令和6年入管法改正について

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が令和6年入管法改正について解説します。

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昨年の6月に改正された出入国管理及び難民認定法が今年の6月10日から施行されます。
昨年改正された入管法の改正の柱は大きく分けて3つありました。
その3つの柱とは、①保護すべきものを確実の保護②送還忌避問題の解決③収容をめぐる諸問題の解決の3つです。
この3つの改正事項の中で最も大きく取り上げられたのが②送還忌避問題の解決です。

送還忌避問題の解決における主要なポイントは、これまで難民申請において一律に認められていた「送還停止効」に例外を認めるという規定です。
これまでは例え対象者が退去強制事由に該当していたとしても、難民申請をしている間は一律に退去強制手続きが停止されました。
従って例え長期の実刑判決を受け服役した場合等で退去強制事由に該当し本来なら退去強制処分がなされる場合であったとしても、送還停止効により本国に送り返されることはありませんでした。今回の改正法ではこの「送還停止効」に例外を設け、①3回目以降の難民申請者②3年以上の実刑に処せられた者③テロリスト等、には難民申請手続き中であっても送還させることができることになりました。

ここでいう送還とは退去強制手続きにより本国又は第三国に送り返すことを指します。
送還停止の例外は入管法第61条の2の9第4項に規定されており、入管法24条が定める退去強制手続事由と密接に関連しています。
この条文では「難民の認定又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した者を除く。」との規定があり、既に退去強制事由に該当する者が3回目の難民申請をした場合に、難民の認定を行うべき相当の資料を提出した場合に限って退去強制手続きを行わない(送還しない)という規定です。
既に退去強制事由に該当するこれまで2回以上難民申請をして不認定となった者は、3回目で同じような内容で申請をしても、難民と認めるに足りる相当の理由がない限り難民申請を認めず退去強制処分とするというものです。

ここで注意すべきなのは、既に退去強制事由に該当する者が3回目の難民申請をしても難民として認めるべき相当の理由がなければ退去強制手続きが停止しない(送還停止効を認めない)ということです。
元々退去強制事由に該当していない人であれば、3回目の難民申請を行いそれが認められなかった場合も、強制送還されるわけではありません。
強制送還されるには入管法24条に規定された退去強制事由に該当していることが必要であり、退去強制事由に該当していない難民申請者にこの規定は適用されません。
マスコミの報道が大変わかりにくいこともありますが、難民申請3回目以降が強制送還対象というのは、元々強制送還の対象者が難民申請をした時に申請出来るのは2回までであり、3回目以降は送還停止効(退去強制処分が一時停止される状態)が認められず強制送還になる、という規定なのです。

入管がこの規定を設けた狙いは、退去強制処分の対象者が退去強制処分を受けることを避けるため、本来難民申請に該当しないにもかかわらず、自分は難民であると主張して退去強制処分を逃れることを防ぐことが目的があるようです。
これまでは、「難民申請を繰り返す=日本での在留状態の時間稼ぎ」と考えられていたのです。

送還逃れの為の長期の服役者にもこの規定は大きな影響を及ぼすことは考えられますが、それよりもこの規定で影響を受けるのは、難民申請をしている仮放免者だといえます。
仮放免者は,退去強制事由に該当しつつも何らかの事情により入管施設に収容されない人たちですが、難民申請者の中には退去強制事由に該当するが、仮放免処分を受け入管に収容されずに生活している外国人が少なからずいます。
このような人たちは3回目からの難民申請には送還停止効が認められなくなることから、以降の難民申請で不認定と判断されると退去強制処分となり、本国に強制送還される事が現実味を帯びてきます。

この規定が施行されれば、理屈上は仮放免中の難民申請者はいずれ日本からほぼ消滅することになります。
それを考えると法改正により仮放免中の難民申請者に与える影響は非常に大きいといえます。

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