日本国籍喪失による在留資格申請と帰化申請について

日本国籍喪失による在留資格申請手続きと帰化申請手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がQ&A方式で解説します。
( 架空の事例です。)

参考:帰化許可申請/法務省HP

このページの目次

ケース1

Aさんは大学時代にアメリカの大学に留学しました。
大学卒業後、アメリカでの生活が気に入りそのまま現地の会社に就職しました。
就職先で知り合ったアメリカ人女性と結婚し、永住権を取得した後、Aさんはアメリカ国籍を取得しました。
Aさんがアメリカ国籍を取得してから数年経った頃、日本にいる両親からAさんに連絡がありました。
Aさんがアメリカに移住してから既に20年以上が経過し、Aさんの両親が高齢になってきたことからこの先実家のことをどうすればいいか相談したいという内容でした。
Aさんは3人兄弟の長男で、いずれは日本に帰って両親の面倒を見ていきたいという気持ちを強く持っています。

Q アメリカ人としてアメリカに住むAさんが、日本に戻って実家の管理や親の面倒をみるにはどのような手続きが必要になるでしょうか?
A 国籍法11条1項「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
国籍法11条1項からAさんはアメリカ国籍を取得したと同時に日本国籍を喪失しています。そのためAさんはアメリカ国籍者として日本に入国する手続きを取る必要があります。
具体的な方法としては、Aさんが3か月以上日本に滞在する場合は在留資格認定証明書により、日本にいるAさんの両親がアメリカにいるAさんを呼寄せる形をとります。
この場合申請取次の資格のある行政書士等、在留申請手続きの専門家の力を借りると在留申請手続きがスムーズに進むでしょう。

Aさんの両親は日本人なので、Aさんは日本人の実子の身分となり、在留資格「日本人の配偶者等」の資格で日本に入国手続きをすることになります。
Aさんの両親のどちらかがAさんの身元保証人となります。日本とアメリカの双方でAさんの在留資格認定証明書申請に必要な書類を集めます。
Aさんが来日後に両親の住む実家で生活する場合は、実家の住所を管轄する地方出入国在留管理局に「日本人の配偶者等」の在留資格認定書を申請します。

ケース2

Aさんの手元に期限未到来の日本国パスポートとアメリカのパスポートがあったので、アメリカ人として日本に入国するより日本人として入国した方が手続きが楽だろうと考え,Aさんは日本のパスポートを使って来日することにしました。

Q Aさんが日本国のパスポートで日本に入国した場合、Aさんにはどのような不都合が生じるでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍を取得した時点で日本国籍を失っていることから、Aさんが所有する日本国のパスポートは無効となります。

Aさんは無効なパスポートを使って日本に入国したことになり、不法入国(出入国及び難民認定法3条1項)の罪により、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは3百万円以下の罰金の刑に処せられるおそれがあります。パスポートの選択については十分な注意が必要です。

ケース3

Aさんが日本に帰国してから取り寄せた自分の戸籍事項証明書には自分の名前が記載されてありました。
Q この場合、Aさんの戸籍はどのような扱いになるのでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍取得と同時に日本国籍を失っているので、Aさんが日本国籍を喪失していることは間違いありません。
Aさんは国籍喪失の届出を自分が国籍喪失を知ったときから3か月以内に在アメリカ日本大使館又は自分の本籍地にある市町村役場に届け出る必要があります。
Aさんがこの届出を失念していると、Aさんの戸籍事項証明書の記載が訂正されずそのままになっている可能性があります。       
Aさんはアメリカ国籍を取得したことにより日本国籍は「実質的」に失われていますが、国籍喪失届を提出していないので、戸籍事項証明書からはAさんの名前は削除されず残っておりAさんの日本国籍は「形式的」に残っている形となっています。
そのためAさんは本籍のある市町村役場に自分の国籍喪失届を提出して「形式的」にも自分の日本国籍を喪失させる手続きが必要となります。

ケース4

Aさんは日本で仕事先も決まり、この先アメリカに戻ることなくアメリカにいる妻と子どもを呼寄せて、日本で暮らしていきたいと考えています。
Q Aさんがこの先アメリカに戻らず日本で暮らしていく場合、どのような手続きを取ればよいでしょうか?
A この場合は「日本人の配偶者等」の在留資格から帰化申請手続きにより日本国籍を取得する方法があります。
国籍法8条3項で規定されている簡易帰化の方法によります。
Aさんは元日本国籍者で日本に住所を有するものであることから、国籍法第5条で規定する一、二、四の条件を備えないときでも、帰化許可申請が可能となります。
一 引き続き5年以上日本に住所を有すること。(居住要件)
二 十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること(行為能力)
四 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること(生計要件)
以上,国籍喪失と在留資格申請・帰化手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、日本国籍喪失による在留資格の申請、帰化許可申請手続きについて取り扱っております。国籍喪失後の在留申請手続きについてお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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