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帰化について

帰化について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
帰化とは何か?
帰化とは、日本国籍の取得を希望する外国人からの意思表示に対して、法務大臣の許可によって、日本の国籍を与える制度です
国籍法には法第4条から第9条までで帰化について規定されています。
まずは国籍法第四条を見てみましょう。
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第四条では、外国人は帰化により日本国籍を取得することができると規定されています。
そして帰化のためには法務大臣に許可を得なければなりません。
外国人の申請者が帰化許可申請手に始まり、帰化を許可するだけの条件がそろっているかの調査を経て、法務大臣が帰化の可否の処分を行うことで終了する一連の流れが帰化手続きになります。
帰化の一般的条件については五条で規定されています。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
第五条は、帰化許可を希望する外国人に対して法務大臣が日本への許可を与える条件を定めたものです。
日本国と特別な関係に立たない外国人の帰化である帰化の条件を定めています。このような帰化を普通帰化といいます。
本条の1から6までの帰化に関する条件は、帰化許可の最小限の必須条件であり、これらの条件を満たしていたとしても、必ず帰化が許可されるとは限りません。次に条文の内容について確認していきます。
1 住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
帰化申請者が日本と場所的関連性があることが帰化の判断をするうえで重要な条件として最初に規定されています。帰化の申請をする時まで、引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。
これまでに五年間以上、継続して住所を有していても、帰化申請時に外国に住所があったり、前後を通じて五年以上住所があったとしても途中で中断していた場合は、「引き続き五年以上日本に住んでいる」の要件には該当しません。
なお、住所は、適法なものである必要があり、正当な在留資格を有していることが求められます。在留資格のない不法滞在者は帰化申請ができません。
2 能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
年齢が18歳以上であって、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。
日本の成人年齢は18歳以上ですが本国(帰化申請をする外国人の出身国)の成人年齢が20歳の場合は20歳になるまでは能力要件を満たさないことになります。
3 素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
帰化により日本人となった者により社会の安全が害されては困るのでこのような規定が設けられました。素行が善良であることが必要です。
素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して、通常人を基準として、社会通念によって判断されることとなります。
4 生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
生活に困るようなことがなく、日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たすこととなります。
生計を一つにする親族単位で判断されるので、たとえば親と別居し、親の仕送りで大学に通っている成年の子供もこの条件を満たすことになります。
5 重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
帰化しようとする方は、無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。
なお、例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。
6 憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化が許可されません。
なお、日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、上記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条までに規定されています)。これを簡易帰化といいます。
簡易帰化について
簡易帰化については、条文上次のように定められています。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有する者については、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えていないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であった子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有する者
二 日本で生まれた者で三年以上日本に住居若しくは居所を有し、又はその父若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き一〇年以上日本に居所を有する者
本条は、日本国民と一定の血縁関係があるか、日本と一定の地縁関係がある外国人であって日本に住所がある外国人が帰化をする場合には、帰化条件の一つである居住要件(五条一項一号)を必要としないこととしたものです。帰化条件の一部を緩和した簡易帰化に関する規定です。
第六条では居住要件を緩和しています。
国籍法第七条
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する者については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても同様とする。
三年以上日本に住所または居所を有し、かつ、現在日本に住所を有する者であるか、または、婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有する場合に、国籍法第五条一項、二項で規定する住所要件と能力要件を緩和するものです。
