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「トランプ大統領就任による出生地主義の制限に関する大統領令発付」について

2025-01-23

「All persons born or naturalized in the United States,and subject to the jurisdiction thereof,are citizens of the United States and of the State wherein they reside.」

合衆国憲法修正第14条は冒頭で「合衆国内で生まれ、または合衆国に帰化し、かつ、合衆国の管轄に服する者は、合衆国の市民であり、かつ、その居住する州の市民である」と記し、アメリカ合衆国が出生地主義の原則を定めていることを明らかにしています。

出生地主義とは

出生地主義とは、「父母の国籍の如何を問わず、子が出生によって出生地国の国籍を取得する主義であり、アメリカ、カナダ、オーストラリア及びブラジル等の南アメリカ大陸の多くの諸国で採られて」います。
アメリカ合衆国は国籍の取得にあたり出生地主義を採用する代表的な国の一つです。出生地主義と対になる主義として血統主義があります。
血統主義とは「子がその出生によって出生地の如何を問わず、親の血統に従って親と同じ国籍を取得する主義であり、自国民との血縁関係に基づいて自国の国籍を付与する主義で、フランス、ドイツ、イタリアなどヨーロッパ大陸諸国をはじめ、韓国、中国などでも原則として採られて」います。日本では子の出生時に父又は母のどちらかが日本国籍であれば子に日本国籍を認める父母両系血統主義を採用しています。
*逐条詳解 国籍法P106

新大統領令の内容は

トランプ大統領は大統領就任初日の2025年1月20日、合衆国憲法修正第14条で定められた出生地主義の適用をこれまでより大きく制限する大統領令に署名しました。

日本経済新聞 トランプ氏、「出生地主義」制度見直しの大統領令に署名

大統領令では出生地主義の制限にあたり、合衆国憲法修正第14条の冒頭にある「合衆国の管轄に服する者」という文言を重要視しています。

大統領令によると、元々合衆国憲法修正第14条はアメリカ合衆国国内で生まれた全ての人に生来的に市民権を与えるものではなく、アメリカ合衆国の「管轄に服さない者」は出生地主義による市民権の付与の対象から除外しているという理解に沿って、アメリカ国籍法コード8 U.S.C1401では「アメリカ合衆国で生まれその管轄に服する者」が出生時からアメリカ合衆国の国民及び市民であると規定しています。

今回の大統領令ではアメリカ合衆国で生まれながらもアメリカ合衆国の市民権が認められない者の範囲として、以下(1)、(2)をあげています。

(1)子の出生時に子の母親がアメリカ合衆国に不法滞在しており、子の父親が子の出生時米国市民又は永住者ではない場合。
(2)子の母親が子の出生時に適法な滞在ではあるが滞在が一時的なものである場合、例えばビザの免除を受けアメリカ合衆国の支援を受けての訪問、就労ビザ、留学ビザ、観光ビザ等の場合や子の父親が子の出生時にアメリカ合衆国市民や永住者ではない場合。

(1)及び(2)に該当する場合は、合衆国憲法修正第14条で定められた「アメリカ合衆国の管轄に服する者」に該当しないとして、子がアメリカ合衆国で生まれても自動的にアメリカ国籍を付与することを認めないとするものです。
この措置はアメリカ合衆国が採る出生地主義を否定するものではありませんが、従来よりも出生地主義による国籍付与の大幅な制限となるものです。
この大統領令は、大統領令の発令日より30日経過後からアメリカ合衆国国内で子が出生した場合に適用されます。大統領令発付即日から、この大統領令は合衆国憲法修正第14条に反し違憲であると提訴がありました。
この大統領令が出生地主義について定めた合衆国憲法修正第14条に反するか否かについては現段階ではまだはっきりしていません。

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不法就労者を雇用しないための対策

2025-01-21

「令和6年1月1日現在、日本国内に約7万9000人の不法残留者がおり、その多くが不法就労をしていると言われています」(警視庁HP)。
「不法残留者」の内訳は、短期滞在からの不法残留が49,801人、技能実習からの不法残留が11,210人、特定活動からの不法残留が8,189人、留学からの不法残留が2,288人、日本人の配偶者からの不残残留が1,880人,その他が5,745人(これらの在留資格に該当しないもの)で合計79,113人となっています。

1.不法残留者と不法就労ついて

不法残留者のうち短期滞在と技能実習からの不法残留が全体の約8割を占めており、警視庁HPにあるようにその多くが国内で不法就労をしていると思われます。
短期滞在は家族訪問・親族訪問、スポーツ、観光等の目的で最大90日間日本に滞在することが認められた在留資格です。
他の在留資格に比べて審査手続きが簡略化されており、比較的短期間で審査結果が出るところに特徴があります。短期滞在の在留資格では就労が認めらておらず、短期滞在からの不法就労者は、観光や家族訪問ではなく、初めから日本で働く目的で比較的許可が認められやすい短期滞在の在留資格を利用して入国していると思われます。

技能実習からの不法就労は①技能実習生と受け入れ先の事業所との間で何らかのトラブルがあり、技能実習生が受け入れ先から失踪した後に別の事業所で働き始めた,②受け入れ先の低賃金等、経済的な理由により、ブローカー等のあっせんを通して正規の手続きを経ずに転職したケースの2種類が考えられます。
他に③技能実習先を失踪した後、窃盗等の犯罪行為で生計を立てるというケースも考えられますが、窃盗等の犯罪行為はそもそも「就労」に入らないのでここでは除きます。

2.「不法就労助長罪」とは?

