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外国籍の子供が日本国籍を取得する方法
外国籍の子が日本国籍を取得する方法について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
国籍取得のための方法
日本に在留する外国人が日本国籍を取得する方法には、1出生 2届出 3帰化の3つの方法があります。
国籍取得に関しては国籍法に定めがあり、出生による取得に関しては国籍法2条、届出による取得は国籍法3条・17条、帰化による取得は国籍法4条~9条にそれぞれ規定されています。
出生によって国籍を取得する場合
外国籍の子が出生により日本国籍を取得する方法として、国籍法2条では以下のように定めています。
(出生による国籍の取得)
第二条 子は、次の場合には、日本国民とする。
一 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
二 出生前に死亡した父がした父が死亡の時に日本国民であったとき
三 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しない
とき
【条文解説】
一項、二項は父母両系血統主義、三項で補充的に生地主義を取り入れています。
国籍法二条でいう「父」又は「母」とは、子の出生の時に、子と法律上の親子関係がある父又は母をいいます(嫡出子)。
従って、法律上の親子関係にない父又は母から生まれた子(非嫡出子)の場合については適用がなく、
母の胎内にいる間に「父」又は「母」から認知されている場合は出生によって日本国籍を取得しますが、
出生後に「父」又は「母」から認知された場合は、出生の時に法律上の親子関係があったことにはなりませんので、出生により日本国籍を取得することはありません。
認知する場合
次に認知について解説します。
1.認知の【届出条件】として
(1)日本人の父が嫡出でない子の真実の父であり、自己の意思によって届出をすること
(2)子の出生時、母が独身であったこと
注:「嫡出でない子」とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子を「嫡出でない子」といいます。
なお、母親が婚姻中に懐胎した子は婚姻関係にある夫の子と推定されます(民法772条)。認知の【届出人】は、認知する日本人父本人(代理人不可)です。
2.外国籍である未婚の母から生まれた子は母親の国籍のみ取得します。
子の国籍取得は国籍法第三条による届出による国籍取得となります。
また子の認知の際、認知に関する法の適用において、父の本国法(国籍法)と子の本国法のどちらかが適用されるかが問題となりますが、
この場合にどちらの法を適用するかについては、法の適用に関する通則法第二十九条で定められています。
法の適用に関する通則法
(嫡出でない子の親子関係の成立)
第二十九条 嫡出でない子の親子関係の成立は、父との間の親子関係については子の出生当時における父の本国法により、母との間の親子関係についてはその当時における母の本国法による。この場合において、子の認知による親子関係の成立については、認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件も備えなければならない。
2 子の認知は、前項前段の規定により適用すべき法によるほか、認知の当時における認知する者又は子の本国法による。この場合において、認知する者の本国法によるときは、同項後段の規定を準用する。
【条文解説】
嫡出でない子と父との親子関係の成立は、「父の本国法」すなわち国籍法により判断され、子との親子関係については子の本国法により判断されます。
認知の当時における子の本国法によればその子又は第三者の承諾又は同意があることが認知の要件であるときは、その要件も必要となります。
国籍法二条一項、二項、三項に該当しない場合、例えば出生の時に両親が婚姻状態にない間柄から生まれた子のような場合は、出生による国籍取得の場合にあたりません。
このような場合は、国籍法三条による届出による国籍取得となります。
(認知された子の国籍の取得)
第三条 父または母が認知した子で十八際未満のもの(日本国民であった者を除く。)は、認知をした父または母が子の出生の時に日本国民であった場合において、その父又は母が日本国民であるとき、又はその死亡の時に日本国民であったときは、法務大臣に届け出ることによって、日本の国籍を取得することができる。
【条文解説】
出生による国籍取得には年齢制限があり、認知の時で十八歳未満に限られています。
十八歳以上になると国籍法三条による届出による国籍取得は出来ません。
この場合は届出による国籍取得ではなく、国籍法4条~9条に定めにあるように帰化により
国籍取得を図ることになります。
帰化の手続きについてはこちらで解説しています。
以上のように外国人の子が日本国籍を取得するには大変複雑で困難な手続きとなります。
外国人の子の日本国籍を取得したい場合、専門家である弁護士・行政書士のサポートを得ることは、子の日本国籍取得の可能性を高めるうえで大変有効です。
外国人の子の日本国籍取得をお考えの際は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にお任せください。
国籍法11条1項と在留資格・帰化について
日本人が自分の意思で他の国の国籍を取得したらどうなるのか?
架空の事例です。
日本在住のBさん、東京都在住。A国に本社のある外資系IT企業G社日本法人に勤務しています。
上司を含め職場の多くがA国籍であることから、自分もA国籍である方がなにかと都合がよいだろうと考え、特に深い考えはなく数年前にA国籍を取得しました。
A国籍を取得してからしばらくして、とあることがきっかけで自分の戸籍を取り寄せたところ自分が戸籍から除籍されているのがわかりました。
これはいったいどういうことなのか、Bさんにはなぜ自分が戸籍から除籍されているのか全く身に覚えがなかったのですが、
数年前に仕事の都合でA国籍を取得したことを思い出しました。
今は仕事で忙しく、自分がA国籍を取得していた事実をすっかり忘れていました。
戸籍から除籍されているBさんは、このまま日本国民として暮らしていけるのでしょうか?
Bさんは海外旅行の時、日本のパスポートを使用できるのでしょうか?
そもそもBさんは日本人なのでしょうか?
