送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する政府方針について

令和5年8月に出入国在留管理庁が発出した「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」という方針を、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.送還停止効にある難民申請3回目以降の人の強制送還を可能にする入管法改正が、2023年6月9日に国会で成立しました。
政府は改正に伴い強制送還の対象となっている日本生まれの小中高生と親を対象に今回限りの特例として、子と親を家族一体として在留特別許可をして在留資格を認める方針
「送還忌避者のうち本邦で出生した子どもの在留特別許可に関する対応方針について」を表明しました。
対象となるのは、改正法施行(令和6年6月10日)までに、日本で出生して小学校、中学校又は高校で教育を受けており、引き続き日本で生活していくことを強く希望している子どもとその家族です。ただし、親に「見逃しがたい消極的事情」がある場合を除きます。
見逃しがたい消極的事情として以下の5つの事項があげられています。

①不法入国・不法上陸②偽造在留カード行使や偽装結婚等の出入国管理行政の根幹機関わる違反、③薬物使用や売春等の反社会性の高い違反、④懲役1年以上の実刑⑤複数回の前科刑を有している場合、の5つです。
但し見逃しがたい事情があっても、個別の事案毎に諸般の事情を総合考慮して在留特別許可を認める場合もあります。

2.在留特別許可を認める子どもと認めない子どもについて

令和4年12月末時点で、在留資格のない送還忌避者は4,233人でした。
そのうち「日本で生まれ育った」在留資格のない子どもは201人で、自らの意思で帰国した者を除き、
少なくともそのうちの7割、就学年齢に達している子どもの8割程度に在留特別許可をすることが見込まれています。
以下在留特別許可が認められる子と認められない子の内訳です。

         強制送還を拒否している外国人4233人
                ↓
         このうち18歳未満の子どもは295人
                ↓          
   日本以外で生まれた子(救済対象外)94人
              +
   子が日本で生まれたが、親が不法入国・不法上陸、
    懲役1年以上の実刑等(救済対象外)約60人
                ↓
          295-(94+60)=140

   約140人の子供が救済対象となる見込みです。 子どもの在留資格は「留学」となります。

3.在留を認める子どもと認めない子どもの線引きについて

①子どもが日本で生まれたか否か
②親が受けた刑事処分や行政処分の軽重
子どもの在留特別許可の認定基準について、①と②の判断基準が示されています。
①に対しては子どもが日本で生まれたか否かという本来子どもにとってなんら関係のない事情で線引きされています。

国籍について出生地主義(血筋によらず生まれた場所が自国内であれば国籍を認める)が取られている国々がありますが、日本は出生地主義ではなく血統主義(両親のどちらかが日本国籍であれば日本国籍を認める)を採用しており、なぜ子どもが生まれた国が日本であれば在留特別許可を認め、そうでない場合は最初から在留特別許可を認めないのか、その判断基準が漠然不明確な部分があります。

4.親の刑事処分や行政処分の軽重

仮に日本生まれの子どもであっても親の犯罪歴や行政処分歴により在留特別許可が認められるか否かが決まるという点についてですが、親が品行方正な不法滞在者であれば子の在留資格を認め、そうでない場合は子どもの在留資格を認めないということで、子どもの在留資格は親の在留状況次第、まさに親ガチャで決定されるということになります。

子の在留特別許可を認めるか否かは、子にとって一生を左右する重大事である以上、①子が日本で生まれたか否か、②親の犯罪歴、行政処分違反歴の軽重といった形式的判断によるのではなく、子ども一人一人の個別具体的・実質的判断によるべきと思います。

また今回の在留特別許可が入管法の大改正による一回限りの特例であるなら、在留特別許可を認める子どもの対象は出来るだけ広くすべきでしょう。
参考:東京新聞WEB版 2023年12月18日付

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留特別許可についても取り扱っています。
仮放免や在留特別許可についてお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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