この動画の全編はこちらから
外国人留学生を受け入れている日本語学校にとって、学生の「出席率」は在留資格更新の鍵を握る重要な指標です。
しかし、日々の管理が甘く、出席率の低下に気づくのが遅れた結果、留学生のビザが更新できずに帰国を余儀なくされる事例が後を絶ちません。
本記事では、「出席率の問題が後から発覚した場合の法的リスク」と「学校運営者が今すぐできる具体的な対策」について、事例や法律の根拠を交えて分かりやすく解説します。
このページの目次
出席率とビザ更新の関係
外国人留学生の在留資格、いわゆる「留学ビザ」は、学業を目的として日本に滞在することを前提に付与されています。
このため、入国管理局は「授業に出ていない=本来の目的を果たしていない」と判断し、出席率を厳しく審査します。
一般的には出席率が80%以上あればビザ更新に支障はありませんが、70〜80%では理由書の提出が求められ、60%未満の場合は原則として更新が認められないと考えられています。
また、出席率が悪いと「本来の学習活動をしていないのではないか」,「学業より就労が目的ではないか」と疑念を持たれ、資格外活動(アルバイト)の実態まで精査される可能性があります。
つまり、学生が日々教室に来ているかどうかが、在留継続の可否を左右する極めて重要なポイントなのです。
事例
実際に、出席率が原因で留学生が在留資格の更新を拒否されたり、資格そのものを取り消されたケースは数多く存在します。
例えば、ある日本語学校に通う留学生Aさんは、出席率が約50%と著しく低下していました。
理由を尋ねると、生活費を補うため夜間のアルバイトに励み、朝の授業に出られなかったとのことでした。
更新時には事情を記載した理由書を提出しましたが、入管は「学業より就労を優先している」と判断。
その結果、Aさんの在留期間更新は不許可となり、やむなく母国へ帰国することとなりました。
また別の留学生Bさんは、ほとんど授業に出席せずにフルタイムに近い形で働いていたことが発覚。
その情報が学校から入管へ報告され、ビザの期限を待たずして在留資格が取り消されました。
このような事例は決して例外ではなく、留学生活が一瞬で終わるリスクをはらんでいます。
入管法に基づくリスクと取消し制度
出席率の低下が続くと、単にビザ更新ができないだけでなく、「在留資格の取消し」という厳しい措置が取られる可能性があります。
出入国管理及び難民認定法(入管法)第22条の4では、外国人が在留資格に基づく活動を正当な理由なく一定期間行っていない場合、法務大臣はその在留資格を取り消すことができると定めています。
留学生にとっての「在留資格に基づく活動」とは、当然「学業=授業への出席」です。
したがって、極端な怠学状態が3か月以上続くと、取消事由に該当し得ると解釈されています。
さらに、資格外活動許可(アルバイト)はあくまで学業が順調であることが前提です。
週28時間の上限を超えて働いていた場合や、出席率不良の原因が就労にあると判断されれば、悪質なケースとして在留資格が途中で取り消される可能性があります。
2016年の法改正でこの取消し制度は強化され、「就学せずに就労する外国人」への対応は一層厳格になりました。
学校運営に及ぶ影響
怠学によるトラブルは、学生本人だけでなく学校側にも深刻な影響を及ぼします。
出席率不良の学生を放置していると、入管から「適切に管理していない学校」として警告や行政指導を受けることがあります。
さらに悪質なケースでは、日本語教育機関としての「告示校指定」が取り消されることもあります。
実際、ある日本語学校では、留学生の在留手続に関する不適切な対応が原因で、法務省から告示校指定の取消し処分を受けました。
この処分により、その学校は5年間にわたり留学生を新たに受け入れることができなくなりました。
学校の信用は大きく損なわれ、経営面にも甚大な打撃となります。
怠学の放置は、単なる「一人の学生の問題」ではなく、「学校全体の存続にも関わる問題」だと認識すべきです。そのため、留学生の出席管理と指導体制の強化は、学校運営上の最重要課題といえます。
リスク回避のためのチェックポイント
留学生の怠学によるビザ問題を防ぐには、学校としての管理体制を日常的に整えることが不可欠です。
まず、出席管理は毎日・毎月単位で徹底しましょう。出席率が80%を下回る兆候が見られた段階で、面談などを通じて原因を早期に把握し、改善を促す必要があります。
次に、1か月の出席率が50%未満となった学生については、法務省の指針により翌月末までに地方入国管理局への報告義務が生じます。
この報告を怠ると、学校自体の認定取消しに繋がるおそれがあるため、制度への正確な理解と対応が求められます。
また、欠席理由が病気や家庭事情等であれば、必ず診断書などの証明書類を提出させて保管し、ビザ更新時に説明できるよう準備します。
さらに、学生には入学時や定期的な指導の中で、「出席率の低下=ビザ更新の危機」であることを繰り返し啓発し、自己管理の意識を高めてもらうことも大切です。
日頃からの小さな積み重ねが、大きなリスクの未然防止につながります。
ビザ更新申請時の対応実務
在留期間の更新申請時には、学生本人の出席状況が審査の重要なポイントとなります。
出席率がボーダーライン(70%前後)を下回っている場合には、学校側のサポートが成否を左右するカギとなります。
まず必要なのは、欠席の理由を明確に説明する理由書の作成です。
本人の反省文や担任教員の指導記録、改善計画書などを添えて、入管に誠意と改善の見込みを伝えましょう。
可能であれば、行政書士などの専門家に事前相談し、提出書類の内容を精査しておくことも有効です。
また、今後の進学先の合格通知や学業継続の意思を示す文書がある場合は、それも添付資料として活用できます。
一方で、出席簿の改ざんや虚偽の報告は絶対にいけません。
不正が発覚すれば、学校全体の信頼が失われるばかりか、関係者が入管法違反に問われる可能性すらあります。
更新申請は、正確な記録と誠実な説明に基づくことが、最も重要な対応となります。
最後に
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、外国人の在留資格問題や入管手続に精通した専門家が多数在籍する、刑事事件と入管法務を中心に取り扱う法律事務所です。
当事務所では、出席率不良によりビザ更新が困難となった留学生の代理申請支援をはじめ、在留資格取消処分に対する不服申立てや異議申請、さらには学校運営者への法務アドバイスにも積極的に対応しています。
また、入国管理局との対応に不安を抱える方には、事情説明書の作成や提出書類のリーガルチェックを通じて、的確かつ実務的な支援を行っています。
留学生を受け入れている日本語学校や専門学校からの相談にも対応しており、法務省告示校の認定維持に必要な管理体制構築のアドバイスも提供しております。
出席率やアルバイトの問題で在留資格の継続が危ぶまれる場合や、学校としての体制に不安がある場合には、ぜひ一度ご相談ください。
私たちは、学校と留学生双方が安心して学びの環境を築けるよう、法的な側面から全力で支援いたします。
お問い合わせはこちらからどうぞ。

日本に在留する外国人の方が増える中,ビザや在留資格の手続きは複雑で分かりにくく,誤ると収容や強制送還のリスクも伴います。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では,日本に在留する外国人の方,日本に入国したいという外国人の方やそのご家族の方のために最大限のサポートをさせていただきます。自分たちだけで悩まずに,どうぞお気軽にお電話下さい。