解説
関連条文として:国籍法11条1項
「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
日本国民が自己の意思によって外国籍を取得した場合は、外国籍を取得すると同時に日本国籍を喪失します。
このように日本国籍喪失を認める最も大きな理由として、国籍単一の原則を実現するために重国籍の発生を防止することにあります。
自己の意思により外国籍を取得した場合に日本国籍を失うことを知らなかった場合でも日本国籍は失われるのか?が問題となりますが、国籍法ではこの点についてどのように扱っているのかというと、本人の国籍喪失の意思があるか否かにかかわらず日本国籍は失われる、としています。
自己の意思で日本国籍を喪失させる意思はなくとも、他の国籍を取得したと同時に日本国籍は喪失されるという扱いをしています。
Bさんの事例のように、知らないうちに戸籍から除籍される事態もありうるということです。
国籍法では日本国民が外国籍を失った時は日本国籍を失うとありますが、ではどうやって国は日本国民が外国の国籍を取得した事実を把握できるのかというと実のところ国は国民が外国の国籍を取得した事実を正確に把握する方法はないということです。
日本国籍をはく奪されるかどうかは運しだいという事になります。
法務局や入管は国籍法11条1項の効果として、「実質的」に国籍が失われている状態にあるとしています。
日本国民が他国の国籍を取得すると同時に「実質的」に日本国籍を失いますが、戸籍からは削除されずにそのまま残っていることから「形式的」には国籍は残っている状態です。
実質と形式の「ずれ」が生じているので、ずれを是正する必要性が生じます。
関連条文として:戸籍法103条
「国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外にいるときは、事実を知つた日から三箇月以内)に」、国籍喪失の手続きをしなければなりません。
方法としては、本人、配偶者又は四親等内の親族が管轄の市町村役場で国籍喪失の手続きを行い、市町村役場の戸籍担当部署の担当職員が法務局の許可を得て戸籍を訂正します。
国籍法11条1項により、日本国民が他国籍を取得すると同時に日本国籍を失った場合、他国籍を取得した本人の日本での立場はどうなるのかが問題となります。
国籍法11条1項により日本国籍を失った場合は、引き続き日本で生活していくためには、日本で生活する外国人として新たに在留資格を取得する必要であります。
この場合、国籍喪失届の提出が戸籍法に定められた期限内であれば、在留資格の取得(入管法第22条の2)による在留申請手続きとなります。
在留資格の取得とは、日本国籍の離脱や出生その他の事由により入管法に定める上陸の手続きを経ることなく我が国に在留することとなる外国人が、その事由が生じた日から引き続き60日を超えて日本に在留使用とする場合に必要な在留許可です。
戸籍法103条で定められた国籍喪失の届出期間を大幅に経過していた場合、例えば他国の国籍を取得してから数年が経過した場合はどうなるのかというと、この場合は在留資格の取得(入管法第22条の2)による手続きではなく、在留特別許可による手続きによることが考えられます。
海外の国籍を取得したことにより日本国籍を失った状態で日本に滞在していることでオーバーステイ状態と判断され、オーバーステイの状態から新たに在留資格を取得する在留特別許可の方法で在留資格を取得することになります。
日本国籍に戻りたいときは、在留許可を取得してから帰化申請手続きを行うことになります。
このように国籍法11条1項と在留資格取得・帰化の関係は非常に複雑です。
日本で生活しているが、他国の国籍を取得したことにより日本国籍を失って困っている方、
他の国の国籍を取得したことによりいつ日本国籍が失われるのか不安に感じている方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
2024年6月からの入管法改正部分について
2024年6月施行の入管法改正部分について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
入管法改正の柱
2023年5月に
(1)保護すべき者を確実に保護
(2)送還忌避問題の解決
(3)収容を巡る諸問題の解決
の3つを柱とする入管法の改正が行われました。
昨年度の入管法改正では、「(2)送還忌避問題の解決」に向けた改正が大きくマスコミに取り上げられました。
その内容として、現行法上難民認定申請中は、何度でも一律に送還が停止する(送還停止効)ところ、その例外規定が設けられ、3回目以降の難民申請者、3年以上の実刑前科者、テロリスト等と列挙された者について、送還停止効の例外を設けて3回目以降の申請の場合、「相当の理由がある資料」を提出しなければ送還停止効を認めずに日本から本国に送還とするというものです。
この改正については多くの反対意見があり、特に3回目以降の難民申請者に対して「相当の理由がある資料」がなければ送還停止効を認めないという改正については、迫害され難民として避難した者を迫害した地域に再度送り返すものとして人権上重大な問題があるとの強い反対意見がありました。
本ブログでは「(2)送還忌避問題の解決に向けた法改正」よりは注目度は低いものの入管法改正の大きな3つの柱の一つとして重要度の高い「(3)収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正について」解説します。
収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法の改正の目的
「収容を巡る諸問題の解決に向けた入管法改正の目的」として以下3つの目的があります。
(1)収容に代わる監理措置
(2)仮放免の在り方の見直し
(3)適性な処遇の実施、の3つです。
収容に代わる監理措置にはどのようなものがあげられるかというと、
・監理人の監理の下で収容しないで退去強制手続きを進める措置の実施
・個別事案ごとに、逃亡のおそれに加え、収容により本人が受ける不利益も考慮し、収容か監理措置かを判断
・逃亡の防止に必要な場合に限り保証金を納付
・被収容者につき、3か月ごとに収容の要否を必要的に見直す
というものがあげられます。
「収容に代わる監理措置」の規定が設けられた理由
現在の入管法の規定では、退去強制手続の過程において、容疑者が入管施設に収容されることがあり、
「退去強制事由に該当すると思われる場合に収容する収容令書による収容(39条1項)」、収容令書による入管施設への収容は、行政処分の中でも身体の拘束を伴う最も厳しい処分の一つです。
このように過酷な処分を緩和する手段として、法39条1項に該当する場合でも、収容令書による収容に代わり、あえて収容せずに退去強制手続きを進めるための方策として、収容に代わる監理措置が設けられました。
次に「監理措置」の規定について条文から運用と手続きの内容ついて条文を見てみます。
オーバーステイ等の事由により退去強制手続の対象となった者をを入管施設に収容する代わりに、親族や知人など、被退去強制手続き者本人の監督を承諾をしている者を「監理人」として選び(44条の3)、彼らの監理の元で逃亡等を防止しつつ、収容しないで退去強制手続を進めます。
