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同性婚カップルの在留資格

2024-07-04

同性婚カップルの在留資格について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

外国人同性婚カップルの在留資格は認められるか?

同性婚を法的に認めるべきか否かについて、最近日本国内で議論が盛んになってきています。海外の国々では同性婚を認めている国も多くあります。
2023年現在、196か国中37か国で同性婚が認められています。
同性婚を認める代表的な国としてアメリカ、イギリス、ドイツ、カナダ、オーストラリア、台湾等があります。
日本はどうかというと現在日本では法律上同性婚を認めていません。
日本人同士、日本人と外国人の同性同士での結婚は、日本では法律上認められていないため、日本の市町村役場で同性婚者の婚姻届けが受理されません。

海外の同性婚カップルの在留資格について

海外の同性婚カップルには、「日本人の配偶者等」のようにあらかじめ法で定められた在留資格は存在していないため、在留資格認定証明書での申請が出来ません。

そこで双方の本国で同性婚が認められたカップルに日本で在留資格が認められるのかが問題となります。
入管法上「同性婚の配偶者」という在留資格は存在していないので、配偶者という身分によっては在留資格は認められませんが、「特定活動」という在留資格で同性婚者の在留資格を許可することがあります。
これは「日本人の配偶者」等と違って日本の法律で認められたものではなく、あくまで運用上認めているものです。

平成25年10月18日に法務省の担当課長から各地方入国管理局支局長あてに「同性婚の配偶者に対する入国・在留審査について」という内容で通知がなされました。
同性婚カップルの一方が適法な在留資格を取得し日本で経済的に独立した生活を営むことが可能な状態にある場合を前提として、もう一方のパートナーに在留資格を認める運用がなされています。

参考:同性パートナーの在留資格 東京弁護士会 性の平等に関する委員会

同性婚者の在留資格が認められる要件として、主に以下の3つがあります。
1.同性婚の双方の本国で法律上同性婚が正式な婚姻として認められていること。
2.呼び寄せる側のパートナーに呼び寄せる相手方を扶養できるだけの経済力があること。
3.呼び寄せる側パートナーが日本で就労が可能な在留資格を有していること。
在留資格申請の方法として、既に日本にいる一方のパートナーが日本から海外にいるパートナーを家族訪問等の短期滞在で呼び寄せます。

同性婚のパートナーを呼び寄せ後、短期滞在の在留期間内に「短期滞在」から「特定活動」に在留資格を変更します。
同性婚のカップルに認められる「特定活動」には原則として就労が認められていません。
従って日本で仕事をしたい場合は資格外就労の許可を得ることが必要です。また仕事は週28時間までしか認められません。

「特定活動」の在留資格を取得するにあたり、入管に提出する申請書類は定住者の配偶者が「定住者」の在留許可を取得するために必要な書類とほぼ同じです。
管轄の入管に短期滞在から特定活動に在留資格変更申請を行い,変更許可が認められれば「特定活動」が在留資格が与えられます。
日本が法律上同性婚を認めるようになれば、同性のパートナーの在留資格も大きく変わっていくでしょう。

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永住資格が取り消される場合について

2024-07-02

永住資格の取消し事由追加について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

2024年の国会で入管法の改正案が審理され、可決された場合には入管法が大きく変わります。
主要な改正点は2点あります。

一点目は、技能実習制度が廃止され新たに育成就労制度が設けられ関連する出入国監理及び難民認定法の一部の改正。
二点目は、永住資格の取消し事由が追加です。

永住資格が取り消される場合

育成就労制度と永住許可の取消し事由については一見無関係なようでいて、実は無関係ではないようです。

新たに設立される育成就労制度や特定技能1号、2号等による将来的な外国人労働者の受入れの急増に伴い、増加した外国人労働者が永住資格者に移行する場合に備えて、経済的に余裕のない永住者を増加させないために、今回の国会での入管法改正により「故意に公課の支払いをしないこと」を永住資格の取消し事由として追加したとみるのが妥当です。

「故意に公課の支払いをしないこと」とは、意図的に税金をごまかしたり隠したりして、本来の収入に見合った納税をしないことです。

永住資格は「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」といった身分による在留資格の場合等を除いて、原則として日本での在留期間が継続して10年以上、そのうち就労資格が5年以上あることが最低限必要であり、直近過去5年分の収入、納税状況、直近2年分の社会保険加入状況が審査されます。
指定された期間内で税金の滞納や社会保険の未払いがあるとまず永住許可は取得できません。

永住権の取得が難しくなる?

近年永住資格許可は大変ハードルが高くなっており、税の滞納や社会保険の未納がないのは当然として、特に収入の要件が厳しくなっています。
実務を通しての実感として、扶養家族の有無や人数によって多少の変動がありますが、今の永住申請は収入に関しては日本人の平均年収程度は必要とされているようです。
日本人でも社会保険未納や税金の滞納、平均年収に届かない家庭は相当数いるだろうことを考えれば、現在の永住資格審査は日本で暮らす外国人に平均的な日本人以上の生活水準を求めていることになり、実感として永住審査は10年~20年前と比べるとかなり審査が厳しくなっていると思います。

20年~30年前に永住資格を取得した方に話を聞くと昔は本当に永住資格を取得するのが容易だったということです。
今後は税金を最低5年分期限通りにきちんと払って永住審査を取得しても、将来も永続的に永住資格が認められるわけではなく、永住資格取得後に税金の滞納が発生すると永住資格取消しのリスクが発生するということになります。

これから永住が本当に取り消されるのか?

