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ビザ変更のガイドラインとは?

2024-12-10

在留資格の変更について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.在留資格の変更とは

在留資格の変更とは,在留資格を有する外国人が在留目的を変更して別の在留資格に該当する活動を行おうとする場合に,法務大臣に対して在留資格の変更許可申請を行い,従来有していた在留資格を新しい在留資格に変更するために許可を受けることをいいます。

この手続により,我が国に在留する外国人は,現に有している在留資格の下では行うことができない他の在留資格に属する活動を行おうとする場合でも,我が国からいったん出国することなく別の在留資格が得られるよう申請することができます。在留資格の変更を受けようとする外国人は,法務省令で定める手続にしたがって法務大臣に対し在留資格の変更許可申請をしなければなりません。

参考 ビザの変更に関するQ&A 法務省HP

2.在留資格変更のガイドラインについて

① 行おうとする活動が申請に係る入管法別表に掲げる在留資格に該当すること
申請人である外国人が行おうとする活動が、入管法別表第一に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる活動、入管法別表第二に掲げる在留資格については同表の下欄に掲げる身分又は地位を有する者としての活動であることが必要となります。

② 法務省令で定める上陸許可基準等に適合していること
法務省令で定める上陸許可基準は、外国人が日本に入国する際の上陸審査の基準ですが、入管法別表第1の2の表又は4の表に掲げる在留資格の下欄に掲げる活動を行おうとする者については、在留資格変更及び在留期間更新に当たっても、原則として上陸許可基準に適合していることが求められます。
また、在留資格「特定活動」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件」(特定活動告示)に該当するとして、在留資格「定住者」については「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第二の定住者の項の下欄に掲げる地位を定める件」(定住者告示)に該当するとして、上陸を許可され在留している場合は、原則として引き続き同告示に定める要件に該当することを要します。
ただし、申請人の年齢や扶養を受けていること等の要件については、年齢を重ねたり、扶養を受ける状況が消滅する等、我が国入国後の事情の変更により、適合しなくなることがありますが、このことにより直ちに在留期間更新が不許可となるものではありません。

③ 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。

④ 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価され、具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。

⑤ 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められますが、仮に公共の負担となっている場合であっても、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断することとなります。

⑥ 雇用・労働条件が適正であること
我が国で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断することとなります。

⑦ 納税義務等を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、履行していない場合には消極的な要素として評価されます。例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。
また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱います。

⑧ 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって我が国に中長期間在留する外国人の方は、入管法第 19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。

3.在留資格変更が難しいケース

① 短期滞在から中長期在留資格への変更
短期滞在からの在留資格変更申請は「やむを得ない特別な事情」がある場合以外認められません。「やむを得ない特別な事情」とは、人道上の真にやむをえない事情又はこれに相当する特別な事情がある場合に認められるもので、例えば、病気治療をする必要がある場合などです。

② 技能実習からの在留変更
技能実習からの在留資格変更は原則として認められません。
技能実習制度は、我が国で開発され培われた技能、技術又は知識の開発途上地. 域等への移転を図り、その開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的とするものであり、技能実習を終了しない段階での在留資格の変更は原則として認められません。

以上,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が在留資格変更申請手続きについて解説しました。
在留資格変更申請でお困りの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

お問い合わせはこちらからどうぞ。

「特定活動(告示46号)」について

2024-12-03

「特定活動(告示46号)」について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
(ケース紹介)