日本国民の配偶者である外国人というためには、日本国民と外国人の婚姻が有効に成立し、かつ、帰化申請時に婚姻が継続していることが必要です。いわゆる偽装結婚は対象にはなりません。
第八条
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えていないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの
三 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有していない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
本条は前二条よりもさらに日本社会と密接な関係を有する者につき居住要件(五条二項一号)、能力条件(同条同項二号)および生計条件(同条同項四号)を、免除して、五条に規定する帰化条件のうち素行条件、重国籍防止要件、憲法遵守条件を満たせば、法務大臣が帰化を許可することができるというものです。
第九条
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
日本に特別の功労のある外国人に対して、五条第一項に定める帰化条件を全く備えていなくても、法務大臣は国会の承認を得て帰化を許可することができます。
大帰化と呼ばれています。
帰化許可申請の方法について
本人(15歳未満のときは、父母などの法定代理人)が自ら申請先に出向き、書面によって申請することが必要です。
その際には、帰化に必要な条件を備えていることを証する書類を添付するとともに、帰化が許可された場合には、その方について戸籍を創設することになりますので、申請者の身分関係を証する書類も併せて提出する必要があります。
帰化の手続きに関しては、こちらの法務省HPにも手続きの説明があります。
申請先
住所地を管轄する法務局・地方法務局
帰化許可申請に必要となる主な書類
1 帰化許可申請書(申請者の写真が必要となります。)
2 親族の概要を記載した書類
3 帰化の動機書
4 履歴書
5 生計の概要を記載した書類
6 事業の概要を記載した書類
7 住民票の写し
8 国籍を証明する書類
9 親族関係を証明する書類
10 納税を証明する書類
11 収入を証明する書類
以上、帰化申請について該当条文を中心に解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、帰化申請手続きを取り扱っております。
帰化について疑問等があるときは、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで
お問合せください。
帰化について不安なこと,心配事がある方はこちらからお問い合わせください。
不法就労とは何か

不法就労の実態と法的対応について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
在留外国人の増加に比例して、在留外国人の日本での不法就労が深刻な社会問題となりつつあります。
ここでは不法就労の定義、事例、および不法就労者を雇用した場合の法的対応について、事例を交えながら詳しく解説します。
不法就労とは何か
不法就労とは、適切な在留資格や就労許可なく日本で働く行為を指します。これには、在留資格の条件に反して働くことや、在留資格なしで働くことが含まれます。不法就労は、失踪者側が金銭を得る目的による経済的な必要性、雇用者側の責任による労働環境の悪化等によって引き起こされます。
不法就労は、不法就労者の労働者としての権利侵害や雇用保険・労働災害保険等、社会における労働保障システムへの悪影響をもたらします。
不法就労は出入国管理及び難民認定法(以下法)違反であり、刑事罰の対象となります。
また不法就労者だけではなく、不法就労者を雇用する側も罰せられる場合があります(不法就労助長罪:法73条の2第1項)。
不法就労は日本の法律に違反する行為であり、刑事罰の対象となります(法第70条第4項)。
具体的には、不法就労者は逮捕や拘留、罰金、さらには強制退去の対象となることがあります。(法第24条四項ロ)
不法就労が発覚した場合、捜査機関はまず、在留資格の有無や就労の事実を調査します。
その後、不法就労者は出入国管理局による調査を受け、場合によっては退去強制令書が発行されます。
このプロセスは、個々の事情に応じて異なる場合があります。
雇い主として気をつけること
不法就労を助長する雇用者に対しては、罰金や刑事訴追の対象となることがあります。
これは、不法就労を防止し、社会における適切な労働環境を保持するための重要な措置です。
雇用者は、外国人労働者の在留資格を確認し、法律を遵守する責任があります。
不法就労を防止するためには、政府と企業の両方が積極的な役割を果たす必要があります。
外国籍の人を雇い入れる場合、雇い主としてはビザ・パスポートの有効性を確認しておきましょう。
昨今、偽造のパスポートや在留カードを用いて就労を図ろうという事案も発生してます。
偽造の在留カードやパスポートを使われた場合、事業主としても可能な限り「有効なものか/偽造ではないか」を確認しておかなければいけません。
出入国在留管理局のホームページで、在留カードが偽造のものではないかどうか簡単にチェックすることができます。
こちらのサイトから確認することができます。確認の際には在留カードの番号と在留期限を入力する必要がありますので、事前に確認しておきましょう。
この問題の厄介な所は、不法就労をした外国人のみならず、不法就労の外国人を雇い入れた事業者側も処罰の対象となることです。仮に雇い入れた外国人が不法就労者であったとしても、在留資格を確認しなかった等事業者側にも過失がある場合には不法就労助長罪が適用される虞があります。
不法就労について疑問点や気になることがあるときは、一人で悩まずに是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問い合わせください。
不法就労事件についてお困りの方、心配なことがある方はこちらからお問い合わせください。
難民認定制度とはなにか

2023年6月9日、出入国管理及び難民認定法が改正され、令和5年12月1日から順次施行されることが決まりました。
我が国における難民認定についてどのような制度がとられているのかについて、難民認定申請で適用される条文の解説を中心に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
難民認定手続きについてはこちらもご参考下さい。
「難民」とは?