形式上は「原則収容」となっている入管法の規定を改め、個別事案ごとに主任審査官が、被退去強制者の請求又は職権で被退去強制手続き者の逃亡、不法就労活動の程度に加え、本人が受ける不利益の程度も考えたうえで、収容の要否を見極めて収容か監理措置かを判断します(44条の2第6項)。
報酬を受ける活動の許可として、主任審査官は、「被監理者の生計を維持するために必要であって、相当と認めるときは、被監理者の申請により、監理人の監理の下で、被監理者が雇用契約に基づいて報酬を受ける活動を行うことを許可することができます。
生活の安定を与えることによって、不必要な収容及び長期収容を防止するという趣旨です。
注意すべきポイントとして、報酬を受ける活動の許可は退去強制令書による収容の場合は認められていません。理由として、退去を強制すべきなのか、いまだはっきりしない段階にある者に対してある程度の「利益」を認めたものということが挙げられます。
保証金(44条の2第2項及び6項)保証金は、監理措置に付される者による逃亡又は証拠隠滅の防止に必要と認めるときは、300万以下の額の保証金を納付させることができるとされています。
監理措置の取消し(44条の4)期限までに保証金の納付がない、必要な時に代わりに選定されるべき監理人がいない、逃亡・証拠隠滅の事実又はそうすると疑うに足りる相当の理由がある、許可を受けずに報酬を伴う活動をしている等の事由があったときは、主任審査官は、監理措置を取消すことができるものとされました。
ビザ・在留資格の手続きについてお困りのことがある方は専門家にご相談ください。
お問い合わせはこちらからどうぞ。
二重国籍の問題とは
二重国籍について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
次のような報道がありましたので,それを基に解説をします。
みずからの希望で外国の国籍を取得すると、日本国籍を失い、二重国籍が認められない国籍法の規定が憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の訴えを退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
日本の国籍法は、外国の国籍をみずからの希望で取得した場合、日本国籍を失うと規定していて、二重国籍を認めていません。
国籍法の規定が、憲法違反かどうかが争われた裁判で、最高裁判所は2日までに原告側の上告を退ける決定をし、「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。これについて、スイスやリヒテンシュタインに住み、現地の国籍を取得して日本国籍を失った人など、8人は「意思に反して国籍を奪う法律の規定は個人の尊重を定めた憲法に違反し、無効だ」と主張して、国に日本国籍があることの確認と賠償を求めました。
2審の東京高等裁判所は今年2月、「複数の国籍を認めると、どの国が個人を保護するかをめぐって国家間の摩擦が生じたり、納税や兵役などの義務について矛盾が生じたりするおそれがある。
国籍法の規定は、その原因となる二重国籍をできるかぎり防ぎつつ、国籍を変更する自由を保障していて合理的だ」として、1審に続いて憲法違反ではないと判断して、訴えを退けました。
原告側は上告していましたが、最高裁判所第1小法廷の岡正晶裁判長は、2日までに上告を退ける決定をし、国籍法の規定は「憲法に違反しない」とした判決が確定しました。
「二重国籍認めないのは“憲法に違反せず” 上告退け確定 最高裁NHK 2023年10月2日 17時52分」
この裁判は外国籍を取得すると日本国籍を失うとする国籍法の規定は憲法に違反すると原告側が裁判所に訴えた事件です。争点となった国籍法は国籍法11条1項です。
では国籍法11条1項の条文を見てみます。
〔国籍の喪失〕
第11条 日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、日本の国籍を失う。
「自己の志望によって外国の国籍を取得した時は、」とはどのような状況かというと、例えば日本人がアメリカにある企業に就職した。あるいは科学者等がアメリカの大学に研究目的で渡米して、アメリカの土地柄や会社、研究所が自分に合っていた等の理由で、最初はアメリカの永住権を取得して、そのうちアメリカで市民権を得たいのでアメリカ国籍を取得するといったことが考えられます。
日本人がアメリカ国籍を取得するとどうなるかというと、国籍法11条1項の手続に従うと、アメリカ国籍を取得すると自動的に日本の国籍を失います。自動的に失うとはどのような意味かというと
アメリカ国籍を取得するのと同時に日本国籍を失うということです。
この場合日本国籍を失っていても日本の戸籍簿に反映されているわけではないので、「実質的に失われている」と表現されます。
アメリカの国籍を取得していながら同時に日本の国籍も保持しておきたいとするのは認めません、
いわゆる二重国籍は認めませんというのが国籍法11条1項の趣旨です。
この場合、自分は日本国籍を失う意思はなかった。日本国籍を失うのならあえてアメリカ国籍を取得することはなかったと言い張ってもそれは後の祭りとなります。
法務省側から言うと、国籍法11条1項に「自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」と書いてあります。
法律で書いてあることに気が付かないのはあなたの責任で、こちらではきちんと法律に従った運用をしています。と言う見解です。
今問題になっているのは、国籍法11条1項の存在を知らず外国の国籍を取得したことで、自分の知らないうちに日本国籍を失った元日本人の方たちが少なからず実在していることです。
ここでは日本のパスポートの使用がどうなるのかということや、そもそも自身の日本人であるというアイデンティティはどうなっているのかが問題となってきます。
国籍法11条1項の問題は二重国籍に関する問題ですが、外国人が日本国籍を取得する場合の方法として帰化があります。
外国人が日本国籍を取得する場合と日本人が外国籍を取得する場合では扱いが異なります。
外国人が日本に帰化をすると日本に帰化をした外国人は元の国の国籍を離脱しなければ二重国籍となりますが、国籍法では帰化をした日本国籍取得者に本国での国籍を離脱することを強制する手続きは取っていません。
あくまで本国の国籍を離脱するか否かは自身の判断にゆだねられます。それゆえ日本国籍と本国の国籍の二重国籍が発生する余地が生じます。
しかしながら日本人が海外で外国の国籍を取得すると自動的に日本国籍を失うので、二重国籍が生じる余地はない、ということになっています。
国籍法第11条1項の規定は、日本人が海外国籍を取得した場合、自動的に日本国籍を喪失させる規定ですが、本人が例えこの条文を知ってても知らなくても(国籍法11条1項を知らないことに過失がなくても)外国籍を取得した日本国籍者は外国籍を取得した瞬間に日本国籍を失い外国人であることが確定されるというわけです。
せめて外国国籍を取得したことをもってあなたは日本国籍を失いました、と法務局から通知でもあればいいのですが、現状ではそれもありません。