1.事例

Aさんはある政令指定都市でコンビニエンスストアを数店舗経営する経営者です。
Aさんは大手コンビニストアのフランチャイズに加盟しており、株式会社を設立して自ら代表取締役となり店舗運営を行っています。
最近コンビニエンスストアのアルバイト募集は求人難に直面しており、Aさんが経営する店舗も例外ではなく、アルバイトを募集してもさっぱり応募がなく、たまに応募が来ても採用後すぐにやめてしまいます。そこでAさんは日本人アルバイトの採用をあきらめ外国人留学生(大学・専門学校生)に絞ってアルバイトを採用をしています。
アルバイトの中にB子さんという外国人留学生がいます。
B子さんは現在大学3年生で今年でアルバイト歴5年目になります。日本語がとても堪能で仕事をてきぱきとこなします。AさんはB子さんの仕事ぶりを高く評価していおり、最近ではB子さんにレジ業務の他、商品の仕入れや商品企画、新人アルバイトの接客指導も任せています。
AさんとしてはB子さんが大学を卒業したらぜひ自分の会社で採用したいと考えています。
AさんはB子さんが大学卒業後、B子さんを自社の社員として採用してAさんが経営するコンビニ店舗の管理・運営を任せることができるでしょうか?

2.「特定活動(告示46号)」とは?設立の背景

従来から日本の大学等で学ぶ留学生が大学等を卒業後、日本の会社等で働く場合の在留資格として「技術・人文・国際業務」があります。

この在留資格は会社等に入社後、専門的・技術的な業務に従事することを目的としており①小売店における仕入れ、商品の企画や、通訳を兼ねた接客販売業務、②ホテルや旅館での翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報活動を行うものや、外国人の通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客をおこなうもの③介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いて介護業務に従事するもの等、事業所での事業活動としては大変重要度が高いものの、業務の中に「単純作業」が含まれるためにこれらの業務を行う場合は、在留資格「技術・人文・国際業務」での許可が認められてきませんでした。

近年インバウンド政策による来日外国人観光客の急増、技能実習生や特定技能外国人、外国人留学生アルバイト等外国人労働者の大幅な増加により、日本の様々な事業所における業務活動の中で、日本語があまり話せない外国人と日本人事業者側との橋渡し役となる日本語が堪能で、事業所の業務に精通した外国人人材の需要が高まってきました。

そこで上記①~③の事例にあるような、日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務を含む幅広い業務に対応できる外国人が日本で働くことができるようにするため、特定活動告示46号が2019年5月に制定されました。

特定活動ビザのための書類はこちら 参考:法務省HP

3.特定活動告示46号のポイント

単純作業を含む幅広い業務に対応が可能です。
例えば、食品製造会社において、商品製造ライン業務を特定技能外国人や技能実習生等の外国人に担う場合、彼らへの業務指導を行う者の存在が必要不可欠となりますが、この業務を特定活動46号の在留資格を持つ外国人社員に任せることができます。
日本語能力が十分でない技能実習生や特定技能外国人に対して、日本人が日本語で業務指導しても細かい情報の伝達が困難な場合があります。
意思疎通がうまくいかないことによる製造ラインでの作業ミスは、時として企業側にも作業者側にも甚大な損害を与えるおそれがあります。
外国人作業員に対して、日本語ではなく母国語による業務指導ができれば業務の伝達がスムーズに行われ伝達ミスによる重大事故を防ぐことが可能になります。

4.特定活動46号の対象者について

学歴要件として、日本の大学等を卒業した外国籍者が対象です。
対象となる者の学歴の範囲として①大学・大学院卒業、②短期大学、高等専門学校を卒業した者で学士の学位を付与されている者、③専修学校の専門課程を修了した高度専門士の称号が認められた者です。
日本語能力要件として、日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上、日本の大学・大学院で「日本語」を専攻して卒業した者です。
日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務について、単に雇用主等からの作業指示を理解し、自らの作業を行うだけの受動的な業務では足りず、いわゆる「翻訳・通訳」の要素のある業務や、自ら第三者へ働きかける際に必要となる日本語能力が求められ、他者との双方向のコミュケーションを要する業務であることを意味します。
*具体例として2.①~③。

従事する予定の業務内容について、通常の業務の中に一般的に日本の大学等において修得する知識が必要となるような業務、例えば商品企画、技術開発、営業、管理業務、企画業務(広報、教育等)が含まれている必要があります。

