
定住者の在留資格は、他のいずれの在留資格にも該当しないが、我が国において相当期間の在留を認める特別な事情があると法務大臣が判断した者を受け入れるために設けられた在留資格です。定住者資格には、一定の類型の地位を事前に定めておき、そのいずれかに該当する場合に入国・在留を認めるもの(告示定住)と個々に活動の内容を判断して、その入国・在留を認めるものがあります(告示外定住)。
入管法第7条1項2号の規定により、入国審査官が上陸の許可に際して「定住者」の在留資格を決定できるのは、法務大臣が定住者告示をもってあらかじめ定めている地位を有する者としての活動を行なおうとする場合(告示定住)に限られます。
1.定住者ビザの法的枠組み
在留資格「定住者」は、活動内容で区切る就労系ビザとは異なり、入管法別表第二(身分・地位)の身分又は地位による在留資格です。
そのため原則として就労活動に個別の制限がなく、転職等の自由度が高い点が特徴です。
2.告示定住と告示外定住の違い
定住者は、告示に当てはまるか否かで、準備すべき立証の性質が変わります。
| 種類 | 告示定住(告示に該当) | 告示外定住(告示に非該当) |
| 制度の中身 | 告示で活動内容の類型が提示され、当該類型に沿って審査される。 | 活動内容の類型が事前に提示されておらず、許可に必要な「特別な理由」を申請人が自ら組み立てる必要がある。 |
| 例示 | 第三国定住難民、日系2世・3世及びその配偶者・定住者の配偶者、未成年者で未婚の連れ子、6歳未満の養子等。 | 日本人・永住者又は特別永住者と離婚後引き続き日本で生活するための定住、日本人実子の監護・養育目的の定住等 |
| 在留期間 | 原則として「5年・3年・1年・6月」。 | 5年を超えない範囲で個々に指定され得る。 |
告示外定住が争点になった裁判例として、東京地方裁判所2022年9月30日判決(同性パートナーの事案)では、不許可理由として「定住者告示に該当しない」旨が示されています。(その後特定活動の在留資格が付与される。)
告示外定住では、定住資格を認めるに足りる「特別な事情」の客観的な根拠となる資料と立証が核心になります。
3.離婚・死別・子の監護養育で問題になりやすいポイント
「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の“配偶者としての身分”は、離婚や死別により消失するという点です。
入管法22条の4は「配偶者としての活動を継続して6月以上行わない」場合に在留資格取消しの対象になり得ると定めています。
したがって、配偶者と離婚や別居等で婚姻状況が変化した後は、6か月以内に在留資格変更等を申請する必要があります。加えて、離婚・死別した場合には「配偶者に関する届出」を14日以内に管轄の入国管理局に行う必要があります。
| 家族状況の変化 | 定住者資格を申請する上で争点化しやすい事実 | 立証に必要となる資料 |
| 離婚 | 婚姻の実体(同居・家計・扶助)と離婚に至る経緯、離婚後の生活基盤。 | 年表+同居実態資料、収入・納税、今後の就労・居住計画を統合説明。 |
| 死別 | 独立生計能力、日本での定着性、日本語能力、税金の支払い状況 | 死亡証明等に加え、納税・課税証明書の提出、社会保険加入及び支払い遅れがないことの証明する文書の提出。 |
| 子の監護養育 | 監護権、親権の有無、 同居・扶養の有無。 | 住民票、写真、戸籍事項証明書等の提出。 |
4.不許可が多い理由と落とし穴
定住資格、特に告示外定住は「この要件がそろえば必ず許可」という形になりにくく、提出資料から“特別な事情”が読み取れないと不許可になります。
前述した東京地裁判決でも、在留許可や更新が外国人の当然の権利として保障されるものではなく、法務大臣の裁量の余地があることが述べられています。
| 不許可につながりやすい類型 | 説明不十分、証拠不十分 | 改善の勘所 |
| 事実関係の不整合 | 年月日・同居期間・別居理由が書類間で食い違う。 | 年表を先に確定し、証拠ごとに「何を証明するか」を振り分ける |
| 監護養育の立証不足 | 親権はあるが実際の養育が見えない、面会の頻度・養育費が不明。 | 写真や手紙、電話、メールでのやりとり等で監護・養育をアピールする。 |
| 生計・定着性の弱さ | 仕事の継続性に問題。働いていない。海外で生活する期間が長い。 | 就労・収入・家計の見通しを数値で示し、居住の安定も説明する。 |
| 不誠実・虚偽の疑い | 虚偽記載や不実文書が疑われれば、取消しリスクもある。 | 「不利な事実」も含め、反証資料と整合的に説明する。 |
5.理由書の作成
入管申請は“書面審査”の色彩が強く、提出文書から相当性が読み取れる形に組み立てる必要があります。
そこで、入管に在留許可を得るために在留許可の必要性・相当性を申請理由の説明、根拠、証拠資料等から明らかにする書面を提出する必要があります。この書面は一般に理由書と呼ばれています。理由書は、主張の“見出し”を先に置き、次に事実→証拠→評価(なぜ日本での居住が相当か)に対応させるのが一般的です。
以下は、離婚・子の監護養育を前提にした最小構成のひな形です(実案件では、資料への紐付けや個別事情で大幅に変わります)。
理由書(例)
申請の趣旨
現行在留資格:日本人の配偶者等
申請内容:在留資格「定住者」への変更
申請理由の要旨:離婚により配偶者としての身分を失ったが、日本で子を監護養育し生活基盤を維持しているため
事実経過(年表)
交際開始/婚姻/同居開始/別居開始/離婚成立/子の出生・認知・親権者指定/養育状況
子の監護養育の実態
居所、保育園・学校、通院、日常の送迎、面会交流、養育費の取り決め
(添付資料:住民票、在学証明、診療明細、写真、連絡履歴 等)
生活基盤(生計・住居・支援)
就労先、収入推移、家計、住居契約、支援者(身元保証人等)
(添付資料:在職証明、課税証明、給与明細、賃貸借契約書 等)
結論
上記事実・資料のとおり、日本での居住継続には特別な理由があり、定住者としての在留を認めることが相当である。
定住者(とくに告示外定住)は「個別事情の組み立て」が勝負であり、事実の抜け・証拠の不足・説明の曖昧さがそのまま不許可リスクになります。
離婚・死別・子の監護養育が絡む案件では、家族法(親権・監護)と入管実務が交差するため、行政書士による書面構築に加え、紛争性(調停・訴訟・DV等)を含む場合は弁護士の関与が有効になり得ます。
【申請の全体像(簡易図)】
状況変化(離婚/死別/監護開始)
→「配偶者に関する届出」(14日以内)
→在留資格変更(定住者等)
→書面審査(事情説明書+裏付け資料)
→追加資料対応
→結果
以上、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「定住者ビザは個別事情がすべて 告示・告示外定住と理由書作成の実務」について解説しました。