不法就労者を事業所で雇用する場合、

①不法就労を希望する者が偽造在留カードや偽造パスポートを雇用主に提示して、自分には仕事ができる在留資格があると信じ込ませ不法就労を行うというケース
②正規の在留資格はあるが、所持する在留資格では仕事をすることが認められていない者を雇用するケース
③不法就労者を雇用する事業所の方で就労できる在留資格がないことを把握しながらあえて雇用するケース
の3種類が考えられます。

①、②のケースの場合、不法就労を狙う外国人と不法就労をあっせんするブローカーがセットになって不法就労者であることを知らない事業者側に就労を持ち掛けるケースがあります。
③の場合は不法就労者を雇用する事業者側に「不法就労助長罪」が成立します。
①、②の場合、雇用する側に在留カードの確認をしていない等の過失がある場合は「不法就労助長罪」が成立します。
不法就労助長罪は「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はその併科」となっています。

参考記事 不法就労助長罪により逮捕された事例

3.偽造在留カード対策について

不法就労対策として「不法就労防止のために外国人を雇用する際には必ず在留カードを確認してください」(出入国在留管理庁HP)とあり、HP上で在留カードの確認箇所としてカード上でのチェツクポイントがいくつか示されています。
チェックポイントを確認すれば当該在留カードが本物かどうか見分けることが出来るということです。
しかしながら近年の偽造在留カードは極めて精巧に作られており、一般の人が在留カードの外見を見ただけでは本物かどうか見分けが難しく、さらに在留カードを偽造する側は、政府が示している在留カードの見分け方チェックポイント対策までしていることから、一般人が外見から当該在留カードが本物か偽物なのか判断するのはほぼ不可能となってきています。
そこで不法就労予防のためには、在留カードの外見チェックだけではなく、他の手段により在留カードをチェックする必要があります。

在留カードが真正なものかを確認するための有効な方法として、在留カード等読取アプリケーションを活用する方法があります。
在留カード等読取アプリケーションの説明について、

「在留カード等のICチップ内に保存されている身分事項や顔写真等の情報を読み取るためのものです。読み取った情報と、券面に記載された情報を見比べることにより、容易に偽変造の有無を確認することができます。
本アプリを出入国在留管理庁ホームページ等において無料配布することで、偽変造在留カード対策を強化し、より一層偽装滞在者対策を進めます。」(出入国管理庁HP

とされています。

このアプリを使用することで、在留カードが真正なものか確認することができます。
もう一つ有効な在留カードの確認方法として住民票を提出してもらうことで、住民票の記載内容と在留カードの記載内容を照合して在留カードの真正を確認する方法があります。
「住民基本台帳法の一部を改正する法律」により、2012年7月9日以降、日本で生活する外国人も住民基本台帳制度の対象となりました。そのため在留カードと住民票は連動しており、在留カードの対象者にはかならず住民票が発行されます。

住民票には、「中長期在留者である旨、在留カードに記載されている在留資格、在留期間及び在留期間の満了の日並びに在留カードの番号」の情報が記載されており、在留カードと住民票に記載されているこれらの情報を照合することで、在留カードが真正なものか確認することができます。
この二つの方法の両方又はどちらかを活用することで、在留カードが真正なものか判断することができます。

4.不法就労者であることを知らずに雇用して、あとから不法就労者であることが分かった場合どうすればよいか

最後に不法就労者とは気づかずに不法就労者を雇用してしまい、後日不法就労であることが発覚した場合についてです。
不法就労助長が認められた場合は、雇用側に刑事処分や行政処分に問われることが考えられますが、雇用側は不法就労者を雇用していたことを隠さずに警察や出入国在留管理局に報告する必要があります。
また既に管轄の出入国在留管理局の方で不法就労の状況を把握しており、雇用側の事業所に調査に来ることも考えられます。
この場合は、不法就労者を雇用するに至ったきっかけや今後不法就労者を雇用しないための事業所での取組みなどをまとめた報告書を提出する必要があります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、不法就労者の雇用に関する出入国在留管理局への報告書作成業務を扱っています。
不法就労者の雇用の件でお悩みの方は是非,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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オーバーステイ,不法残留とは何か

2025-01-14

「オーバーステイ」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がQ&A方式で解説します。

Q そもそもオーバーステイとはどのようなものですか?

A オーバーステイとは直訳すると超過滞在という意味です。出入国在留管理上正当な理由がないのにもかかわらず在留期限を経過して本邦(日本)に滞在している状態をいいます。
法務省、外務省、警察等の行政官署ではオーバーステイは「不法滞在」として扱われています。「不法滞在」には①不法入国(他人名義でのパスポート使用による不正入国等)
②超過滞在(短期滞在や技能実習など正規の在留資格で来日した後、在留資格更新や在留資格変更手続きを経ずに在留期間を経過したのちも在留すること)の2種類があります。

Q ここでいう「非正規滞在者」とはそもそも誰のことですか?