契約形態等について、日本の公私の機関との契約に基づき「常勤」の職員としての採用となります。
契約機関の業務に従事する活動のみが認められ、派遣社員として派遣先で就労活動を行うことは認められていません。「常勤」の職員としての採用となることから短時間のパートタイムやアルバイトは対象になりません。社会保険の加入は必須となります。報酬について、同種の業務に従事する日本人と同等額以上であるか、また、他の企業の同種の業務に従事する者の賃金を参考にして日本人と同等額以上であるかについて判断します。
家族の滞在について「配偶者」「子」については「特定活動」の在留資格により日本滞在が可能です。
参考:出入国在留管理局HP

以上、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「特定活動(告示46号)」について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では「特定活動(告示46号)」の在留申請業務を扱っております。
「特定活動(告示46号)」で外国人の採用をお考えの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

外国人が日本で事業を開始する際の注意点について

2024-11-26

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「外国人が日本で事業を開始する際の注意点について」について解説します。

1.日本で事業をするためのビザ

外国人が日本で事業を行うためには、日本国内で事業活動を行うための在留資格が必要です。
外国人が日本で事業活動をするのに必要な在留資格には2種類のタイプがあります。

一つ目が「永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者」の地位又は身分による在留資格です。
地位又は身分による在留資格は日本で行う仕事内容に制限がないので犯罪を行う仕事等反社会的目的でない限り仕事の種類に制限はありません。

二つ目が在留資格「経営・管理」です。
この在留資格は外国人が日本で事業を行う目的で在留するために設立された在留資格です。

「経営・管理」に関する申請書類はこちらから

外国人が日本で行う事業について、形態として個人事業と法人事業の2種類があります。個人事業は事業を行いたい人が自ら独立して事業を行う形態です。
法人事業は法人を設立して法人を主体として事業を行う形態です。    
法人の種類として、営利法人と非営利法人の2種類があります。
営利法人として株式会社・合同会社・合名会社・合資会社の4種類があります。
非営利法人にはNPO法人、一般社団法人、一般財団法人等があります。
日本での新規会社設立数は現在株式会社が1位で次が合同会社の順となっています。
2022年度の新規会社設立数は、株式会社が92,371件、合同会社が37,121件です。
近年合同会社の設立数が増加傾向にあります。
合同会社は2006年施行の会社法改正によって設置されました。
株式会社と合同会社は間接有限責任を取ることは同じですが、合同会社の場合は出資者が全員合同会社の社員となり会社経営に関与する点で、所有と経営の分離を定めた株式会社と大きく違っています。
合同会社は株式会社と比べて設立が容易で設立費用も少額で済み、株式会社にくらべ会社内部の組織形態が簡略化されており少人数での事業経営に向いています。

2.事業の目的について

個人事業又は法人事業どちらにおいても、事業を開始する前に事業目的を定める事が必要です。
会社を設立するためには、事業目的を定めて定款に記載し登記する必要があります。
事業には自由に始められるものと事業を行う前に許認可が必要な場合の2種類があります。
官公庁への事前の許認可が必要な場合として、飲食店の営業を行う場合の飲食店営業許可やトラック運送事業を行う場合の一般貨物運送事業許可等があります。
飲食店営業を行う場合でもキャバクラ・ラウンジ・スナック等で接待を伴う営業形態の場合は、飲食店営業許可の他に風俗営業許可が必要となります。
許可を取らずにこれらの事業を行った場合は罰則が科せられることがあります。
例えば許可を取らずにトラック運送を行った場合は、貨物自動車運送事業法第3条1項・第35条1項に違反し「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」が科せられる場合があります。

3.株式会社の資本金について

2006年の会社法改正により、株式会社設立において最低資本金は1円以上あればよい事になっています。これは外国人が日本で株式会社を設立する場合も同様です。
但し、身分又は地位による在留資格(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)では資本金1円でも会社を設立して事業活動が可能ですが、在留資格「経営・管理」を取得するために株式会社を設立する場合は、事業規模の要件として500万円以上の投資が必要となっている関係で資本金1円では大きな問題となります。
在留資格「経営・管理」における投資の有無は払込済資本金で判断されるので、資本金が1円では「経営・管理」の在留資格は認められないことになります。
従って株式会社や合同会社を設立して「経営・管理」の在留資格を取得しようとする場合は、株式会社では500万円以上の資本金、合同会社では500万以上の出資金が必要となります。

