「最近永住許可申請が難しくなったのではないか?」という声を耳にすることがあります。
永住許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
直近では2024年6月にも永住許可に関するガイドラインが改訂され、納税、公的年金及び公的保険料の納付の義務を適正に履行されていることが永住審査の要件として追加されました。
2024年6月改訂版 永住許可ガイドライン 出入国在留管理庁HP
その結果、永住許可申請に必要な書類のハードルが改訂前よりも高くなりました。
最近永住許可を取るのが難しくなったという声をよく聞きます。
弊所においても,
「昔(今から20年以上前)の永住許可は簡単だった。2年間の社会保険納入歴の書類や5年間の納税・課税証明書の書類提出は求められておらず、永住許可を申請すれば誰でも取得できた」
という話を聞いたことがあります。
では近年永住許可は本当に取得するのが難しくなってきたのか、今から10年前の2014年と昨年(2023年)を比較して検証してみたいと思います。
今から10年前の2014年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。
審査既決済件数 50,788件 うち許可数 35,800件
許可率 東京入管管轄 68,6% 名古屋入管管轄 68,5% 大阪入管管轄 73% 全体の許可率は70%
2023年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。
審査既決件済件数 50,986件、うち永住許可 33,470件
許可率 東京入管管轄 71% 名古屋入管管轄 59% 大阪入管管轄 64% 全体の許可率は71%
上記の通り10年前の2014年と最近(2023年)の永住申請の年間の既決済件数と入管ごとの許可率、全体の許可率はさほど変わっていません。
ではなぜ永住許可を取得するのが難しくなったというイメージが持たれているかというと、永住許可申請に求められる必要書類のレベルが高くなっている事が原因と考えられます。
2019年に永住許可申請の見直しがあり、住民税の課税証明書・納税証明書の提出期間が3年から5年に変更され、新たに年金・健康保険の記録が2年分が追加となりました。
こうしたことから永住許可申請のハードルが上がり、最近永住許可申請が難しくなったというイメージを持たれているのだと思います。
ではなぜ永住許可申請のハードルが10年前と比較して明らかに上昇しているにもかかわらず、ここ10年の永住許可申請の申請数と許可率にあまり変化がないのかということですが、近年永住審査のハードルが上昇しているとが永住申請者側に浸透しており、申請の段階で許可の通る見込みのない申請は自主的に控えていること、現在の永住許可申請の審査基準に申請側が合わせてきていることが考えられます。
審査の基準
永住申請の審査のポイント以下の3つです。
1.素行が善良であること
2.独立の生計を営むに足りる能力を有すること
3.国益要件
素行善良要件とは以下の(ア)(イ)(ウ)のいずれにも該当しない者を指します。
(ア)日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられた事がある者。
ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを受けた場合で取消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、
その後更に5年を経過したときは、これを該当しないものとして扱う。
(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者。
(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等,素行善良と認められない特段の事情がある者。
上記の(ア)(イ)(ウ)以外に該当しない人が素行には特に問題がないと判断されるということになります。
独立生計要件とは、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の資産等からみて将来において安定した生活を見込まれることをいいます。
生活保護を受給しておらず、現在及び将来について自立して生活することが可能と見込まれる必要があります。安定した生活を見込まれる際の収入はどれくらいかということですが、申請者一人300万+扶養者一人追加ごとに80万が相場と言われています。
実務上の感覚でもおよそこのくらいの収入は必要と思われます。
国益要件とは、長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していることです。
具体的な要件は以下の①、②となります。
①原則として引き続き10年以上日本に在留していること。ただし、この10年以上の期間のうち就労資格(「技能実習」及び「特定技能1号」を除く)又は居住資格(定住者等)をもってひき続き5年以上日本に在留している事が必要です。
②公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理管理及び難民認定法に定める届出義務)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していることが必要です。
②に関しては以下の書類の提出が必須となっています。
(出入国在留管理局2019年5月31日改訂)
住民税の課税証明書・納税証明書 5年分
国民年金及び厚生年金・健康保険及び国民健康保険の記録 2年分
国税の納税証明書 1年分
以下永住許可申請に当たり注意すべき事項を挙げます。
*国益要件に関して、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者については、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している必要があります。
実子又は特別養子については、引き続き1年以上です。
日本人、永住者又は特別永住者の実子又は特別養子については直近1年です。
日本人、永住者又は特別永住者及び養子については直近3年です。
*税及び保険料納付に関して、納めるべき税金は全て納めてから申請すること。社会保険に関しては、必ず申請直近2年分を全て納めてから申請すること。
申請してから未納が発覚して慌てて追納しても、申請要件として定める期間に納付したとは認められず、追納した日を基準日として新たな納付が必要となります。
*特に社会保険については1か月でも納入漏れがあればアウトなので、申請前の直近2年間は毎月期限通りに社会保険を納めて、納入漏れがないように注意すること。
以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が永住許可申請について解説しました。
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