「令和6年1月1日現在、日本国内に約7万9000人の不法残留者がおり、その多くが不法就労をしていると言われています」(警視庁HP)。
「不法残留者」の内訳は、短期滞在からの不法残留が49,801人、技能実習からの不法残留が11,210人、特定活動からの不法残留が8,189人、留学からの不法残留が2,288人、日本人の配偶者からの不残残留が1,880人,その他が5,745人(これらの在留資格に該当しないもの)で合計79,113人となっています。
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1.不法残留者と不法就労ついて
不法残留者のうち短期滞在と技能実習からの不法残留が全体の約8割を占めており、警視庁HPにあるようにその多くが国内で不法就労をしていると思われます。
短期滞在は家族訪問・親族訪問、スポーツ、観光等の目的で最大90日間日本に滞在することが認められた在留資格です。
他の在留資格に比べて審査手続きが簡略化されており、比較的短期間で審査結果が出るところに特徴があります。短期滞在の在留資格では就労が認めらておらず、短期滞在からの不法就労者は、観光や家族訪問ではなく、初めから日本で働く目的で比較的許可が認められやすい短期滞在の在留資格を利用して入国していると思われます。
技能実習からの不法就労は①技能実習生と受け入れ先の事業所との間で何らかのトラブルがあり、技能実習生が受け入れ先から失踪した後に別の事業所で働き始めた,②受け入れ先の低賃金等、経済的な理由により、ブローカー等のあっせんを通して正規の手続きを経ずに転職したケースの2種類が考えられます。
他に③技能実習先を失踪した後、窃盗等の犯罪行為で生計を立てるというケースも考えられますが、窃盗等の犯罪行為はそもそも「就労」に入らないのでここでは除きます。
2.「不法就労助長罪」とは?
不法就労者を事業所で雇用する場合、
①不法就労を希望する者が偽造在留カードや偽造パスポートを雇用主に提示して、自分には仕事ができる在留資格があると信じ込ませ不法就労を行うというケース
②正規の在留資格はあるが、所持する在留資格では仕事をすることが認められていない者を雇用するケース
③不法就労者を雇用する事業所の方で就労できる在留資格がないことを把握しながらあえて雇用するケース
の3種類が考えられます。
①、②のケースの場合、不法就労を狙う外国人と不法就労をあっせんするブローカーがセットになって不法就労者であることを知らない事業者側に就労を持ち掛けるケースがあります。
③の場合は不法就労者を雇用する事業者側に「不法就労助長罪」が成立します。
①、②の場合、雇用する側に在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は「不法就労助長罪」が成立します。
不法就労助長罪は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科」となっています。
3.偽造在留カード対策について
不法就労対策として「不法就労防止のために外国人を雇用する際には必ず在留カードを確認してください」(出入国在留管理庁HP)とあり、HP上で在留カードの確認箇所としてカード上でのチェツクポイントがいくつか示されています。
チェックポイントを確認すれば当該在留カードが本物かどうか見分けることが出来るということです。
しかしながら近年の偽造在留カードは極めて精巧に作られており、一般の人が在留カードの外見を見ただけでは本物かどうか見分けが難しく、さらに在留カードを偽造する側は、政府が示している在留カードの見分け方チェックポイント対策までしていることから、一般人が外見から当該在留カードが本物か偽物なのか判断するのはほぼ不可能となってきています。
そこで不法就労予防のためには、在留カードの外見チェックだけではなく、他の手段により在留カードをチェックする必要があります。
在留カードが真正なものかを確認するための有効な方法として、在留カード等読取アプリケーションを活用する方法があります。
在留カード等読取アプリケーションの説明について、
「在留カード等のICチップ内に保存されている身分事項や顔写真等の情報を読み取るためのものです。読み取った情報と、券面に記載された情報を見比べることにより、容易に偽変造の有無を確認することができます。
本アプリを出入国在留管理庁ホームページ等において無料配布することで、偽変造在留カード対策を強化し、より一層偽装滞在者対策を進めます。」(出入国管理庁HP)
とされています。
このアプリを使用することで、在留カードが真正なものか確認することができます。
もう一つ有効な在留カードの確認方法として住民票を提出してもらうことで、住民票の記載内容と在留カードの記載内容を照合して在留カードの真正を確認する方法があります。
「住民基本台帳法の一部を改正する法律」により、2012年7月9日以降、日本で生活する外国人も住民基本台帳制度の対象となりました。そのため在留カードと住民票は連動しており、在留カードの対象者にはかならず住民票が発行されます。
住民票には、「中長期在留者である旨、在留カードに記載されている在留資格、在留期間及び在留期間の満了の日並びに在留カードの番号」の情報が記載されており、在留カードと住民票に記載されているこれらの情報を照合することで、在留カードが真正なものか確認することができます。
この二つの方法の両方又はどちらかを活用することで、在留カードが真正なものか判断することができます。
4.不法就労者であることを知らずに雇用して、あとから不法就労者であることが分かった場合どうすればよいか
最後に不法就労者とは気づかずに不法就労者を雇用してしまい、後日不法就労であることが発覚した場合についてです。
不法就労助長が認められた場合は、雇用側に刑事処分や行政処分に問われることが考えられますが、雇用側は不法就労者を雇用していたことを隠さずに警察や出入国在留管理局に報告する必要があります。
また既に管轄の出入国在留管理局の方で不法就労の状況を把握しており、雇用側の事業所に調査に来ることも考えられます。
この場合は、不法就労者を雇用するに至ったきっかけや今後不法就労者を雇用しないための事業所での取組みなどをまとめた報告書を提出する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不法就労者の雇用に関する出入国在留管理局への報告書作成業務を扱っています。
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