そもそも難民とは具体的にどのような人たちを指しているのでしょうか?「難民」の定義については、難民条約1条において以下のように定義されています。
第1条【「難民」の定義】
(a)人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
(b)国籍国の外にいる者であること
(c)その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること
の3つの要件に該当する人を定義しています。「外務省HP」
以下,それぞれ解説をします。
(a)「迫害」について
「迫害を受けるおそれ」があるというのは,次のような状況にあることを言います。
「原則として政府の行為であり、一般の私的機関や私人によるものは、通常「迫害」になりません。
ただし、事実上政府と同様の立場にある機関の行為や、私的機関の行為であっても、政府がそれを意図的に容認し若しくは放置している場合には、「迫害」にあたり得る。」
次に「迫害」は、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見」を理由とするものでなければいけません。」
「「迫害」を受ける恐れがあるという十分な理由のある恐怖を有していたとしても、その「迫害」がこれらの理由によらない「迫害」である場合には、「難民」に該当しない。」
とされています。
「恐怖」の要件について
恐怖が十分に理由のあるもの「十分に理由のある恐怖」であることが必要であり、「十分に理由のある恐怖」といえるためには内心の恐怖が、客観的な状況により裏付けられていなければなりません。
「入管法大全P570」
我が国における難民認定申請手続きについて
外国人が難民を求める手続きは、出入国管理及び難民認定法(以下法)第61条の2で規定されています。
【難民の認定】【第61条の2 】
法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続きにより申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。
以下,条文の要件について解説します。
【本邦にある外国人】
日本の領域内にいる外国人・日本の領域内にいる外国人。不法滞在も含まれます。実際に日本の領域内にいることが必要です。
我が国の在外公館に庇護を求めて入ってきた者が、そこで難民申請を行うことはできません。
【法務省令で定める手続きにより】
法務省令では以下のように定められています。
入管法施行規則55条により難民認定を申請しようとする外国人は、申請書及び難民に該当することを証する書類を資料並びに写真を地方入国管理局に出頭して提出しなければならない。ただし、身体の故障その他申請書を作成することができない特別な事情がある者にあっては、申請書の提出に代えて申請書に記載すべき事項を陳述することができる。
(規則55条3項)
当該外国人が16歳に満たない者であるとき又は疾病その他の事由により自ら出願することができないときは、当該外国人の父若しくは母、配偶者、子又は親族がその者に代わって申請を行うことができる。
【申請があったときは】
難民の認定は、認定を受けようとする外国人からの申請を受けて行われるという意味です。
【その提出した資料に基づき】
難民であることの立証責任は、難民の申請をした外国人にあるということです。
なお法第61条の2の14で、法務大臣は、難民の認定に関する処分を行うために必要がある場合には、難民調査官に事実の調査をさせることができます。
難民調査官は、事実の調査として、難民の認定を行った外国人が提出した資料についてその真偽を調べ、また、必要があれば、当該外国人に対して更なる資料の提出を求め、自らも調査を行って法務大臣が難民の認定の可否を判断するために必要な資料の収集を行う。
法務大臣は難民調査官の調査の結果を踏まえ難民認定の可否を判断します。
「入管法大全562~563」
法務大臣の判断には以下3種類の判断があります。
①難民認定・在留許可
②難民不認定・人道的配慮による在留許可
③難民不認定・在留不許可
難民不認定の処分・難民認定の取消しの処分に不服のある外国人は、法第61条の2の9第一項により法務大臣に対して異議申し立てをすることができます。
「法第61条の2の9第一項」
次に掲げる処分に不服のある外国人は、法務省令で定める事項を記載した書面を提出して、法務大臣に対して異議申立てをすることができる。
一 難民の認定をしない処分
二 第61条の2の7第1項の規定による難民の認定の取消し
この異議の申立ては難民申請を行った外国人が処分の通知を受けた日から7日以内に行う必要があります。
【申立て期間の特例】
法61条の2の9第二項で定める異議申立期間については行政不服審査法の特則を定める規定となっています。
行政不服審査法第4条第1項は、「外国人の出入国又は帰化に関する処分(第10号)」を行政不服審査法の規定による審査請求及び異議申立ての対象から除外していますが、
難民の認定に関する処分は除外していない。」ので、難民の認定をしない処分・難民の認定の取消しの処分に対しては、異議申立てが認められます。
行政不服審査法第45条の規定する異議申立期間は60日間のところ、難民の認定をしない処分については第61条の2第2項の通知を受けた日から、
また、難民の認定の取消しについては、第61条の2の7第2項の通知を受けた日からそれぞれ7日以内とすると定めています。
行政不服審査法による異議申立て期間よりも短い期間が定められているのは、難民であるか否かは、難民申請を行った外国人が最もよく知りうる立場にあることによります。
【法61条の2の9第3項ー難民審査参与員の意見聴取】
法務大臣は、難民の認定をしない処分又は難民の認定の取消しに対する異議申立てに対する決定を行うにあたっては、難民参与員の意見を聞かなければならないと定めています。
難民参与員は諮問機関であり難民参与員の意見には法的拘束力はありません。
3人の難民参与員によって構成される班が、一つの異議申立て案件を担当し合議制ではありません。それぞれが異なる意見を提出することもありえます。
法務大臣は難民参与員の意見を参考にしながら、難民の認定をしない処分又は難民の認定の取消しに対する異議申立てに対する決定を行います。
以上が難民認定申請から法務大臣の裁決までの条文上での流れになります。