「永住資格を取消されたくないなら、税金をきちんと払えば問題ないじゃないか?」という見解もありますが、日本人でも会社をやめたり倒産して一時的に職を失ったりした場合に税金の滞納が発生する場合もあると思います。

日本人の場合は税金の未納があっても延滞税を払って分割支払いにしてもらうとか、預貯金から差し押さえたりする処分がなされる場合がありますが、決して日本国籍までは失われません。しかし永住資格者の場合、税金の未払いがあれば在留資格まで取消されて日本に滞在できない危険が生じる点で、永住資格取得者にとって今回の改正はかなり厳しいものになっていると思います。

条文上は「故意に」=意図的にわざと税金を払わなかった場合に永住資格が取消されるとなっていますが、「故意」の判断は入管が判断して、永住資格を取消すか否かも入管が判断するので、いわば検察官と裁判官の役割を入管が同時に担う立場であることに鑑みれば、在留資格の判断において極めて大きな裁量権を有する入管は、「故意」の判断において入管側が第三者のチェックなく独自に解釈することも想定され,人権保障上の観点からも問題が生じるかもしれません。

これまでの実務で扱った経験上税金を滞納していながら在留申請したケースも少なからず扱ってきましたが、そのような場合でも在留資格の申請は認められていたので、おそらく税金を滞納しているから永住資格をすぐに取消すというにはならない思います。

現在の運用では、永住資格は7年に一度永住資格の更新手続きを行いますが、手続上納税・課税証明書の提出は義務付けられていません。
そこで今後永住者の税金滞納は一体どうやって入管側が把握するのか問題となります。

現在でも約90万人いる永住者の一人一人の納税状況を入管側が全て捕捉出来るのかというと物理的にまず不可能でしょうし、そうなると永住資格も他の在留資格と同じように納税・課税証明書の提出を義務づけるのかという話になり、永住更新手続きの運用の在り方も変更する必要が出てきます。
おそらく永住資格については今後も運用の大幅な見直しや法改正があることが予想されます。

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外国籍の子供が日本国籍を取得する方法

2024-06-27

外国籍の子が日本国籍を取得する方法について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

国籍取得のための方法

日本に在留する外国人が日本国籍を取得する方法には、1出生 2届出 3帰化の3つの方法があります。
国籍取得に関しては国籍法に定めがあり、出生による取得に関しては国籍法2条、届出による取得は国籍法3条・17条、帰化による取得は国籍法4条~9条にそれぞれ規定されています。

出生によって国籍を取得する場合

外国籍の子が出生により日本国籍を取得する方法として、国籍法2条では以下のように定めています。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
  一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
  二 出生前に死亡した父がした父が死亡の時に日本国民であったとき
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しない
  とき

【条文解説】
一項、二項は父母両系血統主義、三項で補充的に生地主義を取り入れています。
国籍法二条でいう「父」又は「母」とは、子の出生の時に、子と法律上の親子関係がある父又は母をいいます(嫡出子)。
従って、法律上の親子関係にない父又は母から生まれた子(非嫡出子)の場合については適用がなく、
母の胎内にいる間に「父」又は「母」から認知されている場合は出生によって日本国籍を取得しますが、
出生後に「父」又は「母」から認知された場合は、出生の時に法律上の親子関係があったことにはなりませんので、出生により日本国籍を取得することはありません。

認知する場合

次に認知について解説します。

1.認知の【届出条件】として
(1)日本人の父が嫡出でない子の真実の父であり、自己の意思によって届出をすること
(2)子の出生時、母が独身であったこと
 注:「嫡出でない子」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を「嫡出でない子」といいます。
なお、母親が婚姻中に懐胎した子は婚姻関係にある夫の子と推定されます(民法772条)。認知の【届出人】は、認知する日本人父本人(代理人不可)です。

2.外国籍である未婚の母から生まれた子は母親の国籍のみ取得します。
子の国籍取得は国籍法第三条による届出による国籍取得となります。
また子の認知の際、認知に関する法の適用において、父の本国法(国籍法)と子の本国法のどちらかが適用されるかが問題となりますが、
この場合にどちらの法を適用するかについては、法の適用に関する通則法第二十九条で定められています。

法の適用に関する通則法
(嫡出でない子の親子関係の成立)
第二十九条 嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件も備えなければならない。
2 子の認知は、前項前段の規定により適用すべき法によるほか、認知の当時における認知する者又は子の本国法による。この場合において、認知する者の本国法によるときは、同項後段の規定を準用する。

【条文解説】
嫡出でない子と父との親子関係の成立は、「父の本国法」すなわち国籍法により判断され、子との親子関係については子の本国法により判断されます。
認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件も必要となります。
国籍法二条一項、二項、三項に該当しない場合、例えば出生の時に両親が婚姻状態にない間柄から生まれた子のような場合は、出生による国籍取得の場合にあたりません。
このような場合は、国籍法三条による届出による国籍取得となります。

(認知された子の国籍の取得)
第三条 父または母が認知した子で十八際未満のもの(日本国民であった者を除く。)は、認知をした父または母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。

【条文解説】
出生による国籍取得には年齢制限があり、認知の時で十八歳未満に限られています。
十八歳以上になると国籍法三条による届出による国籍取得は出来ません。
この場合は届出による国籍取得ではなく、国籍法4条~9条に定めにあるように帰化により
国籍取得を図ることになります。

帰化の手続きについてはこちらで解説しています。

以上のように外国人の子が日本国籍を取得するには大変複雑で困難な手続きとなります。
外国人の子の日本国籍を取得したい場合、専門家である弁護士・行政書士のサポートを得ることは、子の日本国籍取得の可能性を高めるうえで大変有効です。

外国人の子の日本国籍取得をお考えの際は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。

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国籍法11条1項と在留資格・帰化について

2024-06-25

日本人が自分の意思で他の国の国籍を取得したらどうなるのか?