従って外国の大使館や海外の外資系企業に勤務していて、周囲がみんな外国籍だから自分も周囲の人と同じ国籍を取得してみようかな、くらいの気持ちで海外にいる間にその国の国籍を取得して、しばらくたって海外の国籍を取得したことも忘れたころに日本に帰国すると、いつのまにか自分が知らない間に日本国籍を失っていた、ということもあり得るわけです。
自分はずっと日本人と思っていたのに知らないうちに日本国籍を失っていてなぜか外国人となりしかも日本にいる間は外国人として在留資格を取得していないので不法滞在状態になっているという、
これまで想像すらしていなかった恐ろしい現実に直面する危険性があるという事です。このように日本人が他の国籍を取得するという事は、同時に日本国籍を失う事と直結するということです。
海外の国籍の取得を希望する方は、是非国籍法11条1項について覚えておくとよいと思います。
日本国籍の喪失に関わる極めて重要な規定となっています。
国籍に関してお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
他人名義のパスポートによる不法入国
他人名義のパスポートによる不法入国について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
事例
※以下の事例はフィクションです。
F国出身のAさんは今から15年前に、F国から「興行」の在留資格で来日しました。
当時「興行」ビザでF国から日本に働きに来る人が大勢いました。
F国から「興行」ビザで来日した人の多くが、日本の各都道府県にあるパブやクラブでショーをしたり、歌手として、時には接客として働きました。
Aさんは自分が日本で働くために必要な手続きについてAさん自身がよくわかっておらず、日本への在留申請手続きは全てブローカーに任せていました。
ほどなくしてAさんはクラブで働き始め、時々お客さんの席に同席して接客をすることもありました。
Aさんがお店で働き始めてからしばらくして、お店の常連だった日本人のBさんと親しくなり、二人は知り合ってから半年後に結婚しました。
結婚してから今年で10年がたち、AさんとBさんの間には男の子と女の子が出来ました。
2人の子供たちは日本国籍です。Aさんはやさしい夫と2人の子供たちに囲まれて大変幸せな毎日を過ごしています。そんなAさんですが、Aさんには人には言えない悩みがありました。
実はAさんの本国での名前とパスポートや在留カードの名前が違うのです。
Aさんが初めて日本に来日したときはまだ19歳でした。
当時Aさんは日本の法律では未成年になることから、ブローカーがAさんが日本で
「タレント」として働けなくなることを恐れ、2つ年上で当時21歳のいとこの名前を使ってパスポートを作ったのでした。Aさんも自分のパスポートの名前と誕生日が違うことについて、これも来日して働くための方法だろうと特に気にすることはありませんでした。
最近F国にいるいとこから「海外に住んでいる男性と結婚して海外で暮らします。パスポートを作るので私の名前を返してください」と連絡がありました。
Aさん自身はいとこの幸せを祝福する気持ちはやぶさかではありませんが、いとこに名前を返して自分が本名になると、自分がいとこの名前を使って不正に日本に入国したことが入管や警察に発覚してしまうかもしれません。そうなると自分の在留資格が取消されてF国に強制送還されるかもしれないことをAさんは心配しています。Aさんは今の幸せな生活を失いたくありません。
いとこは「Aさんが名前を返してくれないなら、入管に報告します」とまで言っています。
Aさんは一体どうすればいいのでしょうか?
Aさんは他人名義のパスポートでパスポートで入国していますが、このことは一体何罪にあたるのでしょうか?出入国管理及び難民認定法の条文には何と書いてあるでしょう?
外国人の来日について
出入国管理及び難民認定法(以下法)
第3条 次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に入ってはならない。
一 有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)
以下,条文の解説をします。
日本に入国する外国人が、自分の旅券(パスポート)ではなく他人名義の旅券を所持している場合には、その旅券が旅券自体としては有効なものであっても、当該外国人は、「有効な旅券」を所持していることにはならないとされています。
いとこの名義を使ったパスポートで日本に入国したAさんは、法3条違反となります。
それでは、他人名義のパスポートで入国した場合はどれくらいの罪になるのでしょうか?
法文では,次のように規定されています。
法第70条 次の各号のいずれかに該当する者は、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科する。
一 第3条の規定に違反して本邦に入った者
Aさんのいとこ名義のパスポートでの入国は、入管法3条違反であり、「3年以下懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処し、又はその懲役若しくは禁錮及び罰金を併科」の刑罰が規定されています。
また、不法入国の場合は、法70条第2項により公訴時効がありません。
従ってAさんは不法入国で何年たっても刑事罰に問われる可能性があります。
在留資格への影響
Aさんは来日当初、「興行」の在留資格でした。
その後Bさんと結婚して「日本人の配偶者等」に変更になり、その後は永住資格申請をして申請が認められ、現在の在留資格は「永住者」です。
この場合、Aさんの「永住者」の在留資格はどうなるのでしょうか?
法律上次のような規定があります。
【在留資格の取消し】法22条の4
法務大臣は、別表第一又は別表第二の上覧の在留資格をもって本邦に在留する外国人
(第61条の2第1項の難員の認定を受けている場合を除く。)について、次の各号に掲げる事実が判明したときは、法務省令で定める手続きにより、当該外国人が現に有する在留資格を取消すことができる。
一 偽りその他の不正の手段により、当該外国人が第5条第1項各号のいずれにも該当しないものとして、前章第1節又は第2節の規定による上陸許可の証印(第9条第4項の規定による記録を含む。)又は許可を受けたこと。
他人名義によるパスポートでの入国は法3条違反となり、法3条違反は法第5条1項第八号ハに該当します。
在留資格の取消しを定めた法22条の4第1項1号に法第5条1項第八号ハが含まれるので、Aさんの現在の在留資格である「永住資格」は取消しの対象となります。
また、Aさんの他人名義のパスポートによる不法入国は法第24条第1項1号により、退去強制の対象となります。
入管当局も他人名義のパスポートの使用については監視を強め、摘発に積極的になっています。
参考:出入国管理局 他人になりすまして旅券(パスポート)を不正に取得する事案が発生していることから、不正取得防止のため審査を強化します
まとめ
まとめるとAさんはいとこ名義のパスポートで入国したことにより、現在の在留資格である法22条の4第1項第1号から「永住資格」の取消し、法24条第1項第1号により退去強制、法70条第1項第1号により3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万以下の罰金、場合によっては懲役刑と罰金刑の両方を受ける可能性があります。
結論として、Aさんはどうしたらいいのでしょうか?