経営・管理ビザの延長の注意点

在留資格「経営管理の期間更新許可申請」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
「経営管理」の在留期間の更新は、他の種類の在留資格と比較すると難易度が高いといえます。
なぜなら、「経営管理」の在留期間更新の条件には、新規取得時の要件と同等のものを求められるからです。
また、しっかりと経営ができているか否か、管理がきちんとなされているか否かといった視点から在留期間が更新可能かどうか審査されます。
以下にて、「経営管理」の在留期間更新時に求められる要件についてご説明いたします。
「経営管理」の在留資格の申請に関する書類は,出入国管理局HPからも確認ができます。
1.申請者の適正
「経営管理」の在留期間を更新するには、日本で定められている税金(所得税や法人税、住民税など)をきちんと納めていることや各種必要な届出を提出していること、また従業員の社会保険の加入等、申請者の適正が審査されます。
税金の支払いがなされていない場合や納税義務を果たしていない場合は、在留期間更新の審査において非常に不利な要素となります。
2.事業者としての義務の履行
「経営管理」の在留資格取得者の事業者の義務として、以下のようなことが求められます。
① 事業所の確保
事業所については、短期間の月単位契約の物件や簡易な造りの屋台を指定することはできません。
つまり、1区画を占めていて、一定の場所であることが条件となっています。
また、その物件の使用意図が店舗用、事業用、事務所等事業目的だということを示す必要があります。
住居用の一部を事業用等とする場合には、貸主がその条件に同意していることも示さなければなりません。
② 会社としての納税等
日本が定める国税については、遅滞なく納めていることが求められます。
法人税および所得税、地方税(住民税など)を納め、その証明を書類として保管しておきましょう。
③ 社会保険への加入や労働環境の整備等
雇用している従業員について、非正規従業員も含めて適切に社会保険へ加入させていること、労働関係法令に従っていることが求められます。
労働保険や厚生年金、健康保険などが適用される事業所である場合には、適切に加入手続きや保険料の納付を行いましょう。
3.事業の継続性
事業の継続性が安定しているかの判断は、売上が安定していることや黒字決算が望ましいですが、直近期末においての欠損金の有無や債務超過の状況によっては、事業の継続性があると認められる場合があります。
同期末に剰余金があり、当期純利益が直近期にあるならば、事業の継続性があると考えられます。
債務超過が1年以上継続していなければ、将来の事業の計画等を考慮して、直近期末に債務超過でない場合も事業の継続が可能と認められるケースがあります。
この場合、次の1年間の事業計画や売上予想を記した文書を提出することで、基本的には事業の継続性があるものと認められます。
「経営管理」の在留期間の更新については、基本的に1年更新であることが多いですが、3年や5年の在留期間を認められるためには、以下のような条件が認められることが必要になります。
① 安定的な義務の履行・事業の継続
初めの2年間で、事業の収益、売上を一定以上継続できていると、運営が安定的だと判断され、次回の在留期間の更新では3年や5年の長期の経営管理ビザが認められる可能性が高いです。
また、納税や従業員への社会保険加入手続きや保険料の納付など、事業者・経営者としての義務を果たしていることも重要です。
「経営管理」の在留期間の更新申請において、黒字決算であることは大切な要素です。
しかし、黒字にするために代表者の報酬を低くする方法は得策ではありません。
具体的な基準はありませんが、代表者への報酬を新卒社員よりも安く設定するような経営では、安定的な事業の継続がなされていると認められない可能性が高いといえます。
② 中長期の事業計画の提出
3年先や5年先といった中長期の事業計画を作成し、更新時に追加の資料として提出することをおすすめします。
また、1人で経営している事業よりも、複数名の従業員がいて、設備投資も行っている事業の方が入管からの評価が高い傾向にあります。
まとめ
以上のように、「経営管理」の在留期間の更新における審査は比較的厳しいといえますが、しっかりと事業を安定させていれば問題なく更新をすることができます。
在留資格「経営管理」の期間更新許可申請についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
上陸拒否の特例について
上陸拒否とは、特定の理由により外国人が日本に入国することを拒否される法的措置です。
日本国内でオーバーステイ等により強制送還された人が再入国を希望する場合、上陸拒否の特例が適用されることがあります。
ここでは上陸拒否の特例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が法的な背景と具体的な事例を交えて解説します。
事例
(架空の事例です)
Aさんは中学から高校に入学する段階で、東京におばあさんが住んでいたことから、東京の高校に留学することにしました。
Aさんは高校受験,大学受験と勉強に励み,日本の大学へ進学します。
ある時Aさんはサークル仲間のBさんから、「この葉っぱをタバコのようにして紙に巻いて吸ってみなよ。疲れが取れるよ。」と微量の大麻草を譲り受け,「少しくらい吸ったところでどうせばれないだろう」,と思い、軽い気持ちで大麻を吸うことにしました。
Aさんが公園で大麻を吸っているときに、たまたま公園を巡回していた警察官に見つかり現行犯逮捕されてしまいました。その後Aさんは裁判所に起訴をされ、裁判では懲役8月執行猶予3年の有罪判決を受けました。
Aさんは在留資格の取消しこそなかったものの、この事件が原因となって翌年の在留更新が不交付となり、本国に強制送還となりました。
本国に帰ったAさんは、インターネット関連の事業会社を立ち上げ現在急成長をしています。
Aさんは自分が青春時代を過ごした日本でネットビジネスを手掛けたいと考えていますが、自身は大麻取締法で有罪判決を受けていることから無期限上陸拒否(出入国管理及び難民認定法第5条四項,以下法)となっており、日本でビジネスをするどころか遊びに来ることすらできません。
Aさんはこのまま2度と日本に入国することはできないのでしょうか?