架空の事例です。
日本在住のBさん、東京都在住。A国に本社のある外資系IT企業G社日本法人に勤務しています。
上司を含め職場の多くがA国籍であることから、自分もA国籍である方がなにかと都合がよいだろうと考え、特に深い考えはなく数年前にA国籍を取得しました。
A国籍を取得してからしばらくして、とあることがきっかけで自分の戸籍を取り寄せたところ自分が戸籍から除籍されているのがわかりました。
これはいったいどういうことなのか、Bさんにはなぜ自分が戸籍から除籍されているのか全く身に覚えがなかったのですが、
数年前に仕事の都合でA国籍を取得したことを思い出しました。
今は仕事で忙しく、自分がA国籍を取得していた事実をすっかり忘れていました。
戸籍から除籍されているBさんは、このまま日本国民として暮らしていけるのでしょうか?
Bさんは海外旅行の時、日本のパスポートを使用できるのでしょうか?
そもそもBさんは日本人なのでしょうか?

解説

関連条文として:国籍法11条1項
「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
日本国民が自己の意思によって外国籍を取得した場合は、外国籍を取得すると同時に日本国籍を喪失します。
このように日本国籍喪失を認める最も大きな理由として、国籍単一の原則を実現するために重国籍の発生を防止することにあります。

自己の意思により外国籍を取得した場合に日本国籍を失うことを知らなかった場合でも日本国籍は失われるのか?が問題となりますが、国籍法ではこの点についてどのように扱っているのかというと、本人の国籍喪失の意思があるか否かにかかわらず日本国籍は失われる、としています。
自己の意思で日本国籍を喪失させる意思はなくとも、他の国籍を取得したと同時に日本国籍は喪失されるという扱いをしています。

Bさんの事例のように、知らないうちに戸籍から除籍される事態もありうるということです。
国籍法では日本国民が外国籍を失った時は日本国籍を失うとありますが、ではどうやって国は日本国民が外国の国籍を取得した事実を把握できるのかというと実のところ国は国民が外国の国籍を取得した事実を正確に把握する方法はないということです。

日本国籍をはく奪されるかどうかは運しだいという事になります。
法務局や入管は国籍法11条1項の効果として、「実質的」に国籍が失われている状態にあるとしています。
日本国民が他国の国籍を取得すると同時に「実質的」に日本国籍を失いますが、戸籍からは削除されずにそのまま残っていることから「形式的」には国籍は残っている状態です。
実質と形式の「ずれ」が生じているので、ずれを是正する必要性が生じます。

関連条文として:戸籍法103条
「国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外にいるときは、事実を知つた日から三箇月以内)に」、国籍喪失の手続きをしなければなりません。

方法としては、本人、配偶者又は四親等内の親族が管轄の市町村役場で国籍喪失の手続きを行い、市町村役場の戸籍担当部署の担当職員が法務局の許可を得て戸籍を訂正します。
国籍法11条1項により、日本国民が他国籍を取得すると同時に日本国籍を失った場合、他国籍を取得した本人の日本での立場はどうなるのかが問題となります。

国籍法11条1項により日本国籍を失った場合は、引き続き日本で生活していくためには、日本で生活する外国人として新たに在留資格を取得する必要であります。
この場合、国籍喪失届の提出が戸籍法に定められた期限内であれば、在留資格の取得(入管法第22条の2)による在留申請手続きとなります。
在留資格の取得とは、日本国籍の離脱や出生その他の事由により入管法に定める上陸の手続きを経ることなく我が国に在留することとなる外国人が、その事由が生じた日から引き続き60日を超えて日本に在留使用とする場合に必要な在留許可です。

戸籍法103条で定められた国籍喪失の届出期間を大幅に経過していた場合、例えば他国の国籍を取得してから数年が経過した場合はどうなるのかというと、この場合は在留資格の取得(入管法第22条の2)による手続きではなく、在留特別許可による手続きによることが考えられます。

海外の国籍を取得したことにより日本国籍を失った状態で日本に滞在していることでオーバーステイ状態と判断され、オーバーステイの状態から新たに在留資格を取得する在留特別許可の方法で在留資格を取得することになります。

日本国籍に戻りたいときは、在留許可を取得してから帰化申請手続きを行うことになります。

このように国籍法11条1項と在留資格取得・帰化の関係は非常に複雑です。
日本で生活しているが、他国の国籍を取得したことにより日本国籍を失って困っている方、
他の国の国籍を取得したことによりいつ日本国籍が失われるのか不安に感じている方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
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2024年6月からの入管法改正部分について

2024-06-20

2024年6月施行の入管法改正部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

入管法改正の柱

2023年5月に
(1)保護すべき者を確実に保護
(2)送還忌避問題の解決
(3)収容を巡る諸問題の解決
の3つを柱とする入管法の改正が行われました。

今年の6月から,改正された新しい入管法が施行されます。


昨年度の入管法改正では、「(2)送還忌避問題の解決」に向けた改正が大きくマスコミに取り上げられました。
その内容として、現行法上難民認定申請中は、何度でも一律に送還が停止する(送還停止効)ところ、その例外規定が設けられ、3回目以降の難民申請者、3年以上の実刑前科者、テロリスト等と列挙された者について、送還停止効の例外を設けて3回目以降の申請の場合、「相当の理由がある資料」を提出しなければ送還停止効を認めずに日本から本国に送還とするというものです。

この改正については多くの反対意見があり、特に3回目以降の難民申請者に対して「相当の理由がある資料」がなければ送還停止効を認めないという改正については、迫害され難民として避難した者を迫害した地域に再度送り返すものとして人権上重大な問題があるとの強い反対意見がありました。

本ブログでは「(2)送還忌避問題の解決に向けた法改正」よりは注目度は低いものの入管法改正の大きな3つの柱の一つとして重要度の高い「(3)収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正について」解説します。

収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正の目的

「収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法改正の目的」として以下3つの目的があります。
(1)収容に代わる監理措置
(2)仮放免の在り方の見直し
(3)適性な処遇の実施、の3つです。