Aさんの他人名義での不法入国が入管に報告されると、Aさんは刑事罰の対象となっていることから逮捕・起訴され有罪判決を受けるかもしれません。仮に逮捕・起訴されなくても行政処分として在留資格は取消され、強制送還されることは十分考えられます。
そうなるとAさんがこれまで日本で築き上げてきた生活は根底から覆ってしまう恐れがあります。
このままAさんは何もせず無事に時間が過ぎ去るのを待つのも一つの方法ですが、いつか予期せぬことで不法入国が警察や入管に発覚することは十分に考えられます。
Aさんにとって一番ベストな選択は、入管手続きを専門にしている弁護士・行政書士に相談してみることです。
Aさんのケースは事実と法(出入国及び難民認定法)が複雑に絡みあっており、これを1人で解決するのは非常に困難です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では不法入国からの在留資格再取得も取り扱っております。他人名義のパスポートを使用して不法入国され、現在の在留資格についてお困りの方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。
帰化について
帰化について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
帰化とは何か?
帰化とは、日本国籍の取得を希望する外国人からの意思表示に対して、法務大臣の許可によって、日本の国籍を与える制度です
国籍法には法第4条から第9条までで帰化について規定されています。
まずは国籍法第四条を見てみましょう。
第四条 日本国民でない者(以下「外国人」という。)は、帰化によって、日本の国籍を取得することができる。
2 帰化をするには、法務大臣の許可を得なければならない。
第四条では、外国人は帰化により日本国籍を取得することができると規定されています。
そして帰化のためには法務大臣に許可を得なければなりません。
外国人の申請者が帰化許可申請手に始まり、帰化を許可するだけの条件がそろっているかの調査を経て、法務大臣が帰化の可否の処分を行うことで終了する一連の流れが帰化手続きになります。
帰化の一般的条件については五条で規定されています。
第五条 法務大臣は、次の条件を備える外国人でなければ、その帰化を許可することができない。
一 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
二 二十歳以上で本国法によつて行為能力を有すること。
三 素行が善良であること。
四 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によつて生計を営むことができること。
五 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によつてその国籍を失うべきこと。
六 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。
第五条は、帰化許可を希望する外国人に対して法務大臣が日本への許可を与える条件を定めたものです。
日本国と特別な関係に立たない外国人の帰化である帰化の条件を定めています。このような帰化を普通帰化といいます。
本条の1から6までの帰化に関する条件は、帰化許可の最小限の必須条件であり、これらの条件を満たしていたとしても、必ず帰化が許可されるとは限りません。次に条文の内容について確認していきます。
1 住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
帰化申請者が日本と場所的関連性があることが帰化の判断をするうえで重要な条件として最初に規定されています。帰化の申請をする時まで、引き続き5年以上日本に住んでいることが必要です。
これまでに五年間以上、継続して住所を有していても、帰化申請時に外国に住所があったり、前後を通じて五年以上住所があったとしても途中で中断していた場合は、「引き続き五年以上日本に住んでいる」の要件には該当しません。
なお、住所は、適法なものである必要があり、正当な在留資格を有していることが求められます。在留資格のない不法滞在者は帰化申請ができません。
2 能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
年齢が18歳以上であって、かつ、本国の法律によっても成人の年齢に達していることが必要です。
日本の成人年齢は18歳以上ですが本国(帰化申請をする外国人の出身国)の成人年齢が20歳の場合は20歳になるまでは能力要件を満たさないことになります。
3 素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
帰化により日本人となった者により社会の安全が害されては困るのでこのような規定が設けられました。素行が善良であることが必要です。
素行が善良であるかどうかは、犯罪歴の有無や態様、納税状況や社会への迷惑の有無等を総合的に考慮して、通常人を基準として、社会通念によって判断されることとなります。
4 生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
生活に困るようなことがなく、日本で暮らしていけることが必要です。この条件は生計を一つにする親族単位で判断されますので、申請者自身に収入がなくても、配偶者やその他の親族の資産又は技能によって安定した生活を送ることができれば、この条件を満たすこととなります。
生計を一つにする親族単位で判断されるので、たとえば親と別居し、親の仕送りで大学に通っている成年の子供もこの条件を満たすことになります。
5 重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
帰化しようとする方は、無国籍であるか、原則として帰化によってそれまでの国籍を喪失することが必要です。
なお、例外として、本人の意思によってその国の国籍を喪失することができない場合については、この条件を備えていなくても帰化が許可になる場合があります(国籍法第5条第2項)。
6 憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
日本の政府を暴力で破壊することを企てたり、主張するような者、あるいはそのような団体を結成したり、加入しているような者は帰化が許可されません。
なお、日本と特別な関係を有する外国人(日本で生まれた者、日本人の配偶者、日本人の子、かつて日本人であった者等で、一定の者)については、上記の帰化の条件を一部緩和しています(国籍法第6条から第8条までに規定されています)。これを簡易帰化といいます。
簡易帰化について
簡易帰化については、条文上次のように定められています。
第六条 次の各号の一に該当する外国人で現に日本に住所を有する者については、法務大臣は、その者が前条第一項第一号に掲げる条件を備えていないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民であった子(養子を除く。)で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有する者
二 日本で生まれた者で三年以上日本に住居若しくは居所を有し、又はその父若しくは居所を有し、又はその父若しくは母(養父母を除く。)が日本で生まれたもの
三 引き続き一〇年以上日本に居所を有する者
