在留期間の更新手続きについて

「在留期間の更新について」弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

在留期間の更新とは文字通り、「現に有する在留資格を変更することなく在留期間を更新すること」をいいます(出典:入管法大全第2版P285)。

在留資格には在留期間が定められており、在留期間が満了したら帰国しなければなりません。在留期間満了後も引き続き同一の在留資格で日本に滞在したい場合、いったん帰国して再度、在留資格認定証明書を取得して再入国することは当該外国人にとって大変な負担になってしまいます。
そこで、法務大臣が我が国に在留する外国人の在留を引き続き認めることが適当であると判断した場合に、在留期間の更新を認め在留の継続を引き続き可能とすることができます。
この手続きが、在留期間の更新手続きです。

更新申請のために必要な書類についてはこちらの入管HP上でも公開されています。

在留更新の規定は入管法21条1項から4項に定められています。
この条文にはどの様なことが書かれているか見てみましょう。

条文解説

入管法第21条
第1項 本邦に入国する外国人は、現に有する在留資格を変更することなく、在留期間の更新を受けることができる。
趣旨:日本に在留する外国人は、現在取得している在留資格を変更することなく在留資格を更新できます。と定めています。

第2項 前項の規定により在留期間の更新を受けようとする外国人は、法務省令で定める手続きにより、法務大臣に対し在留期間の更新を申請しなけれなならない。
趣旨:在留更新を受けようとする外国人は、管轄の入管で在留期間の更新申請手続きを行わなければなりません。なお在留期間の更新を申請しようとするが外国人は、在留期間の満了日までに在留更新申請書を管轄の入管に提出する必要があります(入管法施行規則21条1項)。

第3項 前項の規定による申請があった場合には、法務大臣は、当該外国人が提出した文書により在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がある場合に限り、これを許可することができる。
趣旨:在留更新の審査は申請した外国人が提出した資料を元に審査を行います。
法務大臣が提出した申請書を元に在留更新を認めるに足りる「相当の理由」がある場合に更新を認めます。

どのような場合に更新が認められるのか

提出された資料に基づき更新申請の審査をするのは、実際には各地方出入国在留管理局の審査官です。
「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がある場合に限り」とありますが、在留許可を認めるかどうかは法務大臣の自由裁量とされ、在留の更新を希望する外国人が在留更新申請を在留期限内に行った事のみをもって、申請が必ず認められることを保障するものではありません。
在留期間の更新を認めるか否かの判断に当たっては、申請者の行おうとする活動、在留の状況、在留の必要性等を総合的に勘案して判断され、この判断に当たっては、在留更新申請の際のガイドラインとして、下記1~8までの事項が出入国在留管理局によって示されています。

1.在留更新により行おうとする活動が、申請に係わる入管法別表に掲げる在留資格に該当すること

在留更新で行おうとする活動が、入管法別表第一に掲げる在留資格に ついては同表の下欄に掲げる活動、入管法別表第二に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動であることが必要となります。
更新しようとする活動は上記の表に記載されているいずれかの在留資格に該当するものでなくてはなりません。

2.法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること

法務省令で定める上陸許可基準は、外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準 ですが、入管法別表第1の2の表又は4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動 を行おうとする者については、在留資格変更及び在留期間更新に当たっても原則 として上陸許可基準に適合していることが求められます。

3.現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと

申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素(在留更新を認めない方向での判断)として評価されます。

4. 素行が不良でないこと

素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。

5. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります )が求められますが、仮に公共の負担となっている場合であっても在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断することとなります。

6. 雇用・労働条件が適正であること

我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。

7.納税義務を履行していること

納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税 義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお刑を受けていなくても高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も悪質なものについては同様に取り扱います。

8. 入管法に定める届出等の義務を履行していること

入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第 19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。

上記1~8までの要件を全て充足しなければ在留更新申請は認められないのか、仮に一つでも要件を充足できなければ在留更新は認められないのか気になるところです。

実際にはどのくらい認められるのか

実際在留更新申請の許可率はどれくらいの割合で許可されてのか、2022年度で裁決のあった入管全体の許可率と各地方出入国在留管理局での許可率の割合をみると、入管全体では在留更新の許可率は98%、各地方出入国在留管理局ごとでは、札幌が99%、仙台が98%、東京が98%、名古屋が99%、大阪が99%、広島が99%、高松が99%、福岡が%とどの入管も98%以上の高い割合で在留更新が許可されています。

認められない場合とは?

では実際に在留更新が認められなかった1~2%の申請者には更新が認められなかった事情としてどのような消極的事情が考えられるかですが、在留更新申請を行い在留更新申請が認められなかった場合について、統計が出ているわけではありませんので実務上の感覚とありますが、およそガイドラインの4「素行善良要件」に問題があり、在留更新が認められないケースが多いように感じます。

例えば、1年以上の有罪判決が確定した場合や離婚や別居、失踪等で本来の在留資格に係わる活動を長期間行っていない場合等に在留更新が認められないケースがあるようです。
また、罰金刑でも素行が不良と判断される場合もありうるので要注意です。

では、在留期間中に何らかの犯罪を犯し有罪判決を受けた、あるいは罰金刑を受け確定した場合はどうすればいいのか?ということですが、申請者がやるべきことはまず第一に在留更新が認められるよう最大の努力をすべきということです。

在留期間の間に犯罪を犯し有罪判決が確定した場合は、反省文、理由書、嘆願書等を作成・提出して通常の在留更新審査で在留許可を認めてもらえるよう最善を尽くすということです。
それでも在留更新が認められなければ、在留特別許可等の方法を取ることを考えるべきです。仮に執行猶予がついたとしても1年以上の有罪判決が確定した場合、現行の入管の運用では更新不許可となり、自ら在留期限内に帰国した場合でも無期限上陸拒否(無期限で日本に入国できないこと)の処分が出されるので、上陸拒否の特例に該当しない限り二度と日本に再入国できなくなりますので注意が必要です。

在留期間中に罰金を含む刑事事件を起こしたときは、自分や周囲の意見だけで判断せずに、まずは入管業務を専門に行う弁護士・行政書士に相談することも重要だと思います。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、在留期間中に事件をおこした方の在留更新申請も取り扱っておりますので、在留期間中に何らかの問題を起こして在留更新申請が通るかどうか不安な方は、お一人で悩まず是非ご相談ください。

お困りごとがある方はこちらからご相談ください。

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