収容に代わる監理措置にはどのようなものがあげられるかというと、
・監理人の監理の下で収容しないで退去強制手続きを進める措置の実施
・個別事案ごとに、逃亡のおそれに加え、収容により本人が受ける不利益も考慮し、収容か監理措置かを判断
・逃亡の防止に必要な場合に限り保証金を納付
・被収容者につき、3か月ごとに収容の要否を必要的に見直す
というものがあげられます。

「収容に代わる監理措置」の規定が設けられた理由

現在の入管法の規定では、退去強制手続の過程において、容疑者が入管施設に収容されることがあり、
「退去強制事由に該当すると思われる場合に収容する収容令書による収容(39条1項)」、収容令書による入管施設への収容は、行政処分の中でも身体の拘束を伴う最も厳しい処分の一つです。

このように過酷な処分を緩和する手段として、法39条1項に該当する場合でも、収容令書による収容に代わり、あえて収容せずに退去強制手続きを進めるための方策として、収容に代わる監理措置が設けられました。

次に「監理措置」の規定について条文から運用と手続きの内容ついて条文を見てみます。

オーバーステイ等の事由により退去強制手続の対象となった者をを入管施設に収容する代わりに、親族や知人など、被退去強制手続き者本人の監督を承諾をしている者を「監理人」として選び(44条の3)、彼らの監理の元で逃亡等を防止しつつ、収容しないで退去強制手続を進めます。
形式上は「原則収容」となっている入管法の規定を改め、個別事案ごとに主任審査官が、被退去強制者の請求又は職権で被退去強制手続き者の逃亡、不法就労活動の程度に加え、本人が受ける不利益の程度も考えたうえで、収容の要否を見極めて収容か監理措置かを判断します(44条の2第6項)。

報酬を受ける活動の許可として、主任審査官は、「被監理者の生計を維持するために必要であって、相当と認めるときは、被監理者の申請により、監理人の監理の下で、被監理者が雇用契約に基づいて報酬を受ける活動を行うことを許可することができます。
生活の安定を与えることによって、不必要な収容及び長期収容を防止するという趣旨です。

注意すべきポイントとして、報酬を受ける活動の許可は退去強制令書による収容の場合は認められていません。理由として、退去を強制すべきなのか、いまだはっきりしない段階にある者に対してある程度の「利益」を認めたものということが挙げられます。

保証金(44条の2第2項及び6項)保証金は、監理措置に付される者による逃亡又は証拠隠滅の防止に必要と認めるときは、300万以下の額の保証金を納付させることができるとされています。
監理措置の取消し(44条の4)期限までに保証金の納付がない、必要な時に代わりに選定されるべき監理人がいない、逃亡・証拠隠滅の事実又はそうすると疑うに足りる相当の理由がある、許可を受けずに報酬を伴う活動をしている等の事由があったときは、主任審査官は、監理措置を取消すことができるものとされました。

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二重国籍の問題とは

2024-06-18

二重国籍について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

次のような報道がありましたので,それを基に解説をします。

国籍はく奪条項違憲訴訟 最高裁判決

みずからの希望で外国の国籍を取得すると、日本国籍を失い、二重国籍が認められない国籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の訴えを退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
日本の国籍法は、外国の国籍をみずからの希望で取得した場合、日本国籍を失うと規定していて、二重国籍を認めていません。
国籍法の規定が、憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の上告を退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。これについて、スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った人など、8人は「意思に反して国籍を奪う法律の規定は個人の尊重を定めた憲法に違反し、無効だ」と主張して、国に日本国籍があることの確認と賠償を求めました。
2審の東京高等裁判所は今年2月、「複数の国籍を認めると、どの国が個人を保護するかをめぐって国家間の摩擦が生じたり、納税や兵役などの義務について矛盾が生じたりするおそれがある。
国籍法の規定は、その原因となる二重国籍をできるかぎり防ぎつつ、国籍を変更する自由を保障していて合理的だ」として、1審に続いて憲法違反ではないと判断して、訴えを退けました。
原告側は上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の岡正晶裁判長は、2日までに上告を退ける決定をし、国籍法の規定は「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
「二重国籍認めないのは“憲法に違反せず” 上告退け確定 最高裁NHK 2023年10月2日 17時52分」

この裁判は外国籍を取得すると日本国籍を失うとする国籍法の規定は憲法に違反すると原告側が裁判所に訴えた事件です。争点となった国籍法は国籍法11条1項です。
では国籍法11条1項の条文を見てみます。

〔国籍の喪失〕
第11条 日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、日本の国籍を失う。

「自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、」とはどのような状況かというと、例えば日本人がアメリカにある企業に就職した。あるいは科学者等がアメリカの大学に研究目的で渡米して、アメリカの土地柄や会社、研究所が自分に合っていた等の理由で、最初はアメリカの永住権を取得して、そのうちアメリカで市民権を得たいのでアメリカ国籍を取得するといったことが考えられます。
日本人がアメリカ国籍を取得するとどうなるかというと、国籍法11条1項の手続に従うと、アメリカ国籍を取得すると自動的に日本の国籍を失います。自動的に失うとはどのような意味かというと
アメリカ国籍を取得するのと同時に日本国籍を失うということです。

この場合日本国籍を失っていても日本の戸籍簿に反映されているわけではないので、「実質的に失われている」と表現されます。
アメリカの国籍を取得していながら同時に日本の国籍も保持しておきたいとするのは認めません、
いわゆる二重国籍は認めませんというのが国籍法11条1項の趣旨です。

この場合、自分は日本国籍を失う意思はなかった。日本国籍を失うのならあえてアメリカ国籍を取得することはなかったと言い張ってもそれは後の祭りとなります。
法務省側から言うと、国籍法11条1項に「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」と書いてあります。
法律で書いてあることに気が付かないのはあなたの責任で、こちらではきちんと法律に従った運用をしています。と言う見解です。
今問題になっているのは、国籍法11条1項の存在を知らず外国の国籍を取得したことで、自分の知らないうちに日本国籍を失った元日本人の方たちが少なからず実在していることです。
ここでは日本のパスポートの使用がどうなるのかということや、そもそも自身の日本人であるというアイデンティティはどうなっているのかが問題となってきます。
国籍法11条1項の問題は二重国籍に関する問題ですが、外国人が日本国籍を取得する場合の方法として帰化があります。

