監理措置とは何なのか

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が、2024年6月10日施行の改正「出入国管理及び難民認定法」に新たに創設された「監理措置制度」について解説します。

昨年の入管法改正では3回目以降の難民者は強制送還の対象になるという部分が大きな話題となりましたが、それ以外にもいくつか重要な改正や新規創設がなされました。
その中の一つに監理措置制度があります。

監理措置とは、「退去強制手続を受ける外国人について、監理人による監理の下で逃亡等を防止するとともに相当期間に渡って社会内での生活を許容しながら退去強制手続を進めるという措置」とされています。 *出入国在留管理局HP
これまで不法入国の場合や日本滞在中に何らかの事情により在留資格を失って国外退去が確定した者は、国外退去するまで入管収容施設に収容することを原則としていました。(全件収容主義)
全件収容主義の問題点として、国外退去が確定しても退去強制命令を拒み続ける外国人がいた場合、その外国人は長期に渡る入管施設への収容につながり、結果として被収容者の健康上の問題等が生じることがありました。
また被収容者の健康問題を考慮して仮放免を行った場合に、仮放免を受けた外国人が逃走するという事態が生じることもありました。
そこで問題点が多かった原則収容の入管法の規定(全件収容主義)を全面的に見直して、個別事案ごとに逃亡等のおそれの程度に加え、本人が受ける不利益の程度も考慮したうえで収容の要否を見極めて、収容か監理措置かを個別に判断することになりました。

新しい入管法から見た監理措置の流れ

(違反調査)27条 
入国警備官は、退去強制事由に該当すると思われる外国人「(以下容疑者)」がいるときは、容疑者に対して退去強制事由に該当する事実があるかどうかを調査することができます。     
(主任審査官の審査)39条1項
入国警備官は第27条による違反調査の結果、容疑者が退去強制事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があると認める場合は、容疑者が逃走する恐れがあるとして収容した場合を除いて主任審査官に、容疑者が退去強制事由に該当する相当の理由がある旨を通知します。
第39条2項(主任審査官の審査)
入国警備官から通知を受けた入国審査官は、容疑者が入管法24条各号で規定する退去強制事由のいずれかに該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、
第44条1項の規定による監理措置とするか入管施設に収容するかを審査しなければなりません。

(収容に代わる監理措置)第44条の2項
第39条2項による調査の結果、主任審査官は容疑者が入管法第24条各号(退去強制該当事由)のいずれかに該当すると疑うに足りる相当の理由がある場合に、容疑者が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により容疑者が受ける不利益の程度その他の事情を考慮して、容疑者を収容しないで退去強制の手続きを行うことが相当であると判断する場合は、容疑者を監理措置に付ける旨の決定をすることになります。
第44条の2第4項
入管法に定める規定により入管収容施設に収容された容疑者は、法務省令で定める方法により、主任審査官に対して、自分を監理措置に付けるよう主任審査官に請求することが出来ます。
第44条の2第6項
主任審査官は容疑者からの請求(法44条の2第4項)又は職権で、収容されている容疑者が逃亡し、又は証拠を隠滅するおそれの程度、収容により収容されている容疑者が受ける不利益の程度その他の事情を考慮して、容疑者を収容施設から放免(入管収容施設から外に出すこと)して退去強制手続きを行うことが相当と認めるときは、その者を放免して監理措置に付ける決定をします。
この場合、監理措置に付ける者に対して監理条件を付けることができ、また監理措置につけた者が逃亡又は証拠の隠滅を防止するために必要がある場合は、300万円を超えない範囲内で法務省令で定める額の保証金を納付されることができます。

以上が改正入管法で新たに創設された監理措置について条文から見た流れです。

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