以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が「外国人が日本で事業を開始するため注意点について」について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留資格「経営・管理」の在留申請手続きを取り扱っています。日本で事業を行う目的で在留資格「経営・管理」をお考えの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

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不法就労における企業側の予防対策

2024-11-19

不法就労における企業側の予防対策について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.就労資格のない外国人が日本で働くための道具として、偽造在留カードが出回っています。
最近の偽造在留カードの中には大変精巧に作成されていて、素人目には本物と偽物の区別がほぼつかない物があります。
偽造在留カードを作成する目的は色々考えられますが、目的の一つに偽造在留カードを使って身分を欺いて事業所で働く目的があると考えられます。
不法滞在者の中には、不法滞在中に犯罪を生業にして生計を立てるよりは、きちんとした事業所で働いて安定収入を図る方が安全に生活出来て稼いだお金を本国に送金しやすいと考える者も少なからずいます。

就労資格のないにもかかわらず安定した仕事と定期収入の機会を狙って求人募集をしている事業所の面接を受け「自分は本当は在留資格がなく不法滞在なので本来仕事はできませんが、採用されたら日本人よりも頑張りますから採用してください」とアピールしたも、採用どころか不法滞在で入管に通報されるでしょう。
そこで偽造在留カードを作成して、人手不足で悩んでいる事業所をだまして就労する機会を得ようとします。

近年,中小メーカーを中心に人手不足が慢性化しており、中小メーカーを中心に派遣会社を通して募集しても人が来ない、ハローワークを通しても人が来ない等人手不足に悩む企業が多く、喉から手が出るほど人手が欲しい状況の中で、「採用するなら日本人限る」から「きちんと仕事してくれるなら外国人でも構わない」と企業側の採用マインドが変化してきています。
こうした背景において、人手不足で悩んでいる会社につけ込み就労資格のない外国人をあっせんして人手不足に悩む事業所に送り込むブローカーも絡んでいます。

2.偽造在留カードを提示されたことにより、正規の在留カードであると誤信して就労資格のない外国人を雇用した場合の受入れ側の責任について。
偽造在留カードであることを見抜けずあたかも就労資格のある外国人と思い込んでしまい、不法滞在者を主とする就労資格のない外国人を雇用してしまった場合、不法就労者を受入れた側は不法就労を見抜けなかったことについて不法就労助長罪等、不法就労に関する罪の成立を免れることはできるでしょうか?
不法就労助長について定めた入管法第七十三条の二には

「前各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らなかったことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない。」

とあることから、単に不法就労であることを知らなかったというだけでは不法就労をさせた責任を免れることはできません。

不法就労助長罪の適用を免れるためには、採用に当たり不法就労であることについて過失がなかったことまで求められます。
外国人の採用にあたって,「本当に働けるビザを持っているのか」という点を,適切な方法できちんと調べなければならないのです。面接のときに「ビザを持っていますか?」と口頭で聞くだけでは,「適切な注意を尽くさなかった」とされ,本当に不法就労であることを知らなかったとしても逮捕されたり,処罰されたりしてしまうことがあるのです。

また,不法就労をした側の外国人は、刑事罰の有無にかかわらず強制送還の対象となります。
例えば強制送還された外国人がメーカー等の生産工程に配属されていた場合、生産工程は作業者の人員区分が決まっているので、強制送還されて一度に何人もの人員が欠けると生産工程が人員不足でストップしてしまい、指定された期日に製品を納品することができないことも考えられます。
そうなると不法就労者を雇用してしまった事業者側は、経済的にも信用の面でも甚大なダメージを受けるおそれが生じます。
それゆえ継続的で安定した事業経営の為には、不法就労者の雇用は絶対に避けるべきです。