外国人が日本国籍を取得する場合と日本人が外国籍を取得する場合では扱いが異なります。
外国人が日本に帰化をすると日本に帰化をした外国人は元の国の国籍を離脱しなければ二重国籍となりますが、国籍法では帰化をした日本国籍取得者に本国での国籍を離脱することを強制する手続きは取っていません。
あくまで本国の国籍を離脱するか否かは自身の判断にゆだねられます。それゆえ日本国籍と本国の国籍の二重国籍が発生する余地が生じます。
しかしながら日本人が海外で外国の国籍を取得すると自動的に日本国籍を失うので、二重国籍が生じる余地はない、ということになっています。
国籍法第11条1項の規定は、日本人が海外国籍を取得した場合、自動的に日本国籍を喪失させる規定ですが、本人が例えこの条文を知ってても知らなくても(国籍法11条1項を知らないことに過失がなくても)外国籍を取得した日本国籍者は外国籍を取得した瞬間に日本国籍を失い外国人であることが確定されるというわけです。
せめて外国国籍を取得したことをもってあなたは日本国籍を失いました、と法務局から通知でもあればいいのですが、現状ではそれもありません。

従って外国の大使館や海外の外資系企業に勤務していて、周囲がみんな外国籍だから自分も周囲の人と同じ国籍を取得してみようかな、くらいの気持ちで海外にいる間にその国の国籍を取得して、しばらくたって海外の国籍を取得したことも忘れたころに日本に帰国すると、いつのまにか自分が知らない間に日本国籍を失っていた、ということもあり得るわけです。
自分はずっと日本人と思っていたのに知らないうちに日本国籍を失っていてなぜか外国人となりしかも日本にいる間は外国人として在留資格を取得していないので不法滞在状態になっているという、
これまで想像すらしていなかった恐ろしい現実に直面する危険性があるという事です。このように日本人が他の国籍を取得するという事は、同時に日本国籍を失う事と直結するということです。
海外の国籍の取得を希望する方は、是非国籍法11条1項について覚えておくとよいと思います。
日本国籍の喪失に関わる極めて重要な規定となっています。

国籍に関してお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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外国人が日本で起業する場合,ビザはどうなる?

2024-06-13

外国人が日本で会社を設立して事業を開始したいときにどのような手続きが必要となるかについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

起業のためのビザ

定住、永住、日本人の配偶者等の身分による在留資格の場合を除き、外国人が日本国内で会社を設立して事業を始めるためには在留資格が必要です。

外国人が日本国内で起業を行い会社を設立して事業を行う際に必要となる在留資格として「経営・管理」があります。
この在留資格は事業の経営・管理業務に外国人が従事することができるようにするために設けられました。「経営・管理」の在留資格に該当する範囲として以下3つあります。

1.本邦において事業の経営を開始してその経営を行い又は当該事業の管理に従事する
活動
2.本邦において既に営まれている事業に参画してその経営を行い又は当該事業の管理に
従事する活動
3.本邦において事業の経営を行っている者(法人を含む)に代わってその経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動

外国人が新たに日本で会社を設立して事業を行う場合は1に該当します。

外国人の会社設立について

日本の会社の種類として、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社の4種類があります。
合名会社、合資会社は会社の債務に対して直接無限責任を負うメンバーが必要となり、
外国人が国内で設立する会社として一般的ではなく、株式会社、合同会社のどちらかの会社の設立となるのが一般的です。
ここでは日本国内で最も数の多い株式会社の設立について「経営・管理」の在留資格取得の観点からポイントとなる点について解説します。

外国人が日本で会社を作って事業を行う場合に問題となるのが、事業所の確保と会社の設立です。
株式会社設立の場合、会社を作って事業を開始したい方が発起人となり会社設立の手続きを行います。この発起人は外国人でもなれるのかですが、発起人については国籍、住所に特に制限はなく外国に住んでいる外国人でも発起人になれます。

会社設立に際して必要な書類で発起人のサインがいる場合、海外に住んでいる発起人あてに書類を郵送してサインをしてもらうことになります。この場合発起人のサインには公的な証明として、本国でのサイン証明書等の発行が必要となります。

またそのサイン証明書が本国の言語で書かれている場合は日本語に翻訳も必要です。
以下、外国人が会社を設立して在留資格「経営・管理」を取得する際の疑問点をQ&A形式で解説します。

Q 外国人の発起人だけの場合、会社設立は可能か?

発起人の住所に関しては法令上制限がなく、外国人だけで会社設立手続きは可能です。
しかしながら発起人が資本金を払い込む際に発起人の代表者の銀行口座で払い込む必要があり、
外国人が日本の金融機関で口座を開設するには在留資格と住民票が必要です。
海外に住んでいて日本に在留資格のない外国人はそもそも日本の住民票を取得していないため、日本国内の銀行口座を開設するのは出来ず、事実上海外に住む外国人の発起人だけで会社を設立するのは困難です。
この場合は日本に銀行口座のある発起人を発記人の代表者として、その発起人の銀行口座に資本金を払い込む方法を取ることで対応できます。
外国人が在留資格「経営・管理」を取得するためには、規模の要件として常勤2名以上の雇用又は500万以上の投資を行うことが求められますが、
株式会社設立による場合は、発起人が500万円以上を資本金として払い込むことでこの要件を充足することができます。

Q 外国人は取締役に就任できるか?