オーバーステイの状態にある人を「不法滞在者」と呼ばずに「非正規滞在者」と呼びましょう、という主張が一部学者やNPO団体等から提起されています。

A 一部の学者やNPO団体から在留資格がないまま日本に滞在している人たちを「不法滞在者」と呼ばずに「非正規滞在者」と呼びましょう。という見解があります。
なぜ「不法滞在」ではなく「非正規滞在」と呼ぶ必要があるのかについて、以下の理由があげられています。
「日本には2023年時点で約7万人の非正規滞在移民がいます。非正規滞在とは、入国管理法に定められた在留資格を持たない外国人が日本に留まることを指します。これは確かに法律には違反していますが、法律の方がグローバル化した現代社会に適合していないがゆえの現象と考えるべきです。」
(上智大学 グローバル化する日本における非正規滞在移民があぶりだす制度の矛盾とはhttp://www.sophia,ac.jp/ 一部抜粋)
令和6年1月1日現在、政府が公表している「不法滞在者」は79,113人います。
*なお日本の政府機関は在留資格を持たない外国人を「非正規滞在者」ではなく「不法滞在者」の呼称で統一しており、ここでは「非正規滞在者」ではなく「不法滞在者」の表現で統一します。

日本での「不法滞在者」内訳は、短期滞在からの不法滞在が49,801人、技能実習からの不法滞在が11,210人、特定活動からの不法滞在が8,189人、留学からの不法滞在が2,288人、日本人の配偶者からの不法滞在が1,880人,その他が5,745人(これらの在留資格に該当しないもの)で合計79,113人となっています。

「特定活動」からの不法滞在が8,189人となっていますが、これは「難民認定交付申請」で不交付となったが、難民申請不認定となって在留資格が認められなくなったにもかかわらず、母国に帰国せずに仮放免等で日本に残っている人たちと推測されます。
日本にいる「不法滞在者」全体の約93%は正規の在留資格を持って来日後になんらかの事情により在留期間を経過したもので、いわゆるオーバーステイ(超過滞在)といわれるものに該当します。
日本における不法滞在者の内訳をみると、本当に「法律のほうがグローバル化した現代社会に適合していないがゆえに」だけの理由で不法滞在者が発生しているのか検討の余地はあるでしょう。

Q3 そもそも「非正規滞在」の何が悪いのですか?なぜ悪いことをしていないのに逮捕されたり、入管施設に収容されたりするのですか?

A 「オーバーステイは非正規滞在者だ。一体それのどこが悪いのか」という相談を受けることがあります。
「正当な理由がなく在留資格を得ないまま日本に滞在することの一体どこに問題があるのか。「非正規滞在者」でいることは別に人を傷つけたり、物を盗んでいるわけではないのだから何ら問題はないではないか。」という見解ですが、確かに不法入国や不法滞在は殺人罪や傷害罪のように人を殺したり、
人を傷つけたりする行為ではなく、被害者がそもそも誰なのか、何が悪いのかよく分からないところがあり、不法滞在や不法就労が悪いこと(違法)であると認識するのは難しい部分があるのは事実だと思います。

不法入国者・超過滞在者はなぜ処罰を受けるのか?ということですが、不法入国・不法滞在が「入国管理の適正な運営」という国家的法益に対する侵害行為とみなされ処罰されます。
人の生命・身体・財産等を不正な侵害から保護すべき利益(個人的法益)があるのと同じように、国家にも不正な侵害から保護されるべき利益(国家的法益)が存在します。
日本の出入国在留管理行政においては「入国管理の適正な運営」が国家的法益として保護すべき対象となっています。
不法入国や不法滞在が我が国の「入国管理の適正な運営」を侵害する行為として裁判所で違法と判断され刑事罰を受けることがあります。

*入管法第70条各号で不法入国・不法滞在等での罰則が規定されており、不法入国、不法滞在いずれも「三年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三百万以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する」となっています。オーバーステイ(超過滞在)状態での期間によってはオーバーステイ(超過滞在)の事実だけでも起訴され、有罪判決を受ける場合があります。超過滞在の期間が長ければ長いほど違法性が高いと判断される傾向です。

あいち刑事事件総合法律事務所では不法滞在からの在留許可申請業務を扱っています。不法入国・オーバーステイ(超過滞在)により在留資格がないことでお悩みの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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「永住者の配偶者等」ビザ

2025-01-07

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「永住者の配偶者等」について解説します。

1.ケース紹介

Y国籍のAさんは、10年前に同じY国籍のBさんとY国で結婚しました。2人の間に子(X1)がいます。7年前に夫のBさんが病気で亡くなり母国で独身生活を過ごしていました。
4年前に婚活サイトで日本に在住する永住者のCさんと知り合いました。3年前にCさんと再婚するために子(X1)と来日しました。来日後Cさんとの間に子どもが2人(X2,X3)出来ました。
最近Aさんは夫のBさんとの関係がうまくいっておらずAさんはBさんと離婚を考えています。Aさんは夫のBさんと離婚した場合、Aさんと3人の子(X1,2,3)の在留資格はどうなるのでしょうか。

①在留資格「永住者の配偶者等」
日本において有する身分又は地位:「永住者等の配偶者又は永住者等の子として日本で出生しその後も引き続き日本に在留している者。」
②「配偶者」とは法律上有効な婚姻状態にある配偶者を指します。内縁の配偶者は含まれません。現に婚姻中であることを指すので、死亡した配偶者及び離婚した配偶者は該当しません。
また、永住者との婚姻関係により永住者の配偶者等と当該外国人が法律上有効な婚姻状態にあるという形式的要件の他に、夫婦として互いに協力し扶助しあって社会観念上の共同生活を営むという婚姻の実体を伴うものでなければなりません。
③「子として出生」とは、実子のみ(嫡出子・認知された非嫡出子)です。特別養子及び養子は含まれません。