法務大臣の裁決の特例としての上陸特別許可について
Aさんが再入国しようとした場合,次の規定による許可を求めることになります。
(上陸の拒否の特例)
第五条の二 法務大臣は、外国人について、前条第一項第四号、第五号、第七号、第九号又は第九号の二に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第二十六条第一項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによつては上陸を拒否しないこととすることができる。
(条文解説)
法第五条の二は、平成21年法律第79号による入管法の改正で新設されました。
この条文が規定される前は、上陸拒否に該当する者についてはたとえ人道上許可すべき事情があるような場合であっても、通常の上陸許可をすることができず、そのような者に対して上陸を許可する場合には、異議申出の手続きを経て上陸特別許可を行う必要があり、手続きが大変面倒でした。
このことについて「平成21年度入管白書」によると、「例えば、退去強制歴があるため上陸拒否期間中の外国人が、本国で日本人と会って結婚した場合に、法務大臣が、諸般の事情を考慮して上陸特別許可を与えたような場合であっても、その後、その外国人が本邦に再上陸しようとするたびに、入国審査官、特別審理官、法務大臣と三段階の手続きを経て上陸特別許可をしなければならないことになるなど、合理的といえない場合もあることから、上陸拒否に該当する特定の場合であっても、法務大臣が相当と認めるときは、上陸を拒否しないことができる規定を設けた」と記載されています。(入管法大全P60)。
上陸拒否の特例における具体的な申請方法としては,在留資格認定申請証明書により日本から上陸拒否となっている外国人を呼び寄せ、在留資格認定証明書での審査を通して入管側が上陸特別許可の判断を行います。
上陸特別許可のように入国審査官→特別審理官→法務大臣の三段階の手続きが省略され,手続が大幅に簡略化されています。
次に法第五条の二にある「相当と認めるとき」とは、具体的にどのような場合に「相当と認めるとき」に該当するのかについてですが、「平成25年5月10日の衆議院法務委員会において、榊原法務省入国管理局長(当時)によると「相当と認めるとき」とは、「上陸拒否事由に該当する者であっても、
その入国目的に照らし、法務大臣が上陸を求めることが相当と判断する場合には、入管法第5条の二や第二十二条に基づき上陸を認めることがあります。」と述べ、さらにその判断の基準についての質疑に対して、「個々の事案ごとに、入国目的、上陸拒否事由の内容、当該事由が発生してから経過した期間、その他諸般の事情を総合的に考慮して判断することになります」とあります。
(入管法大全P63)
そこでAさんについて上記に記載された「相当と認めるとき」をあてはめてみます。
Aさんは日本で会社を立ち上げインターネットビジネスの事業を展開したいと考えているので、「経営・管理」の在留資格で在留資格認定申請証明書により在留資格申請を行います。
以下①~④の事情を総合的に考慮して、Aさんが日本で「経営・管理」の在留資格が判断されることになります。
①入国目的:すでに本国で一定の成果を上げている自身が立ち上げたインターネットビジネスの会社を日本で立ち上げたい。
②上陸拒否事由の内容:軽い気持ちで大麻を吸ってしまった。Aさんは現在、当時の過ちを深く反省している。
③当該事由が発生してから経過した期間:Aさんが強制退去で本国に帰国してから丸10年が経過した。
④その他諸般の事情:Aさんは大変優秀な起業家であり、日本にもAさんが手がけるビジネスの協力者がたくさんおり、Aさんの事業は日本でも有望視されている。
上陸拒否の特例に関する理解を深めることは、退去強制を受けたあるいは日本で有罪判決を受け上陸拒否となった外国人で、再入国を希望する人々にとって重要です。
上陸拒否の特例の適用は大変複雑であり、個々のケースによって対応が全く異なります。
上陸拒否の特例を利用して日本に再入国したい場合は、入管業務に精通している弁護士や行政書士に法的なアドバイスや支援を求めることが、
上陸拒否の特例の活用において非常に重要となるでしょう。
在留特別許可,上陸特別許可(上陸拒否の特例)についてご不安なことがある方や,強制送還された人の再入国についてお問い合わせのある方は,こちらからお問い合わせください。
不法就労助長罪とは何か?「知らなかった」の主張は?