海外に住む外国人は日本にある会社の役員に就任できます。
この場合に公的な機関が発行したサイン証明書と日本語翻訳文が必要な場合があります。

Q 会社事業所について

外国人が「経営・管理」の在留資格を取得して日本国内で事業を行うためには事業所が必要となり、
この事業所は居住用の賃貸マンションやアパートではなく、
事業用の事務所として独立した区画であることが求められます。
外国人が事業用としてマンション等を所有していれば別ですが、通常は事業用の部屋を借りることが一般的であり、在留資格のない外国人が果たして事業用事務所を借りることができるかが問題となります。

この場合は資本金の払込みの場合と同様既に日本に居住している発起人に事業用事務所を借りてもらうことで対応すること可能です。
以上より外国人が単独で会社設立のための資本金の払込みや事業用事務所を借りることは、日本国内のパートナーが不在の場合事実上困難ということになります。

Q 外国人が日本でのパートナーなしで日本で会社設立を行い在留資格「経営・管理」を取得するにはどのような方法があるか?

この場合,外国人創業人材受入促進事業の活用としてInvest ToKyoの活用が考えられます。

「外国人が日本で創業する場合、在留資格「経営・管理」を取得する必要があります。
この在留資格を取得するためには、①入国前に事務所の開設に加え、②常勤2名以上の雇用又は500万以上の国内での投資等の要件を満たしている必要があります。
このため外国人が国内のパートナーなしに、一人で創業することは極めて困難となっています。

しかし,東京都の特区制度では、入国時の出入国在留管理局(入管)の審査前に、東京都が事業計画等を確認することで、①、②の要件が猶予され特例的に6か月間の在留資格「経営・管理」が認められます。

参考 Invest ToKyo HP

Invest Tokyoは外国人の東京での創業をスムーズに行うために、東京都が独自に支援を行うものです。国家戦略特区事業として東京都が独自に行うものです。

Invest ToKyoを活用した場合の在留資格「経営・管理」新規取得の流れについて

東京都で創業を希望する外国人(申請者)がビジネスコンシェルシュ東京(BDCT)赤坂窓口に申請書類一式を提出→東京都が確認申請→審査が通れば申請者に「創業活動確認証明書」が交付される→申請者が入管に「在留資格認定証明書」交付申請を行う→審査が通れば「在留資格認定証明書」が交付される。→日本入国時に在留資格「経営・管理」(6か月)の在留カードが交付される。
→入国後の6か月で①事務所の開設、②常勤2名以上の雇用又は500万以上の国内での資本金・投資等の要件の2つを満たせば良い。

外国人起業活動促進事業には経済産業省で行うものもあります。
この場合の在留資格は特定活動(44号)となります。
外国人起業活動促進事業は東京都以外にも、富山県、京都府、愛知県、岐阜県、兵庫県、三重県、北海道等の都道府県や大阪市、浜松市、加賀市、横浜市等でも行われています。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、外国人の日本国内での創業活動を希望する外国人の在留資格取得手続きを行っております。
海外に住む外国人で日本国内で事業活動をしたいがどうしていいかわからなときは是非ご相談ください。

永住許可申請について

2024-06-11

永住資格許可申請について、あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

永住者の在留資格とは、在留活動に制限がなく、在留期限も制限のない在留資格であり、日本で暮らす外国人が生涯を日本に生活の本拠において暮らしていくことが想定されている在留資格です。

永住許可の要件

永住許可の要件として以下(1)から(3)までの要件があります。

(1)素行が善良であること
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格 (在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)
又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)
を適正に履行していること。
ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
※ ただし、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子である場合には、(1)及び(2)に適合することを要しない。
 また、難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けている者の場合には、(2)に適合することを要しない。

要件について解説

(1)素行が善良であること

素行善良要件と呼ばれます。
具体的には次のいずれにも該当しない状態を指します。
(ア)日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられた事がある者。
ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを受けることなく当該執行猶予の期間を経過し、
その後更に5年を経過したときは、これに該当しないものとして扱う。
(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者。
(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等素行善良と認められない特段の事情がある者。
(ア)(イ)(ウ)ともに普通に生活していれば特に問題になることはないでしょう。

(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

独立生計要件といいます。
生活保護を受給しておらず、現在及び将来においていわゆる自活をすることが可能な状態であることです。
独立生計要件は必ずしも申請人自身が具備している必要はなく、申請人が配偶者等とともに構成する世帯単位で見た場合に安定した生活を続けることが出来ると認められる場合には、これに適合するものとして扱います。
申請人及び申請人の扶養者の所得及び納税状況を証明する資料が求められます。
住民税の納付状況を明らかにする資料として住民税の課税(非課税)証明書及び納税証明書が必須の提出書類となります。
・日本人、永住者又は特別永住者の配偶者又は子は直近3年分
・日本人、永住者及び特別永住者の実子の場合は、直近1年分
・「定住者」就労資格又は「家族滞在」の場合直近5年分の申請人及び申請人の扶養者の所得及び納税状況を証明する資料が必要です。
納税については滞納がないことが必要です。

収入について

同一世帯で共働きの場合、申請人の夫又は妻の収入もカウントされます。
永住申請手続きでの最近の取り扱いとして、近年永住審査における申請人の収入の判断基準が上がってきており、収入の基準として日本人の平均年収程度まで求められるようです(出入国在留管理局ごとで基準に差があるかもしれません)。

最近の永住審査では税金の滞納や社会保険の支払いは当然のこととして、特に申請人の収入を大変重要視しているように感じます。
総じて永住許可のハードルが年々上昇しているのは間違いありません。
社会保険の加入については、直近2年分の社会保険の加入履歴が求められます。
ただし、日本人、永住者又は特別永住者の実子又は特別養子に該当する人は直近1年間です。注意すべき点として社会保険加入について、
直近2年間の社会保険加入確認対象期間において、途中未納があるのに永住申請をした場合に、新たに未納した分を追納しても有効にはならず、
追納が完了したのちの新たな確認対象期間で未納がない状態を証明する必要があります。要するに1からやり直しということですね。