本条は、日本国民と一定の血縁関係があるか、日本と一定の地縁関係がある外国人であって日本に住所がある外国人が帰化をする場合には、帰化条件の一つである居住要件(五条一項一号)を必要としないこととしたものです。帰化条件の一部を緩和した簡易帰化に関する規定です。
第六条では居住要件を緩和しています。
国籍法第七条
日本国民の配偶者たる外国人で引き続き三年以上日本に住所又は居所を有し、かつ、現に日本に住所を有する者については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号及び第二号の条件を備えないときでも、帰化を許可することができる。日本国民の配偶者たる外国人で婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有するものについても同様とする。
三年以上日本に住所または居所を有し、かつ、現在日本に住所を有する者であるか、または、婚姻の日から三年を経過し、かつ、引き続き一年以上日本に住所を有する場合に、国籍法第五条一項、二項で規定する住所要件と能力要件を緩和するものです。
日本国民の配偶者である外国人というためには、日本国民と外国人の婚姻が有効に成立し、かつ、帰化申請時に婚姻が継続していることが必要です。いわゆる偽装結婚は対象にはなりません。
第八条
次の各号の一に該当する外国人については、法務大臣は、その者が第五条第一項第一号、第二号及び第四号の条件を備えていないときでも、帰化を許可することができる。
一 日本国民の子(養子を除く)で日本に住所を有するもの
二 日本国民の養子で引き続き一年以上日本に住所を有し、かつ、縁組の時本国法により未成年であったもの
三 日本で生まれ、かつ、出生の時から国籍を有していない者でその時から引き続き三年以上日本に住所を有するもの
本条は前二条よりもさらに日本社会と密接な関係を有する者につき居住要件(五条二項一号)、能力条件(同条同項二号)および生計条件(同条同項四号)を、免除して、五条に規定する帰化条件のうち素行条件、重国籍防止要件、憲法遵守条件を満たせば、法務大臣が帰化を許可することができるというものです。
第九条
日本に特別の功労のある外国人については、法務大臣は、第五条第一項の規定にかかわらず、国会の承認を得て、その帰化を許可することができる。
日本に特別の功労のある外国人に対して、五条第一項に定める帰化条件を全く備えていなくても、法務大臣は国会の承認を得て帰化を許可することができます。
大帰化と呼ばれています。
帰化許可申請の方法について
本人(15歳未満のときは、父母などの法定代理人)が自ら申請先に出向き、書面によって申請することが必要です。
その際には、帰化に必要な条件を備えていることを証する書類を添付するとともに、帰化が許可された場合には、その方について戸籍を創設することになりますので、申請者の身分関係を証する書類も併せて提出する必要があります。
帰化の手続きに関しては、こちらの法務省HPにも手続きの説明があります。
申請先
住所地を管轄する法務局・地方法務局
帰化許可申請に必要となる主な書類
1 帰化許可申請書(申請者の写真が必要となります。)
2 親族の概要を記載した書類
3 帰化の動機書
4 履歴書
5 生計の概要を記載した書類
6 事業の概要を記載した書類
7 住民票の写し
8 国籍を証明する書類
9 親族関係を証明する書類
10 納税を証明する書類
11 収入を証明する書類
以上、帰化申請について該当条文を中心に解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、帰化申請手続きを取り扱っております。
帰化について疑問等があるときは、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所まで
お問合せください。
帰化について不安なこと,心配事がある方はこちらからお問い合わせください。
不法就労とは何か
不法就労の実態と法的対応について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
在留外国人の増加に比例して、在留外国人の日本での不法就労が深刻な社会問題となりつつあります。
ここでは不法就労の定義、事例、および不法就労者を雇用した場合の法的対応について、事例を交えながら詳しく解説します。
不法就労とは何か
不法就労とは、適切な在留資格や就労許可なく日本で働く行為を指します。これには、在留資格の条件に反して働くことや、在留資格なしで働くことが含まれます。不法就労は、失踪者側が金銭を得る目的による経済的な必要性、雇用者側の責任による労働環境の悪化等によって引き起こされます。
不法就労は、不法就労者の労働者としての権利侵害や雇用保険・労働災害保険等、社会における労働保障システムへの悪影響をもたらします。
不法就労は出入国管理及び難民認定法(以下法)違反であり、刑事罰の対象となります。
また不法就労者だけではなく、不法就労者を雇用する側も罰せられる場合があります(不法就労助長罪:法73条の2第1項)。
不法就労は日本の法律に違反する行為であり、刑事罰の対象となります(法第70条第4項)。
具体的には、不法就労者は逮捕や拘留、罰金、さらには強制退去の対象となることがあります。(法第24条四項ロ)
不法就労が発覚した場合、捜査機関はまず、在留資格の有無や就労の事実を調査します。
その後、不法就労者は出入国管理局による調査を受け、場合によっては退去強制令書が発行されます。
このプロセスは、個々の事情に応じて異なる場合があります。
雇い主として気をつけること
不法就労を助長する雇用者に対しては、罰金や刑事訴追の対象となることがあります。
これは、不法就労を防止し、社会における適切な労働環境を保持するための重要な措置です。
雇用者は、外国人労働者の在留資格を確認し、法律を遵守する責任があります。
不法就労を防止するためには、政府と企業の両方が積極的な役割を果たす必要があります。
外国籍の人を雇い入れる場合、雇い主としてはビザ・パスポートの有効性を確認しておきましょう。
昨今、偽造のパスポートや在留カードを用いて就労を図ろうという事案も発生してます。
偽造の在留カードやパスポートを使われた場合、事業主としても可能な限り「有効なものか/偽造ではないか」を確認しておかなければいけません。
出入国在留管理局のホームページで、在留カードが偽造のものではないかどうか簡単にチェックすることができます。
こちらのサイトから確認することができます。確認の際には在留カードの番号と在留期限を入力する必要がありますので、事前に確認しておきましょう。
この問題の厄介な所は、不法就労をした外国人のみならず、不法就労の外国人を雇い入れた事業者側も処罰の対象となることです。仮に雇い入れた外国人が不法就労者であったとしても、在留資格を確認しなかった等事業者側にも過失がある場合には不法就労助長罪が適用される虞があります。
不法就労について疑問点や気になることがあるときは、一人で悩まずに是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問い合わせください。
不法就労事件についてお困りの方、心配なことがある方はこちらからお問い合わせください。
難民認定制度とはなにか
2023年6月9日、出入国管理及び難民認定法が改正され、令和5年12月1日から順次施行されることが決まりました。
我が国における難民認定についてどのような制度がとられているのかについて、難民認定申請で適用される条文の解説を中心に弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
難民認定手続きについてはこちらもご参考下さい。
「難民」とは?