出生の時に父又は母が永住者であるとき又は出生の前に死亡した父が死亡の時に永住者又は特別永住者であった時が該当します。
なお、本人の出生後、死去や犯罪での実刑判決等による父及び母の永住者の在留資格や特別永住者の地位の喪失は,「永住者の子として出生」という事実に影響を与えません。
「本邦で出生し、その後引き続いて日本に在留している」ことが必要で、海外で出生しその後日本に入国した者は、本件在留資格に該当しません。
これらの者は「定住者」の在留資格に該当します。

在留資格(ビザ)の種類 入管HP

2.ケース分析(Aさんと子(X1,X2,X3)の在留資格)

①離婚前のAさんと子(X1,X2,X3)の在留資格について
Aさんは子ども(X1)を連れて3年前に来日、日本に住んでいる永住者Bと結婚して、その後永住者Bさんとの間に子ども(X2,X3)が生まれました。
Aさんの在留資格は永住者であるBさんと結婚したことにより、「永住者の配偶者等」になります。
Aさんの連れ子X1は、「定住者告示第6号二」により「日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等の在留資格をもって在留するものの扶養を受けて生活するこれらの者の未婚の実子」として「定住者」となります。Aさんと永住者Bさんとの間に生まれた子(X2,X3)は「永住者の配偶者等」になります。

②離婚後のAさんと子(X1,X2,X3)の在留資格について
子(X2,X3)の在留資格は1③のとおり両親の在留資格に影響されず「永住者の配偶者等」のままとなります。
ここで問題となるのは元々母の連れ子の立場で在留資格が認められた子X1と離婚した母の在留資格が母の離婚によりどうなるかということです。Aさんが永住者の夫Bさんと離婚したときは、Aさんは「永住者の配偶者」としての身分を失いそのままでは在留資格がなくなります。
AさんがBさんと離婚後引き続き日本に滞在するためには「永住者の配偶者等」から他の在留資格に在留資格変更手続きを行う必要があります。

このような場合に想定されている在留資格として、定住者告示に定めがないもの(告示外定住)に含まれる「離婚定住」と呼ばれるものがあります。
「離婚定住」とは「日本人、永住者又は特別永住者である配偶者等と離婚後引き続き日本に在留を希望する者」に該当する「定住者」資格です。
告示外なので活動内容が事前に決められおらず、個別案件ごとに審査されます。

「離婚定住」の許可要件として
1.おおむね日本での3年以上の婚姻期間
2.生計を営むに足りる資産又は技能を有すること、
3.日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており、通常の社会生活を営むことができることが困難となるものでないこと
4.公的義務(納税・社会保険・国税等の支払い)を履行していること
Aさんの子X1の在留資格についてはX1の実母であるAさんが「定住者」資格を取得することにより、「定住者告示第6号二」によりこれまで同様「定住者」の在留資格となります。

*「日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難となる者ではない」とは、
申請書の記載や面接において、申請人との意思の疎通が可能であればよく、特定の日本語の試験に合格していることまでは求められません。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「永住者配偶者等」を取り扱っております。
「永住者の配偶者等」の在留資格についてご不明の点がございましたら是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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技術人文知識国際業務・特定活動46号ビザについて

2024-12-24

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が在留資格「技術・人文・国際業務」について解説します。

1.在留資格とは?

在留資格とは、外国人が日本で行うことができる活動内容を類型化したもので、現在日本には在留資格が29種類あります。
在留資格はおおまかに身分又は地位に基づく資格(永住・日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4種類)と日本での活動に応じて認められる資格(技能、技術・人文・国際業務、技能実習、特定技能、経営・管理等全部で25種類)に分けられます。

日本で認められるビザの種類について 入管HP

2.在留資格「技術・人文・国際業務」とは?

日本の大学や専門学校に留学している外国人学生が学校を卒業後、日本の会社や役所に就職して働く場合に必要となる在留資格が「技術・人文・国際業務」です。
日本での活動に応じて認められる在留資格です。「技術・人文・国際業務」の活動内容は大きく2つあります。
①理学、工学その他の自然科学の分野又は法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術又は知識を要する活動。
例えばメーカーが理工系の大学を卒業した外国人をSE、設計、技術開発、品質管理部門、商品開発、事業会社で企画、営業、財務、マーケティング、人事等に従事する活動等が該当します。
②海外の文化に基盤を有する技術又は感受性を必要とする活動。例えば、翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発、英会話教室の講師等に従事する活動が該当します。
在留資格「技術・人文・国際業務」の特徴として、原則として「単純作業」は出来ないということが挙げられます。

ここで「単純作業」とは一体どのような作業なのかが問題となりますが、具体的には、製造業でのライン作業、飲食店でのホール作業、小売店でのレジ業務、コンビニエンスストアでの接客、レジ業務等が考えられます。
日本の大学や専門学校で学ぶ外国人留学生の多くがこれらのアルバイトでこれらの業務に携わっていますが、これらの業務は入管法上「単純作業」とみなされ、原則として「技術・人文・国際業務」でこれらの業務に従事することは認められません。
そのため、飲食店やコンビニでのアルバイトチーフや製造業でのラインリーダーで働いてもらうため「技術・人文・国際業務」の資格では採用することはできません。また大学や専門学校での専攻科目と入社後携わる業務との関連性が求められます。

大学卒業者については、大学の教育機関としての性格をふまえ専攻科目は従事しようとする業務の関連性は比較的緩やかに判断するとしています。
実務上の感覚からみると、専攻科目と入社後従事する業務の関連性よりも入社後従事する業務が「単純作業」かどうかが重要視されているようです。