(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

ア 原則として引き続き10年以上日本に在留していることが必要です。
但しこの期間のうち就労資格または居住資格をもって引き続き5年以上在留していることが必要です。
原則10年の特例として
(1)日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。
その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
(2)「定住者」の在留資格で5年以上継続して本邦に在留していること
(3)難民の認定又は補完的保護対象者の認定を受けた者の場合、認定後5年以上継続して本邦に在留していること
(4)~(7)
イ について特に解説はありません。
ウ について現在最長の在留期間は5年ですが、3年の在留期間でも永住申請ができるように運用されています。
最近の永住申請において注意すべきことについて
近年永住許可の取得が困難になっており、特に独立生計独立要件の審査が厳しくなってきています。この中でも収入要件のハードルが上がっています。
税金の滞納がないことはもとより社会保険(国民年金及び厚生年金・健康保険及び国民健康保険)は加入は義務とされ、
永住申請の場合は直近2年分の支払い納付状況について完納していることが求められるので、直近2年間で未納期間がある場合は、完納してから永住申請しましょう。
できるだけ収入を増やすことも永住審査においては重要なポイントとなります。

以上、あいち刑事事件総合法律事務所が永住許可申請について解説しました。

永住許可に関しては出入国管理局が公表しているガイドライン(リンクはこちらから)もありますので,そちらも参考にしてください。

永住許可申請についてご不安なことや分からないことがある方は,こちらからお問い合わせください。

他人名義のパスポートによる不法入国

2024-06-06

他人名義のパスポートによる不法入国について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

事例

※以下の事例はフィクションです。

F国出身のAさんは今から15年前に、F国から「興行」の在留資格で来日しました。
当時「興行」ビザでF国から日本に働きに来る人が大勢いました。
F国から「興行」ビザで来日した人の多くが、日本の各都道府県にあるパブやクラブでショーをしたり、歌手として、時には接客として働きました。
Aさんは自分が日本で働くために必要な手続きについてAさん自身がよくわかっておらず、日本への在留申請手続きは全てブローカーに任せていました。
ほどなくしてAさんはクラブで働き始め、時々お客さんの席に同席して接客をすることもありました。
Aさんがお店で働き始めてからしばらくして、お店の常連だった日本人のBさんと親しくなり、二人は知り合ってから半年後に結婚しました。
結婚してから今年で10年がたち、AさんとBさんの間には男の子と女の子が出来ました。
2人の子供たちは日本国籍です。Aさんはやさしい夫と2人の子供たちに囲まれて大変幸せな毎日を過ごしています。そんなAさんですが、Aさんには人には言えない悩みがありました。
実はAさんの本国での名前とパスポートや在留カードの名前が違うのです。
Aさんが初めて日本に来日したときはまだ19歳でした。

当時Aさんは日本の法律では未成年になることから、ブローカーがAさんが日本で
「タレント」として働けなくなることを恐れ、2つ年上で当時21歳のいとこの名前を使ってパスポートを作ったのでした。Aさんも自分のパスポートの名前と誕生日が違うことについて、これも来日して働くための方法だろうと特に気にすることはありませんでした。
最近F国にいるいとこから「海外に住んでいる男性と結婚して海外で暮らします。パスポートを作るので私の名前を返してください」と連絡がありました。
Aさん自身はいとこの幸せを祝福する気持ちはやぶさかではありませんが、いとこに名前を返して自分が本名になると、自分がいとこの名前を使って不正に日本に入国したことが入管や警察に発覚してしまうかもしれません。そうなると自分の在留資格が取消されてF国に強制送還されるかもしれないことをAさんは心配しています。Aさんは今の幸せな生活を失いたくありません。
いとこは「Aさんが名前を返してくれないなら、入管に報告します」とまで言っています。
Aさんは一体どうすればいいのでしょうか?

Aさんは他人名義のパスポートでパスポートで入国していますが、このことは一体何罪にあたるのでしょうか?出入国管理及び難民認定法の条文には何と書いてあるでしょう?

外国人の来日について

出入国管理及び難民認定法(以下法)
第3条  次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に入ってはならない。
一 有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)

以下,条文の解説をします。

日本に入国する外国人が、自分の旅券(パスポート)ではなく他人名義の旅券を所持している場合には、その旅券が旅券自体としては有効なものであっても、当該外国人は、「有効な旅券」を所持していることにはならないとされています。

いとこの名義を使ったパスポートで日本に入国したAさんは、法3条違反となります。
それでは、他人名義のパスポートで入国した場合はどれくらいの罪になるのでしょうか?
法文では,次のように規定されています。

法第70条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
一 第3条の規定に違反して本邦に入った者

Aさんのいとこ名義のパスポートでの入国は、入管法3条違反であり、「3年以下懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科」の刑罰が規定されています。
また、不法入国の場合は、法70条第2項により公訴時効がありません。
従ってAさんは不法入国で何年たっても刑事罰に問われる可能性があります。

在留資格への影響

Aさんは来日当初、「興行」の在留資格でした。
その後Bさんと結婚して「日本人の配偶者等」に変更になり、その後は永住資格申請をして申請が認められ、現在の在留資格は「永住者」です。
この場合、Aさんの「永住者」の在留資格はどうなるのでしょうか?

