項の下欄に掲げる活動並びにこの表の経営・管理の項から教育の項まで、企業内転勤の項から興業の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
「自然科学の分野の属する技術又は知識を有する業務」とは、どのようなものかというと、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務であることを示すものであり、自然科学の分野に属する技術又は知識がなければ出来ない業務であることをいいます。
代表的なものとして、以下の分野があげられます。
数理科学、物理化学、化学、生物化学、人類学、地質化学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核化学、基礎工学、応用物理学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用科学、資源開発工学、造船学、計測、制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、薬学、農学、農芸化学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、地域農学、生理科学、病理化学、内科系化学、外科系化学、社会医学、歯科学、薬科学等です。
A化学メーカー東京支社での採用に関しては、大学等で化学、生物化学、応用科学、化学工学、薬学、農学、農芸化学、畜産学、生理科学、病理化学、内科系化学、外科系化学、社会医学、薬科学等を専攻した人材を中心に募集をかけて選考し採用していくことになるでしょう。
2.在留申請における留意点
(1)従事しようとする業務と専攻科目との関連性について
「技術・人文知識・国際業務」の在留資格においては、従事しようとする業務と大学等において専攻した科目との関連性が必要です。
ただし、専攻科目と従事しようとする業務が一致していることまでは求められません。
大学卒業者に対しては、大学における学術機関としての社会における役割(学校教育基本法第83条第1項、第2項)から、大学における専攻科目と実際に従事しようとする業務との関連性については比較的緩やかに判断されます。
(2)採用当初に行われる実務研修に係わる扱いについて
外国人が「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で在留するためには、当該在留資格に該当する活動に従事することが必要であるところ、企業においては、採用当初に一定の実務研修期間が設けられていることがあります。
実務研修期間に行う活動のみを捉えれば「技術・人文・国際業務」の在留資格に該当しないように見えるとしても、それが日本人の大卒社員等に対しても同様に行われる実務研修の一環であって、在留期間の大半を占めるようなものでない場合は、相当性を判断したうえで当該活動が許容されます。
3.実務研修での研修期間について
研修期間を含めた在留資格該当性については、在留期間中の活動を全体として捉えて判断します。ここでいう「在留期間中」とは、一回の許可毎に決定される「在留期間」を意味するものでなく雇用契約書や研修計画に係わる企業側の説明資料等の記載から、申請人が今後日本で活動することが想定される「技術・人文・国際業務」の在留資格をもって在留する期間全体を意味します。
そのため、例えば、今後相当期間、日本において「技術・人文知識・国際業務」に該当する活動に従事することが予定されている者が、在留期間「1年」を決定された場合、決定された1年間全て実務研修に従事することも考えられます。
他方で、例えば、雇用契約期間が3年間のみで、契約更新も予定されていないような場合、採用から2年間実務研修を行う、といった雇用契約は認められません。
なお、採用から1年間を超えて実務研修に従事するような申請については、研修計画の提出を求め、実務研修計画の合理性を審査することがあります。
以上、在留資格「技術・人文・国際業務」について、採用と採用後の留意点の観点から解説しました。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在留資格「技術・人文・国際業務」を取り扱っております。
海外から在留資格「技術・人文・国際業務」での呼び寄せをご検討の際は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお問合せください。
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