3.特定活動46号と技術・人文・国際業務の違い

外国人が日本の会社等で商品企画、技術開発、営業、管理業務、広報、教育等に従事するために必要な資格として「技術・人文・国際業務」がありますが、これらの業務は他の就労資格でも認められる場合があります。「特定活動46号」という在留資格です。


「特定活動46号」の対象となるのは、日本の大学卒業者であって、高い日本語能力を有する外国人です。高い日本語能力とは、日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有する方です。その他、大学又は大学院において「日本語」を専攻して大学を卒業した方も対象となります。

「特定活動46号」の具体的な活動例として、
①工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインの入って業務を行うもの
②小売店において、仕入れ、商品企画や、通訳を兼ねた接客業務を兼ねた接客販売業務を行うもの(日本人に対する接客販売業務を行うことも可能)
③食品製造会社において、他の従業員との間で日本語を用いたコミュケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ、自らも商品製造ラインに入って作業をおこなうもの
があります。

上記①~③の業務は「技術・人文・国際業務」では認められませんが「特定活動46号」では対応可能となります。

「特定活動46号」で求められる語学レベルはN1以上ですが、外国人留学生が日本の大学で日本語で授業を受けるために必要なレベルはN2以上なので、日本の大学で4年間日本語で授業を受け卒業単位を取得し卒業した留学生であれば、N1取得も不可能ではないかもしれません。
介護やコンビニ、製造業等で、技能実習生や特定技能、留学生アルバイト等の外国人従業員を多く抱える事業所にとって、現場で働く外国人のリーダーになりうる外国人は大変貴重な存在であることから、「特定活動46号」は大変有用性が高い在留資格になるでしょう。

外国人従業員が多い現場で作業リーダーの役割を担ってもらいたい場合は、「技術・人文・国際業務」ではなく「特定活動46号」での採用となります。

以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が在留資格「技術・人文・国際業務」について解説しました。
大卒の外国人社員の新規採用をお考えの事業者の方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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資格外活動許可が必要になる場合とは?

2024-12-17

「資格外活動許可について」弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.事例

Aさんは母国の高校を卒業後、都内にある日本語学校で日本語を学ぶために来日、日本語学校卒業後、ビジネスを学ぶ為に都内にあるビジネス専門学校に進学しました。
Aさんの現在の在留資格は「留学」です。Aさんが住んでいる地域には、Aさんと同じB国出身の人が数多く住んでおり、また日本に滞在しているB国人同士で主にSNSを通して交流があります。Aさんは専門学校の授業の空き時間を利用して、副業目的でベトナムからたばこを輸入してSNSで販売することを計画しています。輸入に関する税関手続きは法令にのっとり適切に行い輸入にかかる税金はきちんと払う予定です。
Aさんの輸入たばこ販売計画はどこに問題があるでしょうか?

2.輸入たばこを無資格で販売する行為について

個人で輸入した「たばこ」を無許可で転売することは、法律により禁止されています。
輸入した製造たばこを販売するには「製造たばこの特定販売業」の登録をする必要があります。
製造たばこは葉たばこを原料を主原料とし、喫煙用、かみ用又はハガキ用に供しうる状態に製造したものをいいます。
製造たばこの特定販売業とは、自ら輸入した製造たばこの販売を業(仕事)として行うことをいい、営利を目的とするか否か、特定若しくは不特定の者に販売するかどうかを問いません。

<関連条文>
(製造たばこの特定販売業の登録)たばこ事業法第十一条一項
自ら輸入(関税法(昭和二十九年法律第六十一号)第二条第一項第一号に規定する輸入をいう。以下同じ。)をした製造たばこの販売を業として行おうとする者は、財務大臣の登録を受けなければならない。
(罰則)第四十八条次の各号の一に該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
一 第十一条第一項の規定に違反して、自ら輸入をした製造たばこの販売を業として行つた者

3.許可なく輸入たばこを販売する行為がビザに影響するか

資格外活動について/資格外活動許可とは

「資格外活動許可」とは、現に有している在留資格に属しない収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行おうとする場合に必要な許可です。
Aさんの在留資格は「留学」です。たばこを第三者に販売して収入を得ることは、「留学」の活動内容に含まれないので、Aさんのたばこ販売行為は「資格外活動」となります。

そこでAさんはたばこ販売という「資格外活動」に対して、Aさんは管轄の出入国在留管理局から活動許可をもらわなければなりません。

Aさんがたばこの販売に対して許可を取っておらず、資格外活動許可も取得していないと、Aさんのたばこ販売行為は不法就労に当たります。
Aさんの場合、たばこ販売は専門学校の授業後の副業目的で行われており、たばこ販売を生業としていたわけではないので、Aさんのたばこ販売行為は入管法第73条に該当し1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは200万円以下の罰金、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科の罪に該当します。

Aさんのようなケースで資格外活動をした場合,退去強制事由に該当し,強制送還されてしまう場合もあるでしょう。
仮に,すぐには強制送還にならないとしても,Aさんが無許可での資格外活動により刑事罰を受けた場合、次回の在留更新の際に素行善良要件に問題があるとして、在留更新の許可が得られないこともあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「資格外活動許可申請」について取り扱っております。「資格外活動許可申請」についてお困りの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

参考記事

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ビザ変更のガイドラインとは?