法律上次のような規定があります。

【在留資格の取消し】法22条の4
法務大臣は、別表第一又は別表第二の上覧の在留資格をもって本邦に在留する外国人
(第61条の2第1項の難員の認定を受けている場合を除く。)について、次の各号に掲げる事実が判明したときは、法務省令で定める手続きにより、当該外国人が現に有する在留資格を取消すことができる。
一 偽りその他の不正の手段により、当該外国人が第5条第1項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第1節又は第2節の規定による上陸許可の証印(第9条第4項の規定による記録を含む。)又は許可を受けたこと。

他人名義によるパスポートでの入国は法3条違反となり、法3条違反は法第5条1項第八号ハに該当します。
在留資格の取消しを定めた法22条の4第1項1号に法第5条1項第八号ハが含まれるので、Aさんの現在の在留資格である「永住資格」は取消しの対象となります。
また、Aさんの他人名義のパスポートによる不法入国は法第24条第1項1号により、退去強制の対象となります。

入管当局も他人名義のパスポートの使用については監視を強め、摘発に積極的になっています。
参考:出入国管理局 他人になりすまして旅券(パスポート)を不正に取得する事案が発生していることから、不正取得防止のため審査を強化します

まとめ

まとめるとAさんはいとこ名義のパスポートで入国したことにより、現在の在留資格である法22条の4第1項第1号から「永住資格」の取消し、法24条第1項第1号により退去強制、法70条第1項第1号により3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万以下の罰金、場合によっては懲役刑と罰金刑の両方を受ける可能性があります。

結論として、Aさんはどうしたらいいのでしょうか?
Aさんの他人名義での不法入国が入管に報告されると、Aさんは刑事罰の対象となっていることから逮捕・起訴され有罪判決を受けるかもしれません。仮に逮捕・起訴されなくても行政処分として在留資格は取消され、強制送還されることは十分考えられます。
そうなるとAさんがこれまで日本で築き上げてきた生活は根底から覆ってしまう恐れがあります。
このままAさんは何もせず無事に時間が過ぎ去るのを待つのも一つの方法ですが、いつか予期せぬことで不法入国が警察や入管に発覚することは十分に考えられます。
Aさんにとって一番ベストな選択は、入管手続きを専門にしている弁護士・行政書士に相談してみることです。
Aさんのケースは事実と法(出入国及び難民認定法)が複雑に絡みあっており、これを1人で解決するのは非常に困難です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では不法入国からの在留資格再取得も取り扱っております。他人名義のパスポートを使用して不法入国され、現在の在留資格についてお困りの方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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上陸拒否の特例

2024-06-04

上陸拒否の特例について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.上陸拒否の特例とはなにか。

一定の類型の上陸拒否事由に該当する(出入国管理及び難民認定法第5条に列挙されています)者であったとしても、法務大臣が再入国の許可を与えた場合その他法務省令で定める場合において、相当と認めたときは、当該違反事由のみによっては上陸を拒否しない(他に違反事由がなければ日本への上陸を認める)ことができます。

この特例を上陸拒否の特例といいます(出入国管理及び難民認定法第5条2項)。
たとえ上陸拒否に該当する者であっても上陸を認めるだけの相当の理由がある場合は、日本への上陸を希望する当該外国人の上陸を認められる場合があるということを定めたものです。

2.上陸拒否事由とは?

上陸拒否事由とは、入管法第5条に規定される事由で、外国人が当該事由のいずれかに該当する場合は、上陸拒否の対象となります。
各主権国家が、その国家にとって 好ましからざる外国人の入国を禁じ又は適当と認める条件を具備する外国人のみの入国を許可する権限を有することは国際法上確立した原則であり、我が国でも、公衆 衛生、公の秩序、国内の治安等が害されるおそれがあると認める外国人について、上陸拒否事由に該当する場合は上陸を拒否することとしています。

3.上陸拒否の対象となる人

過去に不法残留等を理由に退去強制された者や出国命令を受けて出国した者は、一定期間、我が国に上陸することはできません。上陸拒否期間は下記のとおりです。
① 退去強制された者で、その退去の日前に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがないものの上陸拒否期間は、退去強制された日から5年
② 退去強制された者で、その退去の日前に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがあるものの上陸拒否期間は、退去強制された日から10年
③ 出国命令により出国した場合の上陸拒否期間は、出国した日から1年
④ 日本国又は日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役又は禁錮等に処せられた場合等の上陸拒否期間は無期限となります。

4.上陸特別許可の特例の申請と申請書類

上陸拒否事由に該当する外国人が、日本に上陸を希望する場合、在留資格認定証明書の交付申請により在留許可申請を行います。
管轄の地方出入国在留管理局への申請により審査が行われることとなりますが、審査の結果とし て同証明書が交付され、在外公館において有効な査証を取得した場合は、当該外国人が我が国の出入国港で上陸申請を行った際に、当該上陸拒否事由に該当すること以外に上陸の条件に適合しないものがなければ、上陸特別許可の手続を経ずに上陸を認められることとなります。

5.実際に上陸特別許可を受けた事例の紹介

出入国在留管理庁からから出ている上陸特別許可事例によると、退去強制後の日本人配偶者との婚姻による場合に上陸特別許可が出ているケースが見られます。
日本国内で何らかの犯罪を行った結果、1年以上の有罪判決を受けて無期限上陸拒否となったケースで上陸特別許可が認められたケースもありますが、いずれも執行猶予がついている事例であり、実刑判決を受けて帰国してから上陸特別許可で認められた事例はこれまでのところ見当たりません。

6.上陸特別許可の重要性と専門家のアドバイス

上陸特別許可(上陸拒否の特例)は、出入国管理及び難民認定法の規定によると、上陸拒否に該当する外国人が日本への上陸を希望する場合、

原則として上陸を認めない、

例外として上陸を認める「相当の理由」が認められる場合に上陸を認める場合がある

というように通常の在留許可申請と違い「原則」と「例外」が逆転しており、上陸特別許可を認めてもらうには申請側が上陸を認めてもらうに足りる「相当の理由」を証拠となる根拠となる資料とともに立証していく必要があります。

現実には上陸特別許可での在留資格の取得は大変難しい状況となっており、上陸特別許可の申請には大変高度な書類作成能力と事案の判断分析能力が必要となります。
上陸特別許可の申請を考えている方は、可能であれば入管業務を専門に取り扱う弁護士・行政書士のアドバイスを受けてみることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、上陸特別許可の案件で在留許可を獲得した実績があります。                
上陸拒否を受けていて日本への上陸が認められずお困りの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所入管部門までお問合せください。

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