そもそも難民とは具体的にどのような人たちを指しているのでしょうか?「難民」の定義については、難民条約1条において以下のように定義されています。
第1条【「難民」の定義】
(a)人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
(b)国籍国の外にいる者であること
(c)その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること
の3つの要件に該当する人を定義しています。「外務省HP」
以下,それぞれ解説をします。
(a)「迫害」について
「迫害を受けるおそれ」があるというのは,次のような状況にあることを言います。
「原則として政府の行為であり、一般の私的機関や私人によるものは、通常「迫害」になりません。
ただし、事実上政府と同様の立場にある機関の行為や、私的機関の行為であっても、政府がそれを意図的に容認し若しくは放置している場合には、「迫害」にあたり得る。」
次に「迫害」は、「人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見」を理由とするものでなければいけません。」
「「迫害」を受ける恐れがあるという十分な理由のある恐怖を有していたとしても、その「迫害」がこれらの理由によらない「迫害」である場合には、「難民」に該当しない。」
とされています。
「恐怖」の要件について
恐怖が十分に理由のあるもの「十分に理由のある恐怖」であることが必要であり、「十分に理由のある恐怖」といえるためには内心の恐怖が、客観的な状況により裏付けられていなければなりません。
「入管法大全P570」
我が国における難民認定申請手続きについて
外国人が難民を求める手続きは、出入国管理及び難民認定法(以下法)第61条の2で規定されています。
【難民の認定】【第61条の2 】
法務大臣は、本邦にある外国人から法務省令で定める手続きにより申請があったときは、その提出した資料に基づき、その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。
以下,条文の要件について解説します。
【本邦にある外国人】
日本の領域内にいる外国人・日本の領域内にいる外国人。不法滞在も含まれます。実際に日本の領域内にいることが必要です。
我が国の在外公館に庇護を求めて入ってきた者が、そこで難民申請を行うことはできません。
【法務省令で定める手続きにより】
法務省令では以下のように定められています。
入管法施行規則55条により難民認定を申請しようとする外国人は、申請書及び難民に該当することを証する書類を資料並びに写真を地方入国管理局に出頭して提出しなければならない。ただし、身体の故障その他申請書を作成することができない特別な事情がある者にあっては、申請書の提出に代えて申請書に記載すべき事項を陳述することができる。
(規則55条3項)
当該外国人が16歳に満たない者であるとき又は疾病その他の事由により自ら出願することができないときは、当該外国人の父若しくは母、配偶者、子又は親族がその者に代わって申請を行うことができる。
【申請があったときは】
難民の認定は、認定を受けようとする外国人からの申請を受けて行われるという意味です。
【その提出した資料に基づき】
難民であることの立証責任は、難民の申請をした外国人にあるということです。
なお法第61条の2の14で、法務大臣は、難民の認定に関する処分を行うために必要がある場合には、難民調査官に事実の調査をさせることができます。
難民調査官は、事実の調査として、難民の認定を行った外国人が提出した資料についてその真偽を調べ、また、必要があれば、当該外国人に対して更なる資料の提出を求め、自らも調査を行って法務大臣が難民の認定の可否を判断するために必要な資料の収集を行う。
法務大臣は難民調査官の調査の結果を踏まえ難民認定の可否を判断します。
「入管法大全562~563」
法務大臣の判断には以下3種類の判断があります。
①難民認定・在留許可
②難民不認定・人道的配慮による在留許可
③難民不認定・在留不許可
難民不認定の処分・難民認定の取消しの処分に不服のある外国人は、法第61条の2の9第一項により法務大臣に対して異議申し立てをすることができます。
「法第61条の2の9第一項」
次に掲げる処分に不服のある外国人は、法務省令で定める事項を記載した書面を提出して、法務大臣に対して異議申立てをすることができる。
一 難民の認定をしない処分
二 第61条の2の7第1項の規定による難民の認定の取消し
この異議の申立ては難民申請を行った外国人が処分の通知を受けた日から7日以内に行う必要があります。
【申立て期間の特例】
法61条の2の9第二項で定める異議申立期間については行政不服審査法の特則を定める規定となっています。
行政不服審査法第4条第1項は、「外国人の出入国又は帰化に関する処分(第10号)」を行政不服審査法の規定による審査請求及び異議申立ての対象から除外していますが、
難民の認定に関する処分は除外していない。」ので、難民の認定をしない処分・難民の認定の取消しの処分に対しては、異議申立てが認められます。
行政不服審査法第45条の規定する異議申立期間は60日間のところ、難民の認定をしない処分については第61条の2第2項の通知を受けた日から、
また、難民の認定の取消しについては、第61条の2の7第2項の通知を受けた日からそれぞれ7日以内とすると定めています。
行政不服審査法による異議申立て期間よりも短い期間が定められているのは、難民であるか否かは、難民申請を行った外国人が最もよく知りうる立場にあることによります。
【法61条の2の9第3項ー難民審査参与員の意見聴取】
法務大臣は、難民の認定をしない処分又は難民の認定の取消しに対する異議申立てに対する決定を行うにあたっては、難民参与員の意見を聞かなければならないと定めています。
難民参与員は諮問機関であり難民参与員の意見には法的拘束力はありません。
3人の難民参与員によって構成される班が、一つの異議申立て案件を担当し合議制ではありません。それぞれが異なる意見を提出することもありえます。
法務大臣は難民参与員の意見を参考にしながら、難民の認定をしない処分又は難民の認定の取消しに対する異議申立てに対する決定を行います。
以上が難民認定申請から法務大臣の裁決までの条文上での流れになります。
経営・管理ビザの延長の注意点
在留資格「経営管理の期間更新許可申請」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
「経営管理」の在留期間の更新は、他の種類の在留資格と比較すると難易度が高いといえます。
なぜなら、「経営管理」の在留期間更新の条件には、新規取得時の要件と同等のものを求められるからです。
また、しっかりと経営ができているか否か、管理がきちんとなされているか否かといった視点から在留期間が更新可能かどうか審査されます。