2024-12-10

在留資格の変更について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.在留資格の変更とは

在留資格の変更とは,在留資格を有する外国人が在留目的を変更して別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合に,法務大臣に対して在留資格の変更許可申請を行い,従来有していた在留資格を新しい在留資格に変更するために許可を受けることをいいます。

この手続により,我が国に在留する外国人は,現に有している在留資格の下では行うことができない他の在留資格に属する活動を行おうとする場合でも,我が国からいったん出国することなく別の在留資格が得られるよう申請することができます。在留資格の変更を受けようとする外国人は,法務省令で定める手続にしたがって法務大臣に対し在留資格の変更許可申請をしなければなりません。

参考 ビザの変更に関するQ&A 法務省HP

2.在留資格変更のガイドラインについて

① 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
申請人である外国人が行おうとする活動が、入管法別表第一に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる活動、入管法別表第二に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動であることが必要となります。

② 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
法務省令で定める上陸許可基準は、外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準ですが、入管法別表第1の2の表又は4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者については、在留資格変更及び在留期間更新に当たっても、原則として上陸許可基準に適合していることが求められます。
また、在留資格「特定活動」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(特定活動告示)に該当するとして、在留資格「定住者」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(定住者告示)に該当するとして、上陸を許可され在留している場合は、原則として引き続き同告示に定める要件に該当することを要します。
ただし、申請人の年齢や扶養を受けていること等の要件については、年齢を重ねたり、扶養を受ける状況が消滅する等、我が国入国後の事情の変更により、適合しなくなることがありますが、このことにより直ちに在留期間更新が不許可となるものではありません。

③ 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。

④ 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。

⑤ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められますが、仮に公共の負担となっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断することとなります。

⑥ 雇用・労働条件が適正であること
我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。

⑦ 納税義務等を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、履行していない場合には消極的な要素として評価されます。例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。
また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。

⑧ 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第 19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。

3.在留資格変更が難しいケース

① 短期滞在から中長期在留資格への変更
短期滞在からの在留資格変更申請は「やむを得ない特別な事情」がある場合以外認められません。「やむを得ない特別な事情」とは、人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に認められるもので、例えば、病気治療をする必要がある場合などです。

② 技能実習からの在留変更
技能実習からの在留資格変更は原則として認められません。
技能実習制度は、我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上地. 域等への移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とするものであり、技能実習を終了しない段階での在留資格の変更は原則として認められません。

以上,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が在留資格変更申請手続きについて解説しました。
在留資格変更申請でお困りの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

「特定活動(告示46号)」について

2024-12-03

「特定活動(告示46号)」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
(ケース紹介)

1.事例

Aさんはある政令指定都市でコンビニエンスストアを数店舗経営する経営者です。
Aさんは大手コンビニストアのフランチャイズに加盟しており、株式会社を設立して自ら代表取締役となり店舗運営を行っています。
最近コンビニエンスストアのアルバイト募集は求人難に直面しており、Aさんが経営する店舗も例外ではなく、アルバイトを募集してもさっぱり応募がなく、たまに応募が来ても採用後すぐにやめてしまいます。そこでAさんは日本人アルバイトの採用をあきらめ外国人留学生(大学・専門学校生)に絞ってアルバイトを採用をしています。
アルバイトの中にB子さんという外国人留学生がいます。
B子さんは現在大学3年生で今年でアルバイト歴5年目になります。日本語がとても堪能で仕事をてきぱきとこなします。AさんはB子さんの仕事ぶりを高く評価していおり、最近ではB子さんにレジ業務の他、商品の仕入れや商品企画、新人アルバイトの接客指導も任せています。
AさんとしてはB子さんが大学を卒業したらぜひ自分の会社で採用したいと考えています。
AさんはB子さんが大学卒業後、B子さんを自社の社員として採用してAさんが経営するコンビニ店舗の管理・運営を任せることができるでしょうか?

2.「特定活動(告示46号)」とは?設立の背景

従来から日本の大学等で学ぶ留学生が大学等を卒業後、日本の会社等で働く場合の在留資格として「技術・人文・国際業務」があります。

この在留資格は会社等に入社後、専門的・技術的な業務に従事することを目的としており①小売店における仕入れ、商品の企画や、通訳を兼ねた接客販売業務、②ホテルや旅館での翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報活動を行うものや、外国人の通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客をおこなうもの③介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いて介護業務に従事するもの等、事業所での事業活動としては大変重要度が高いものの、業務の中に「単純作業」が含まれるためにこれらの業務を行う場合は、在留資格「技術・人文・国際業務」での許可が認められてきませんでした。

近年インバウンド政策による来日外国人観光客の急増、技能実習生や特定技能外国人、外国人留学生アルバイト等外国人労働者の大幅な増加により、日本の様々な事業所における業務活動の中で、日本語があまり話せない外国人と日本人事業者側との橋渡し役となる日本語が堪能で、事業所の業務に精通した外国人人材の需要が高まってきました。

そこで上記①~③の事例にあるような、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に対応できる外国人が日本で働くことができるようにするため、特定活動告示46号が2019年5月に制定されました。

特定活動ビザのための書類はこちら 参考:法務省HP

3.特定活動告示46号のポイント

単純作業を含む幅広い業務に対応が可能です。
例えば、食品製造会社において、商品製造ライン業務を特定技能外国人や技能実習生等の外国人に担う場合、彼らへの業務指導を行う者の存在が必要不可欠となりますが、この業務を特定活動46号の在留資格を持つ外国人社員に任せることができます。
日本語能力が十分でない技能実習生や特定技能外国人に対して、日本人が日本語で業務指導しても細かい情報の伝達が困難な場合があります。
意思疎通がうまくいかないことによる製造ラインでの作業ミスは、時として企業側にも作業者側にも甚大な損害を与えるおそれがあります。
外国人作業員に対して、日本語ではなく母国語による業務指導ができれば業務の伝達がスムーズに行われ伝達ミスによる重大事故を防ぐことが可能になります。