「不法就労助長罪」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
不法就労助長罪とは、入管法73条の2に規定されていますが、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するものです。
働くことができない外国人と知りながら雇用したり、又は働くことができない外国人と知らなかったとしても身分確認などをきちんと行わないで雇用していた場合には罰せられることになります。
不法就労助長罪の対象となる人は、以下のとおりです。
・事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
・外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
・業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
なお、不法就労を助長した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
不法就労の主な種類は、以下のとおりです。
・不法滞在者や被退去強制者が働くケース
・就労できない在留資格で、資格外活動許可を受けていないにもかかわらず働くケース
・出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース
また、不法就労に該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができませんので注意が必要です。
ただし、過失のないときはこの限りでないとの規定があることから、適切な防御・対策を行っておく必要があります。
不法就労防止の対策例としては、以下のとおりです。たとえば、以下のようなことを下請企業に周知し、定期的に実施・報告書の提出を依頼するなどの対応が一例です。
・定期的な在留カード(原本)の確認
・在留資格が特定活動の場合には、指定書(パスポートに貼付)を合わせて確認
・複数のアルバイトを掛け持ちしていないことの確認(誓約書の提出など)
・就業時間数の確認
・留学生については、学校に在籍しており通学していることを確認(定期的に在籍証明書を提出させるなど)
・報酬の支払いは口座振込としていること
上記のように、「不法就労助長罪」については、故意がなくとも、知らなかったことに過失があれば罪に問われる可能性がありますので、可能な措置を怠らず、証拠を保存することをお勧めします。
不法就労助長罪については,こちらでも詳しく解説をしています。
「不法就労助長罪」のことでお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
退去強制手続きの流れを解説
「退去強制手続」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
退去強制手続とは、外国人が日本国内で法的に許可された在留資格や期間を超えて不法滞在する、または他の法律違反を犯した場合に、その外国人を日本から退去させるための手続きのことをいいます。
1.違反調査
入国警備官は、必要があれば本人の出頭を求めるなどして、不法入国、不法残留等の事実について調査を行います。
2.収容
入国警備官は、不法入国、不法残留等に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、収容令書によりその者を収容することができます。
<仮放免>
収容令書又は退去強制令書により収容されている者又はその者の代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、入国者収容所長又は主任審査官に対し、その者の仮放免を請求することができます。
入国者収容所長又は主任審査官は、その者の情状等を考慮し、一定の保証金(通常の場合、300万円以下)を納付させ、かつ住居等の制限、出頭義務等の条件を付した上で、職権でその者を仮放免することができます。
3.入国審査官の審査
容疑者の身柄は、入国警備官により拘束された時から48時間以内に、入国審査官に引き渡され、不法入国、不法残留等について審査が行われます。
審査の結果、不法入国、不法残留等に該当すると認定した場合は、理由を附した書面により、容疑者にその旨が知らされます。
容疑者が認定に服したときは、退去強制令書が発付されます。
4.口頭審理
入国審査官から通知を受けた容疑者は、その認定に異議がある場合、通知を受けた日から3日以内に、口頭をもって、特別審理官に対し口頭審理の請求をすることができます。
特別審理官は、口頭審理の結果、入国審査官の認定に誤りがないと判断した場合は、容疑者に対し、異議を申し出ることができる旨を通知しなければなりません。
容疑者が判定に服したときは、退去強制令書が発付されます。
5.異議の申出
異議を申し立てることができる旨の通知を受けた容疑者は、特別審理官の判定に異議がある場合は、通知を受けた日から3日以内に書面を主任審査官に提出して、法務大臣に異議を申し出ることができます。
法務大臣又は法務大臣の権限の委任を受けた地方入国管理局長は、異議の申出に理由があるかどうか裁決します。
理由がない旨の裁決があったときは、主任審査官から退去強制令書が発付されます。
6.法務大臣の裁決の特例
法務大臣又は法務大臣の権限の委任を受けた地方入国管理局長は裁決に当たり、異議の申出に理由がないと認める場合でも、特別に在留を許可すべき事情があると認めるときには、その者の在留を特別に許可することができます。
この最後の法務大臣の裁決の特例の際に、特別に在留を許可すべき事情があると認めることを「在留特別許可」といい、本来であれば母国に強制送還されるところ、特別に日本に在留することが認められるようになります。
以上のように、「退去強制手続」では多くの過程を経て、退去強制をするか否かを決定することになりますが、その過程において「仮放免」や「在留特別許可」の申請をすることができます。
しかし、これらの申請にはタイミングがありますので、「退去強制手続」でお困りの方は,弁護士・行政書士などの専門家へご相談ください。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「退去強制」手続きについてもご相談いただけます。HPからは,こちらからもお問い合わせください。お電話の方は03-5989-0843までお電話ください。
出国命令制度とは?再入国時のメリットは?
