「All persons born or naturalized in the United States,and subject to the jurisdiction thereof,are citizens of the United States and of the State wherein they reside.」
合衆国憲法修正第14条は冒頭で「合衆国内で生まれ、または合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である」と記し、アメリカ合衆国が出生地主義の原則を定めていることを明らかにしています。
出生地主義とは
出生地主義とは、「父母の国籍の如何を問わず、子が出生によって出生地国の国籍を取得する主義であり、アメリカ、カナダ、オーストラリア及びブラジル等の南アメリカ大陸の多くの諸国で採られて」います。
アメリカ合衆国は国籍の取得にあたり出生地主義を採用する代表的な国の一つです。出生地主義と対になる主義として血統主義があります。
血統主義とは「子がその出生によって出生地の如何を問わず、親の血統に従って親と同じ国籍を取得する主義であり、自国民との血縁関係に基づいて自国の国籍を付与する主義で、フランス、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ大陸諸国をはじめ、韓国、中国などでも原則として採られて」います。日本では子の出生時に父又は母のどちらかが日本国籍であれば子に日本国籍を認める父母両系血統主義を採用しています。
*逐条詳解 国籍法P106
新大統領令の内容は
トランプ大統領は大統領就任初日の2025年1月20日、合衆国憲法修正第14条で定められた出生地主義の適用をこれまでより大きく制限する大統領令に署名しました。
日本経済新聞 トランプ氏、「出生地主義」制度見直しの大統領令に署名
大統領令では出生地主義の制限にあたり、合衆国憲法修正第14条の冒頭にある「合衆国の管轄に服する者」という文言を重要視しています。
大統領令によると、元々合衆国憲法修正第14条はアメリカ合衆国国内で生まれた全ての人に生来的に市民権を与えるものではなく、アメリカ合衆国の「管轄に服さない者」は出生地主義による市民権の付与の対象から除外しているという理解に沿って、アメリカ国籍法コード8 U.S.C1401では「アメリカ合衆国で生まれその管轄に服する者」が出生時からアメリカ合衆国の国民及び市民であると規定しています。
今回の大統領令ではアメリカ合衆国で生まれながらもアメリカ合衆国の市民権が認められない者の範囲として、以下(1)、(2)をあげています。
(1)子の出生時に子の母親がアメリカ合衆国に不法滞在しており、子の父親が子の出生時米国市民又は永住者ではない場合。
(2)子の母親が子の出生時に適法な滞在ではあるが滞在が一時的なものである場合、例えばビザの免除を受けアメリカ合衆国の支援を受けての訪問、就労ビザ、留学ビザ、観光ビザ等の場合や子の父親が子の出生時にアメリカ合衆国市民や永住者ではない場合。
(1)及び(2)に該当する場合は、合衆国憲法修正第14条で定められた「アメリカ合衆国の管轄に服する者」に該当しないとして、子がアメリカ合衆国で生まれても自動的にアメリカ国籍を付与することを認めないとするものです。
この措置はアメリカ合衆国が採る出生地主義を否定するものではありませんが、従来よりも出生地主義による国籍付与の大幅な制限となるものです。
この大統領令は、大統領令の発令日より30日経過後からアメリカ合衆国国内で子が出生した場合に適用されます。大統領令発付即日から、この大統領令は合衆国憲法修正第14条に反し違憲であると提訴がありました。
この大統領令が出生地主義について定めた合衆国憲法修正第14条に反するか否かについては現段階ではまだはっきりしていません。
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