2024年6月施行の入管法改正部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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入管法改正の柱
2023年5月に
(1)保護すべき者を確実に保護
(2)送還忌避問題の解決
(3)収容を巡る諸問題の解決
の3つを柱とする入管法の改正が行われました。
昨年度の入管法改正では、「(2)送還忌避問題の解決」に向けた改正が大きくマスコミに取り上げられました。
その内容として、現行法上難民認定申請中は、何度でも一律に送還が停止する(送還停止効)ところ、その例外規定が設けられ、3回目以降の難民申請者、3年以上の実刑前科者、テロリスト等と列挙された者について、送還停止効の例外を設けて3回目以降の申請の場合、「相当の理由がある資料」を提出しなければ送還停止効を認めずに日本から本国に送還とするというものです。
この改正については多くの反対意見があり、特に3回目以降の難民申請者に対して「相当の理由がある資料」がなければ送還停止効を認めないという改正については、迫害され難民として避難した者を迫害した地域に再度送り返すものとして人権上重大な問題があるとの強い反対意見がありました。
本ブログでは「(2)送還忌避問題の解決に向けた法改正」よりは注目度は低いものの入管法改正の大きな3つの柱の一つとして重要度の高い「(3)収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正について」解説します。
収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正の目的
「収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法改正の目的」として以下3つの目的があります。
(1)収容に代わる監理措置
(2)仮放免の在り方の見直し
(3)適性な処遇の実施、の3つです。
収容に代わる監理措置にはどのようなものがあげられるかというと、
・監理人の監理の下で収容しないで退去強制手続きを進める措置の実施
・個別事案ごとに、逃亡のおそれに加え、収容により本人が受ける不利益も考慮し、収容か監理措置かを判断
・逃亡の防止に必要な場合に限り保証金を納付
・被収容者につき、3か月ごとに収容の要否を必要的に見直す
というものがあげられます。
「収容に代わる監理措置」の規定が設けられた理由
現在の入管法の規定では、退去強制手続の過程において、容疑者が入管施設に収容されることがあり、
「退去強制事由に該当すると思われる場合に収容する収容令書による収容(39条1項)」、収容令書による入管施設への収容は、行政処分の中でも身体の拘束を伴う最も厳しい処分の一つです。
このように過酷な処分を緩和する手段として、法39条1項に該当する場合でも、収容令書による収容に代わり、あえて収容せずに退去強制手続きを進めるための方策として、収容に代わる監理措置が設けられました。
次に「監理措置」の規定について条文から運用と手続きの内容ついて条文を見てみます。
オーバーステイ等の事由により退去強制手続の対象となった者をを入管施設に収容する代わりに、親族や知人など、被退去強制手続き者本人の監督を承諾をしている者を「監理人」として選び(44条の3)、彼らの監理の元で逃亡等を防止しつつ、収容しないで退去強制手続を進めます。
形式上は「原則収容」となっている入管法の規定を改め、個別事案ごとに主任審査官が、被退去強制者の請求又は職権で被退去強制手続き者の逃亡、不法就労活動の程度に加え、本人が受ける不利益の程度も考えたうえで、収容の要否を見極めて収容か監理措置かを判断します(44条の2第6項)。
報酬を受ける活動の許可として、主任審査官は、「被監理者の生計を維持するために必要であって、相当と認めるときは、被監理者の申請により、監理人の監理の下で、被監理者が雇用契約に基づいて報酬を受ける活動を行うことを許可することができます。
生活の安定を与えることによって、不必要な収容及び長期収容を防止するという趣旨です。
注意すべきポイントとして、報酬を受ける活動の許可は退去強制令書による収容の場合は認められていません。理由として、退去を強制すべきなのか、いまだはっきりしない段階にある者に対してある程度の「利益」を認めたものということが挙げられます。
保証金(44条の2第2項及び6項)保証金は、監理措置に付される者による逃亡又は証拠隠滅の防止に必要と認めるときは、300万以下の額の保証金を納付させることができるとされています。
監理措置の取消し(44条の4)期限までに保証金の納付がない、必要な時に代わりに選定されるべき監理人がいない、逃亡・証拠隠滅の事実又はそうすると疑うに足りる相当の理由がある、許可を受けずに報酬を伴う活動をしている等の事由があったときは、主任審査官は、監理措置を取消すことができるものとされました。
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