「出国命令制度」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
1.出国命令制度について
退去強制手続においては,日本からの出国を希望して自ら地方出入国在留管理官署に出頭した入管法違反者についても,摘発された場合と同様に収容をした上で一連の手続を行う必要がありますが,従前から,近日中に出国することが確実と認められるものについては,退去強制令書の発付後に自費出国許可(入管法第52条第4項)及び仮放免許可(入管法第54条第2項)を行った上で,事実上収容をしないまま日本から出国させる措置が実施されていました。
退去強制手続きについてはこちらでも解説しています。
また,不法滞在者の大幅な削減のためには,その自主的な出頭を促進する必要もあることから,平成16年の入管法改正において,入管法違反者のうち,一定の要件を満たす不法残留者について,収容をしないまま簡易な手続により出国させる出国命令制度が創設されました(同年12月2日施行)。
2.出国命令対象者(入管法第24条の3)
出国命令対象者は,不法残留者(入管法第24条第2号の4,第4号ロ又は第6号から第7号までのいずれかに該当する外国人)であることが前提です。
それに加えて以下の全ての要件を充足する必要があります。
① 出国の意思をもって自ら出入国在留管理官署に出頭したこと
② 不法残留以外の退去強制事由に該当しないこと
③ 窃盗罪等の一定の罪により懲役又は禁錮に処せられたものでないこと
④ 過去に本邦から退去強制されたこと又は出国命令を受けて出国したことがないこと
⑤ 速やかに本邦から出国することが確実と見込まれること
3.出国命令に係る審査(入管法第55条の2)
入国警備官は,容疑者が出国命令対象者に該当すると認めるに足りる相当の理由があるときは,入管法第39条の規定にかかわらず,容疑者を収容しないまま,当該容疑者に係る違反事件を入国審査官に引き継ぐことになります。
また,違反事件の引継ぎを受けた入国審査官は,当該容疑者が出国命令対象者に該当するかどうかを速やかに審査することになります。
そして,入国審査官は,上記の審査の結果,当該容疑者が出国命令対象者に該当すると認定したときは,速やかに主任審査官にその旨を知らせることになります。
なお,入国審査官は,当該容疑者が出国命令対象者には該当せず,退去強制対象者に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは,その旨を入国警備官に通知するとともに,当該違反事件を入国警備官に差し戻すものとされており,差戻し後は,退去強制手続が執られることとなります。
4.出国命令(入管法第55条の3)
入国審査官から容疑者が出国命令対象者に該当する旨の通知を受けた主任審査官は,速やかに当該通知に係る容疑者に対し,15日を超えない範囲内で出国期限を定め,所定の出国命令書を交付して,日本からの出国を命じることになります。
また,主任審査官は,出国命令をする場合には,当該容疑者に対し,住居及び行動範囲の制限その他必要と認める条件を付することができます。
5.出国命令の取消し(入管法第55条の6)
主任審査官は,出国命令を受けた者が当該命令に付された条件に違反したとき(例えば,就労禁止の条件に違反して就労した場合等)は,当該出国命令を取り消すことができます。
また,出国命令を取り消された者は退去強制の対象となるほか,出国命令を取り消された者で本邦に残留するものは刑事罰の対象となります。
6.出国期限が経過した場合の措置
出国命令に係る出国期限を経過して日本に残留する者は退去強制の対象となるほか,刑事罰の対象となります。
7.出国命令を受けて出国した者の上陸拒否期間
出国命令を受けて日本から出国した者は,原則として出国した日から1年間は日本に入国できません。
「特別高度人材制度」とは?「高度専門職」ビザとの違いは?
