在留特別許可について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
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1.在留特別許可とは?
退去強制の対象となった外国人の異議の申出に理由がないときでも、法務大臣の裁決により在留を特別に認める制度です。
在留特別許可については、「人道的な見地から特別許可を主張することはできても、在留特別許可を請求する具体的請求権はない」とされています(参考:入管法大全474頁)。
在留特別許可については出入国管理及び難民認定法(以下法)第50条に規定されています。
法第五十条 法務大臣は、外国人が退去強制対象者に該当する場合であつても、次の各号のいずれかに該当するときは、当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。ただし、当該外国人が無期若しくは一年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。)又は第二十四条第三号の二、第三号の三若しくは第四号ハ若しくはオからヨまでのいずれかに該当する者である場合は、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。
一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2前項の規定による許可(以下この条において「在留特別許可」という。)の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。
3在留特別許可の申請は、当該外国人に対して退去強制令書が発付された後は、することができない。
4在留特別許可は、当該外国人が第四十七条第三項の認定若しくは第四十八条第八項の判定に服し、又は法務大臣が前条第三項の規定により異議の申出が理由がないと裁決した後でなければすることができない。
5法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断に当たつては、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなつた経緯、本邦に在留している期間、
その間の法的地位、退去強制の理由となつた事実及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものとする。
6法務大臣は、在留特別許可をする場合には、法務省令で定めるところにより、在留資格及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。
7法務大臣が在留特別許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、出入国在留管理庁長官は、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
8法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断をしたときは、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
9主任審査官は、法務大臣から在留特別許可をする旨の通知を受けたときは、その者が被監理者であるときを除き、直ちに当該外国人を放免しなければならない。
10 法務大臣は、在留特別許可の申請があつた場合において在留特別許可をしない処分をするときは、法務省令で定める手続により、速やかに理由を付した書面をもつて、当該申請をした外国人にその旨を知らせなければならない。
在留特別許可が認められる「特別な事情」については、以下一から五まで規定があります。
一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2.在留特別許可が認められる場合
在留特別許可申請の典型例として、五「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」を理由とする日本人配偶者と結婚したことにより「日本人の配偶者等」の在留特別許可を申請する場合があげられます。
在留特別許可における「日本人の配偶者等」の該当性を判断するのに際して、①永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営んできたか(婚姻関係が客観的に安定かつ成熟していると判断される場合)②退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合でない。
ことの2点が在留特別許可申請の審査において重要なポイントとなります。
参考:法務省HP
3.「駆け込み婚」について
オーバーステイ等で逮捕された、あるいは入管収容施設に収容されてから日本人や永住者等と結婚することを「駆け込み婚」といいます。
「駆け込み婚」での日本人の配偶者の該当性判断については、上記①、②の観点から婚姻生活の実質があるかどうかが判断されます。
「駆け込み婚」に関する裁判例としては次のものがあります。
①婚姻の届出は裁決の3週間前であり、同居もしていないから、その婚姻関係は客観的かつ安定して成熟しているといえない(東京地判平成22年4月28日 平成20(行ウ)484,485)。
②婚姻が届けられた日は、裁決がされた日より約10日前であったにすぎず、このような状況を考慮すると、たとえ両者の間に真摯な愛情が保たれているとしても、その家族的結合の事情は、在留特別許可の拒否の判断において、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度に至っていることはできない。(東京地判平成20年6月27日 平19(行)424)
③両者の間に同居事実はなく、週1,2回程度Aが原告宅に泊まる程度で、しかも婚姻したのは、本件裁決の約1か月前にすぎないことからすると、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度にいたっているとはいえない(東京地判平成20年1月18日平19(行ウ)57」等があります。
参考:入管法大全486~487頁
上記の判例から明らかなように、警察に逮捕されたあるいは入管施設に収容されたということで「日本人の配偶者」の身分を得るために結婚したとしても、単に「婚姻の事実」だけで在留資格が得られるわけではありません。
婚姻生活において「永続的な精神的及び肉体的結合を目的とする真摯な共同生活が存在」することが必要となります。
4.在留特別許可申請に際して注意すべき点
在留特別許可の申請は退去強制令書が発付された後は申請することが出来ません(法50条第3項)。
退去強制令書が発付された後に在留の許可を特別にお願いする方法として「再審情願」と呼ばれる在留特別許可による申請がありますが、「再審情願」は法により規定された手続きではなく、在留許可の判断における入管による裁量も法50条第1項で規定された在留特別許可よりも広いとされており、在留特別許可申請よりも入国管理局の審査はきびしくなります。
5.在留特別許可申請の受付期間について
①又は②のいずれの時から、退去強制を発付される時までの期間です。
① 就労令書により収容されたとき(仮放免許可を受けている場合を含む)
② 監理措置に付されたとき
以上、在留特別許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は在留特別許可申請を扱っています。
なんらかの理由により在留資格がなくなってしまったが、どうしても日本に在留したい方は是非,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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