4.特定活動46号の対象者について

学歴要件として、日本の大学等を卒業した外国籍者が対象です。
対象となる者の学歴の範囲として①大学・大学院卒業、②短期大学、高等専門学校を卒業した者で学士の学位を付与されている者、③専修学校の専門課程を修了した高度専門士の称号が認められた者です。
日本語能力要件として、日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上、日本の大学・大学院で「日本語」を専攻して卒業した者です。
日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務について、単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず、いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュケーションを要する業務であることを意味します。
*具体例として2.①~③。

従事する予定の業務内容について、通常の業務の中に一般的に日本の大学等において修得する知識が必要となるような業務、例えば商品企画、技術開発、営業、管理業務、企画業務(広報、教育等)が含まれている必要があります。

契約形態等について、日本の公私の機関との契約に基づき「常勤」の職員としての採用となります。
契約機関の業務に従事する活動のみが認められ、派遣社員として派遣先で就労活動を行うことは認められていません。「常勤」の職員としての採用となることから短時間のパートタイムやアルバイトは対象になりません。社会保険の加入は必須となります。報酬について、同種の業務に従事する日本人と同等額以上であるか、また、他の企業の同種の業務に従事する者の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかについて判断します。
家族の滞在について「配偶者」「子」については「特定活動」の在留資格により日本滞在が可能です。
参考:出入国在留管理局HP

以上、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「特定活動(告示46号)」について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「特定活動(告示46号)」の在留申請業務を扱っております。
「特定活動(告示46号)」で外国人の採用をお考えの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

外国人が日本で事業を開始する際の注意点について

2024-11-26

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「外国人が日本で事業を開始する際の注意点について」について解説します。

1.日本で事業をするためのビザ

外国人が日本で事業を行うためには、日本国内で事業活動を行うための在留資格が必要です。
外国人が日本で事業活動をするのに必要な在留資格には2種類のタイプがあります。

一つ目が「永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者」の地位又は身分による在留資格です。
地位又は身分による在留資格は日本で行う仕事内容に制限がないので犯罪を行う仕事等反社会的目的でない限り仕事の種類に制限はありません。

二つ目が在留資格「経営・管理」です。
この在留資格は外国人が日本で事業を行う目的で在留するために設立された在留資格です。

「経営・管理」に関する申請書類はこちらから

外国人が日本で行う事業について、形態として個人事業と法人事業の2種類があります。個人事業は事業を行いたい人が自ら独立して事業を行う形態です。
法人事業は法人を設立して法人を主体として事業を行う形態です。    
法人の種類として、営利法人と非営利法人の2種類があります。
営利法人として株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類があります。
非営利法人にはNPO法人、一般社団法人、一般財団法人等があります。
日本での新規会社設立数は現在株式会社が1位で次が合同会社の順となっています。
2022年度の新規会社設立数は、株式会社が92,371件、合同会社が37,121件です。
近年合同会社の設立数が増加傾向にあります。
合同会社は2006年施行の会社法改正によって設置されました。
株式会社と合同会社は間接有限責任を取ることは同じですが、合同会社の場合は出資者が全員合同会社の社員となり会社経営に関与する点で、所有と経営の分離を定めた株式会社と大きく違っています。
合同会社は株式会社と比べて設立が容易で設立費用も少額で済み、株式会社にくらべ会社内部の組織形態が簡略化されており少人数での事業経営に向いています。

2.事業の目的について

個人事業又は法人事業どちらにおいても、事業を開始する前に事業目的を定める事が必要です。
会社を設立するためには、事業目的を定めて定款に記載し登記する必要があります。
事業には自由に始められるものと事業を行う前に許認可が必要な場合の2種類があります。
官公庁への事前の許認可が必要な場合として、飲食店の営業を行う場合の飲食店営業許可やトラック運送事業を行う場合の一般貨物運送事業許可等があります。
飲食店営業を行う場合でもキャバクラ・ラウンジ・スナック等で接待を伴う営業形態の場合は、飲食店営業許可の他に風俗営業許可が必要となります。
許可を取らずにこれらの事業を行った場合は罰則が科せられることがあります。
例えば許可を取らずにトラック運送を行った場合は、貨物自動車運送事業法第3条1項・第35条1項に違反し「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が科せられる場合があります。

3.株式会社の資本金について

2006年の会社法改正により、株式会社設立において最低資本金は1円以上あればよい事になっています。これは外国人が日本で株式会社を設立する場合も同様です。
但し、身分又は地位による在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)では資本金1円でも会社を設立して事業活動が可能ですが、在留資格「経営・管理」を取得するために株式会社を設立する場合は、事業規模の要件として500万円以上の投資が必要となっている関係で資本金1円では大きな問題となります。
在留資格「経営・管理」における投資の有無は払込済資本金で判断されるので、資本金が1円では「経営・管理」の在留資格は認められないことになります。
従って株式会社や合同会社を設立して「経営・管理」の在留資格を取得しようとする場合は、株式会社では500万円以上の資本金、合同会社では500万以上の出資金が必要となります。