以下にて、「経営管理」の在留期間更新時に求められる要件についてご説明いたします。
「経営管理」の在留資格の申請に関する書類は,出入国管理局HPからも確認ができます。
1.申請者の適正
「経営管理」の在留期間を更新するには、日本で定められている税金(所得税や法人税、住民税など)をきちんと納めていることや各種必要な届出を提出していること、また従業員の社会保険の加入等、申請者の適正が審査されます。
税金の支払いがなされていない場合や納税義務を果たしていない場合は、在留期間更新の審査において非常に不利な要素となります。
2.事業者としての義務の履行
「経営管理」の在留資格取得者の事業者の義務として、以下のようなことが求められます。
① 事業所の確保
事業所については、短期間の月単位契約の物件や簡易な造りの屋台を指定することはできません。
つまり、1区画を占めていて、一定の場所であることが条件となっています。
また、その物件の使用意図が店舗用、事業用、事務所等事業目的だということを示す必要があります。
住居用の一部を事業用等とする場合には、貸主がその条件に同意していることも示さなければなりません。
② 会社としての納税等
日本が定める国税については、遅滞なく納めていることが求められます。
法人税および所得税、地方税(住民税など)を納め、その証明を書類として保管しておきましょう。
③ 社会保険への加入や労働環境の整備等
雇用している従業員について、非正規従業員も含めて適切に社会保険へ加入させていること、労働関係法令に従っていることが求められます。
労働保険や厚生年金、健康保険などが適用される事業所である場合には、適切に加入手続きや保険料の納付を行いましょう。
3.事業の継続性
事業の継続性が安定しているかの判断は、売上が安定していることや黒字決算が望ましいですが、直近期末においての欠損金の有無や債務超過の状況によっては、事業の継続性があると認められる場合があります。
同期末に剰余金があり、当期純利益が直近期にあるならば、事業の継続性があると考えられます。
債務超過が1年以上継続していなければ、将来の事業の計画等を考慮して、直近期末に債務超過でない場合も事業の継続が可能と認められるケースがあります。
この場合、次の1年間の事業計画や売上予想を記した文書を提出することで、基本的には事業の継続性があるものと認められます。
「経営管理」の在留期間の更新については、基本的に1年更新であることが多いですが、3年や5年の在留期間を認められるためには、以下のような条件が認められることが必要になります。
① 安定的な義務の履行・事業の継続
初めの2年間で、事業の収益、売上を一定以上継続できていると、運営が安定的だと判断され、次回の在留期間の更新では3年や5年の長期の経営管理ビザが認められる可能性が高いです。
また、納税や従業員への社会保険加入手続きや保険料の納付など、事業者・経営者としての義務を果たしていることも重要です。
「経営管理」の在留期間の更新申請において、黒字決算であることは大切な要素です。
しかし、黒字にするために代表者の報酬を低くする方法は得策ではありません。
具体的な基準はありませんが、代表者への報酬を新卒社員よりも安く設定するような経営では、安定的な事業の継続がなされていると認められない可能性が高いといえます。
② 中長期の事業計画の提出
3年先や5年先といった中長期の事業計画を作成し、更新時に追加の資料として提出することをおすすめします。
また、1人で経営している事業よりも、複数名の従業員がいて、設備投資も行っている事業の方が入管からの評価が高い傾向にあります。
まとめ
以上のように、「経営管理」の在留期間の更新における審査は比較的厳しいといえますが、しっかりと事業を安定させていれば問題なく更新をすることができます。
在留資格「経営管理」の期間更新許可申請についてお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
不法就労助長罪とは何か?「知らなかった」の主張は?
「不法就労助長罪」について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が紹介します。
不法就労助長罪とは、入管法73条の2に規定されていますが、外国人に不法就労をさせたり、不法就労をあっせんしたりした者を処罰するものです。
働くことができない外国人と知りながら雇用したり、又は働くことができない外国人と知らなかったとしても身分確認などをきちんと行わないで雇用していた場合には罰せられることになります。
不法就労助長罪の対象となる人は、以下のとおりです。
・事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
・外国人に不法就労活動をさせるためにこれを自己の支配下に置いた者
・業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関しあつせんした者
なお、不法就労を助長した者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されます。
不法就労の主な種類は、以下のとおりです。
・不法滞在者や被退去強制者が働くケース
・就労できない在留資格で、資格外活動許可を受けていないにもかかわらず働くケース
・出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くケース
また、不法就労に該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができませんので注意が必要です。
ただし、過失のないときはこの限りでないとの規定があることから、適切な防御・対策を行っておく必要があります。
不法就労防止の対策例としては、以下のとおりです。たとえば、以下のようなことを下請企業に周知し、定期的に実施・報告書の提出を依頼するなどの対応が一例です。
・定期的な在留カード(原本)の確認
・在留資格が特定活動の場合には、指定書(パスポートに貼付)を合わせて確認
・複数のアルバイトを掛け持ちしていないことの確認(誓約書の提出など)
・就業時間数の確認
・留学生については、学校に在籍しており通学していることを確認(定期的に在籍証明書を提出させるなど)
・報酬の支払いは口座振込としていること
上記のように、「不法就労助長罪」については、故意がなくとも、知らなかったことに過失があれば罪に問われる可能性がありますので、可能な措置を怠らず、証拠を保存することをお勧めします。
不法就労助長罪については,こちらでも詳しく解説をしています。
「不法就労助長罪」のことでお困りの方は、お気軽にお問い合わせください。
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