「特別高度人材制度(J-Skip)」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入され、これまでの高度人材ポイント制とは別途、学歴又は職歴と、年収が一定の水準以上であれば「高度専門職」の在留資格を付与し、「特別高度人材」として現行よりも拡充した優遇措置を認めることとなりました。
出入国管理庁HP
新設された制度と,これまでの「高度専門職」の在留資格について比較しながら解説します。
高度専門職の在留資格
在留資格「高度専門職」の対象には、外国人本人が日本にて行う活動に応じて、以下の3つの類型があります。
(1)「高度学術研究活動」 : 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う研究,研究の指導又は教育をする活動(例 : 大学の教授や研究者等)
(2)「高度専門・技術活動」 : 本邦の公私の機関との契約に基づいて行う自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動(例 : 企業で新製品の開発等を行う者、国際弁護士等)
(3)「高度経営・管理活動」 : 本邦の公私の機関において事業の経営を行い又は管理に従事する活動(例 : グローバルな事業展開を行う企業等の経営者等)
高度専門職ビザの詳しい解説はこちら
「特別高度人材」に該当する人
「特別高度人材」の要件は、上記の(1)~(3)の活動類型ごとに以下のとおりです。
((1)・(2)の活動類型の方)
以下のいずれかを満たす方であること。
・修士号以上取得かつ年収2,000万円以上の方
・従事しようとする業務等に係る実務経験10年以上かつ年収2,000万円以上の方
((3)の活動類型の方)
・事業の経営又は管理に係る実務経験5年以上かつ、年収4,000万円以上の方
優遇措置の内容
特別高度人材の場合は高度人材ポイント制による優遇措置よりも拡充された、以下の優遇措置を受けられます。
なお、特別高度人材として認められた場合は特別高度人材証明書が交付され、在留カード裏面欄外の余白に「特別高度人材」と記載されます。
① 在留資格「高度専門職1号」の場合
1. 複合的な在留活動の許容
2. 在留期間「5年」の付与
3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和
4. 配偶者の就労
5. 一定の条件の下での親の帯同
6. 一定の条件の下での家事使用人の雇用
7. 大規模空港等に設置されているプライオリティレーンの使用
8. 入国・在留手続の優先処理
② 在留資格「高度専門職2号」の場合
※「高度専門職2号」は「高度専門職1号」(特別高度人材)で1年以上活動を行っていた方が移行できる在留資格です。
1. 「高度専門職1号」の活動と併せてほぼ全ての就労資格の活動を行うことができる
2. 在留期間が無期限となる
3. 上記3から7までの優遇措置が受けられる
また、永住許可までに要する在留期間は「1年」となります。
申請方法,手続について
①特別高度人材として5年在留し、続けて在留を希望する方は、在留期間更新申請を行ってください。
②高度人材ポイント制によって高度専門職1号の在留資格で在留している方が、特別高度人材としての優遇措置を希望する場合は以下の申請を行ってください。
1 高度専門職1号の在留期間の満了までの期間がおおむね3か月以内の場合
・在留期間更新許可申請において、特別高度人材に該当する旨の申し出を行ってください。
・申請に必要な書類等については添付を御確認ください。
2 高度専門職1号の在留期間の満了までの期間が上記以上の場合 ・就労資格証明書交付申請を行っていただき、当該申請に際して特別高度人材であることの認定をします。(手続についてはこちらを御確認ください。)
3 上記1・2にかかわらず、配偶者や家事使用人が特別高度人材の優遇措置(特定活動告示第2号の4及び第33号の2)に係る在留諸申請を行った場合に、同申請において本体者が特別高度人材であることの認定をします。
以上のように、「特別高度人材」は様々な優遇措置がなされていますので、「特別高度人材」についてご質問のある方はお気軽にお問い合わせください。
外国人技能実習制度に代わる新制度について
「外国人技能実習制度に代わる新制度」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
現在、有識者会議で検討される方向性としては、技能実習制度を廃止し、人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討するべきであるとしています。
直近の報道においても,技能実習制度について関連する法案が国会に提出される予定です。
人材確保という目的は特定技能に即しており、人材育成という目的は技能実習制度に即しているので、技能実習制度に変わる新制度は、特定技能と技能実習制度を合体させたような制度というイメージです。
技能実習制度と廃止後の新制度をわかりやすく、以下のように比較しました。
なお,現在の技能実習制度についてはこちらでも解説をしています。
① 制度の目的
技能実習制度については人材育成を通じた国際貢献であるのに対して、新制度では人材育成プラスα人材確保をも目的とします。
② 対応している職種
技能実習制度については特定技能と不一致(特定技能より幅広い)であるのに対して、新制度では特定技能の12職種に合わせることを想定されています。
③ 受入れる外国人の人数設定
技能実習制度については人数設定のプロセスが不透明であるのに対して、新制度では人数設定のプロセスを透明化する(〇年間で○○人の受入れといった制度上の受入れ人数設定のこと)ことを想定されています。
④ 外国人の転職の可否
技能実習制度については原則として外国人は転職できないのに対して、新制度では技能実習制度に比べて転職しやすくするようですが、詳細は未定(日本人のように完全に自由な転職はできない)となっています。
⑤ 管理監督や外国人への支援
技能実習制度については不十分な実情であるのに対して、新制度では監理団体や登録支援機関の要件を厳格化し、技能実習制度で不十分だった点を改善することを想定されています。
⑥ 日本語能力の向上施策
技能実習制度については、特に外国人の日本語能力の水準を設定していないため入国直後は日本語を話せない外国人も多いのに対して、新制度では企業での就労開始前に、一定の日本語能力を求めることを想定されています。また、就労開始後は日本語能力が上がるような仕組みを制度として設けられる予定です。
技能実習生制度の廃止は現時点では、未だ確定ではありませんが、2023年秋頃に有識者会議にて最終報告を政府に提出し、早ければ2024年の通常国会に関連法案が提出される可能性があります。
このように、技能実習制度については今後大きな変更があることが予想されており、現在技能実習生を受け入れている企業にとっても関心の高いトピックであるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所としても、今後の動向に注目したいと思います。
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