以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「外国人が日本で事業を開始するため注意点について」について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留資格「経営・管理」の在留申請手続きを取り扱っています。日本で事業を行う目的で在留資格「経営・管理」をお考えの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

不法就労における企業側の予防対策

2024-11-19

不法就労における企業側の予防対策について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.就労資格のない外国人が日本で働くための道具として、偽造在留カードが出回っています。
最近の偽造在留カードの中には大変精巧に作成されていて、素人目には本物と偽物の区別がほぼつかない物があります。
偽造在留カードを作成する目的は色々考えられますが、目的の一つに偽造在留カードを使って身分を欺いて事業所で働く目的があると考えられます。
不法滞在者の中には、不法滞在中に犯罪を生業にして生計を立てるよりは、きちんとした事業所で働いて安定収入を図る方が安全に生活出来て稼いだお金を本国に送金しやすいと考える者も少なからずいます。

就労資格のないにもかかわらず安定した仕事と定期収入の機会を狙って求人募集をしている事業所の面接を受け「自分は本当は在留資格がなく不法滞在なので本来仕事はできませんが、採用されたら日本人よりも頑張りますから採用してください」とアピールしたも、採用どころか不法滞在で入管に通報されるでしょう。
そこで偽造在留カードを作成して、人手不足で悩んでいる事業所をだまして就労する機会を得ようとします。

近年,中小メーカーを中心に人手不足が慢性化しており、中小メーカーを中心に派遣会社を通して募集しても人が来ない、ハローワークを通しても人が来ない等人手不足に悩む企業が多く、喉から手が出るほど人手が欲しい状況の中で、「採用するなら日本人限る」から「きちんと仕事してくれるなら外国人でも構わない」と企業側の採用マインドが変化してきています。
こうした背景において、人手不足で悩んでいる会社につけ込み就労資格のない外国人をあっせんして人手不足に悩む事業所に送り込むブローカーも絡んでいます。

2.偽造在留カードを提示されたことにより、正規の在留カードであると誤信して就労資格のない外国人を雇用した場合の受入れ側の責任について。
偽造在留カードであることを見抜けずあたかも就労資格のある外国人と思い込んでしまい、不法滞在者を主とする就労資格のない外国人を雇用してしまった場合、不法就労者を受入れた側は不法就労を見抜けなかったことについて不法就労助長罪等、不法就労に関する罪の成立を免れることはできるでしょうか?
不法就労助長について定めた入管法第七十三条の二には

「前各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らなかったことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」

とあることから、単に不法就労であることを知らなかったというだけでは不法就労をさせた責任を免れることはできません。

不法就労助長罪の適用を免れるためには、採用に当たり不法就労であることについて過失がなかったことまで求められます。
外国人の採用にあたって,「本当に働けるビザを持っているのか」という点を,適切な方法できちんと調べなければならないのです。面接のときに「ビザを持っていますか?」と口頭で聞くだけでは,「適切な注意を尽くさなかった」とされ,本当に不法就労であることを知らなかったとしても逮捕されたり,処罰されたりしてしまうことがあるのです。

また,不法就労をした側の外国人は、刑事罰の有無にかかわらず強制送還の対象となります。
例えば強制送還された外国人がメーカー等の生産工程に配属されていた場合、生産工程は作業者の人員区分が決まっているので、強制送還されて一度に何人もの人員が欠けると生産工程が人員不足でストップしてしまい、指定された期日に製品を納品することができないことも考えられます。
そうなると不法就労者を雇用してしまった事業者側は、経済的にも信用の面でも甚大なダメージを受けるおそれが生じます。
それゆえ継続的で安定した事業経営の為には、不法就労者の雇用は絶対に避けるべきです。

3.採用する側が偽造在留カードを見破る具体的方法について

在留カード等読み取りアプリを活用する方法があります。
在留カード及び特別永住者証明書のICチップに記録された氏名等の情報を表示させ、在留カード等が偽造されたものでないことを確認できるアプリケーションです。

在留カード等読み取りアプリケーション 出入国在留管理庁HP


偽造在留カードを見破るうえで効果的な方法ですが、確認には本人の同意が必要です。
もし本人が在留カードのアプリ確認に同意しないなら雇用は控えるべきです。

もう一つ偽造在留カードを見破る有効な方法として、採用にあたり住民票の提出を義務付けるという方法があります。
平成24年7月9日以降、3か月以上日本に滞在する外国人には日本人と同様に住民票が作成されることになりました。住民票と在留カードはセットになっており、在留カードが発行されれば住民票が発行され、在留カードが発行さなければ住民票も発行されません。

万が一在留カードの読み取りアプリの使用方法を間違っていたりカードの見落としがあっても、住民票と在留カードの記載事項を照合することにより,偽造在留カードを見破ることができます。
採用予定の外国人に住民票の提出を求めたときに、住所変更したので住民票がまだ出来ませんという回答や在留資格変更をしてまだ住民票に記載事項が反映されません、という回答があった場合は、住民票に変更事項が記載されるまで本採用は控えたほうが賢明でしょう。

住民票の偽造も全く考えられなくはないので、委任状を作成して本人の代わりに採用者側が住民票を取り寄せるという手もあります。
また技能実習生の転職は原則認められておらず、特定技能外国人の転職については事前に在留資格変更許可が必要であるということは、外国人を雇用する側の前提知識として押さえておくとよいでしょう。

以上不法就労と受け入れ側の対策について解説をしました。
外国人を不法就労させたことにより問題を抱えている事業者の方や外国人従業員の採用に当たって心配な方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

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