在留資格「経営・管理 」における事業所の設置基準

在留資格「経営・管理」とは、事業の経営・管理業務に外国人が従事するために設けられた在留資格です。「経営・管理」の在留資格が認められるためには、事業を営むための事業所が日本国内に存在している必要があります。
「経営・管理」の在留資格を得るための要件の一つである事業所の設置要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.事業規模に応じたカテゴリー

在留資格「経営・管理」には事業所の規模(カテゴリー)に応じて審査基準が設けられており、カテゴリー1からカテゴリー4に区分されています。

カテゴリー1
①日本の証券取引所に上場している企業
②保険業を営む相互会社
③日本又は外国の国・地方公共団体
④独立行政法人
⑤特殊法人・認可法人
⑥公益法人等です。

カテゴリー2
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収表の源泉徴収税額が1,500万円状ある団体・個人

カテゴリー3
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人
(カテゴリー2を除く)

カテゴリー4
カテゴリー1,2,3のいずれにも該当しない団体。

2.事業所の確保のための審査基準(基準省令第1号)

「事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合は、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。」と以下のアとイの2つの要件を充足していることが必要です。

ア 経済活動が単一の経営主体の元において一定の場所すなわち一区画を占めておこなわれていること
イ 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的におこなわれていること 

カテゴリー3と4では、事業所が確保されていることを証明する書類として、「不動産登記事項証明書」や「賃貸借契約書」が必要です。
要件アから事業所は独立した区画である必要があります。

3.住居を事業所とする場合

住居を事務所とすることは原則認められませんが、例外的に住居を事業所とすることが認められる場合があります。
以下、事例1から3まで住居を事業所とするが、要件アの「経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われている」と認められる事例を紹介します。

事例1
Aは、本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの、貸主との間で「会社の事務所」として使用 することを認めるとする特約を交わしており、事業所が確保されていると認められたもの。

事例2
Bは、本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資 格認定証明書交付申請を行ったところ、本店が役員自宅である一方、
支社として商工会所有の物件を賃借していたことから、事業所が確保されていると認められたもの。

事例3
Cは、本邦において株式会社を設立し、販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、会社事務所と住居部分の入り口は別となっており、事務所入り口には 会社名を表す標識が設置されていた。また,事務所にはパソコン、電話、事務机、コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され、事業所が確保されていると認められたもの。

4.事業所として認められなかった事例

住居を事業所とするが、経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていると認められなかった事例を紹介します。
事例4
Dは、本邦において有限会社を設立し、当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが、事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ、郵便受け、玄関には事業所の所在を明らかにする 標識等はなく、室内においても、事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず、従業員の給与簿・出勤簿も存在せず、室内には日常生活品があるのみで事業所が確保されているとは認められなかったもの。

事例5
Eは、本邦において有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には 社名を表す標識等はなかったもの。また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの。

5.事業所を設置する際の注意点

①事業所が賃貸物件であるときは、当該物件に係わる賃貸借契約においてその使用目的を事業用、店舗、事務所用等事業目的を明らかにする必要がある。
②賃貸借契約者のついては当該法人等の名義とし、当該法人等による使用であることを明らかにする必要がある。
③月単位の短期賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等の施設を利用したりする場合には、それを合理的とする特別な事情がない限り、「事業所の確保」の要件に合致しているとは認められない。
④事業所は実際に事業が営まれている場所であることが必要であり、住所及び電話番号等を借り受け、電話にはオペレーターが対応し、郵便物を転送するなど実際に経営又は管理を行う場所は存在しない「バーチャル・オフイス」等と称する形態は、事業所とは認められない。

6.住居として賃借している場合の注意点

①住居目的以外での使用を貸主が認めていること
②借主も当該法人が事業所として使用することを認めている。
③当該法人が事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること
④当該物件に係わる公共料金等の共用費用の支払いに関する取り決めが明確になっていること
⑤看板等を揚げていること。
参考文献:出入国在留管理局HP 

以上,在留資格「経営・管理」の事業所設置基準について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留資格「経営・管理」を取り扱っております。在留資格「経営・管理」について在留資格認定証明書、更新、変更申請についてお考えの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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