出国命令制度の法改正,制度はどう変わった?

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が令和5年6月9日入管法改正による出国命令制度の変更部分について解説します。

令和5年6月9日の入管法改正により「出国命令制度」が一部改正され令和6年6月10日から施行されています。
「出国命令制度」とは、入管法違反者のうち、一定の要件を満たす不法残留者について、収容をしないまま簡易な手続きにより出国させる制度です。」
(出入国管理及び難民認定法、以下法第55条の85)、「出国命令制度」はH16年12月2日に施行されました。

1.出国命令制度設立の背景

出国命令制度が設立された当時不法残留者が219418人いました。
(平成16年1月段階、令和6年1月1日現在では79113人)
不法残留者を減少させることが出入国管理行政における急務の課題でした。
当時からオーバーステイ等を理由に退去強制処分を受けると退去の日から5年は日本に上陸することが認められないとする規定は存在していました。
(退去強制1回目は5年、退去強制2回目以降は10年)
しかしながら不法残留者等を5年又は10年の上陸拒否とする従来からの規定だけでは不法残留者が減少しない状況がありました。
そこで一定の要件を充足し、不法残留の状態にある者が自ら出頭して帰国の意思を示した場合に、上陸特別拒否の期間を5年から1年とすることにより、
不法残留者の出頭を促進し不法残留を減らすことを目的として出国命令制度があらたに制定されました。

2.具体例

具体的に以下の(1)~(5)全てに該当する場合に出国命令が認められます。

(1)ア又はイのいずれかを満たすこと
ア 入国警備官の違反調査の開始前に、速やかに日本から出国する意思をもって自ら出入国在留管理局に出頭したこと
イ 入国警備官の違反調査の開始後、入国審査官の違反調査により退去強制事由に該当する旨の通知を受ける前に、
速やかに出国する意思があることを入国審査官又は入国警備官に表明したこと
(2)不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
(3)窃盗罪等の一定の犯罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
(4)過去に本邦から退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
(5)速やかに日本から出国することが確実と認められること

3.出国命令が認められない場合について

日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた者や麻薬、
大麻、あへん、覚醒剤等の取締りに関する法令に違反して刑に処せられた者は、上陸拒否期間に定めなく、日本に上陸することができません。
そのため出国命令制度を利用することはできません。

4.出国命令制度の適用を受けるための出頭場所について

原則として全国に8か所ある地方出入国在留管理局(札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡)又は3か所の地方出入国在留管理局(横浜、神戸、那覇)に出頭します。

5.法改正があった部分

令和5年度の改正では、さらに自発的な出国を更に促す観点から、出国意思をもって自ら出頭した場合に加え、
入国審査官から退去強制事由に該当すると認定される前に速やかに日本から出国する意思を表明した場合にも出国命令の対象が拡大されました。
①(法第24条の3第1項ロ)
「第二十七条の規定による違反調査の開始後、第四十七条第三項の規定による通知を受ける前に、
入国審査官又は入国警備官に対して速やかに本邦から出国する意思がある旨を表明した者であること。」
②その他改正による追加事項として、さらに退去強制を受けた者であっても、自分の費用負担で自ら帰国しようとする場合、その者の素行、退去強制の理由となった事実その他の事情を考慮して相当と認めるときは、上陸拒否期間を1年とする決定をすることができることになりました。(法第52条5項)
        
参考文献:出入国在留管理局HP

以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が令和5年6月9日改正の出入国管理及び難民認定法における「出国命令制度」の変更部分について解説しました。

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