3.採用する側が偽造在留カードを見破る具体的方法について

在留カード等読み取りアプリを活用する方法があります。
在留カード及び特別永住者証明書のICチップに記録された氏名等の情報を表示させ、在留カード等が偽造されたものでないことを確認できるアプリケーションです。

在留カード等読み取りアプリケーション 出入国在留管理庁HP


偽造在留カードを見破るうえで効果的な方法ですが、確認には本人の同意が必要です。
もし本人が在留カードのアプリ確認に同意しないなら雇用は控えるべきです。

もう一つ偽造在留カードを見破る有効な方法として、採用にあたり住民票の提出を義務付けるという方法があります。
平成24年7月9日以降、3か月以上日本に滞在する外国人には日本人と同様に住民票が作成されることになりました。住民票と在留カードはセットになっており、在留カードが発行されれば住民票が発行され、在留カードが発行さなければ住民票も発行されません。

万が一在留カードの読み取りアプリの使用方法を間違っていたりカードの見落としがあっても、住民票と在留カードの記載事項を照合することにより,偽造在留カードを見破ることができます。
採用予定の外国人に住民票の提出を求めたときに、住所変更したので住民票がまだ出来ませんという回答や在留資格変更をしてまだ住民票に記載事項が反映されません、という回答があった場合は、住民票に変更事項が記載されるまで本採用は控えたほうが賢明でしょう。

住民票の偽造も全く考えられなくはないので、委任状を作成して本人の代わりに採用者側が住民票を取り寄せるという手もあります。
また技能実習生の転職は原則認められておらず、特定技能外国人の転職については事前に在留資格変更許可が必要であるということは、外国人を雇用する側の前提知識として押さえておくとよいでしょう。

以上不法就労と受け入れ側の対策について解説をしました。
外国人を不法就労させたことにより問題を抱えている事業者の方や外国人従業員の採用に当たって心配な方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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永住申請は難しくなったのか?許可基準を解説

2024-11-12

「最近永住許可申請が難しくなったのではないか?」という声を耳にすることがあります。
永住許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

直近では2024年6月にも永住許可に関するガイドラインが改訂され、納税、公的年金及び公的保険料の納付の義務を適正に履行されていることが永住審査の要件として追加されました。

2024年6月改訂版 永住許可ガイドライン 出入国在留管理庁HP

その結果、永住許可申請に必要な書類のハードルが改訂前よりも高くなりました。
最近永住許可を取るのが難しくなったという声をよく聞きます。
弊所においても,

「昔(今から20年以上前)の永住許可は簡単だった。2年間の社会保険納入歴の書類や5年間の納税・課税証明書の書類提出は求められておらず、永住許可を申請すれば誰でも取得できた」

という話を聞いたことがあります。

では近年永住許可は本当に取得するのが難しくなってきたのか、今から10年前の2014年と昨年(2023年)を比較して検証してみたいと思います。

今から10年前の2014年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。
審査既決済件数 50,788件 うち許可数 35,800件 
許可率 東京入管管轄 68,6% 名古屋入管管轄 68,5% 大阪入管管轄 73% 全体の許可率は70%

2023年度の永住許可申請の許可件数と許可率は以下の通りです。          
審査既決件済件数 50,986件、うち永住許可 33,470件
許可率 東京入管管轄 71% 名古屋入管管轄 59% 大阪入管管轄 64% 全体の許可率は71%

上記の通り10年前の2014年と最近(2023年)の永住申請の年間の既決済件数と入管ごとの許可率、全体の許可率はさほど変わっていません。

ではなぜ永住許可を取得するのが難しくなったというイメージが持たれているかというと、永住許可申請に求められる必要書類のレベルが高くなっている事が原因と考えられます。
2019年に永住許可申請の見直しがあり、住民税の課税証明書・納税証明書の提出期間が3年から5年に変更され、新たに年金・健康保険の記録が2年分が追加となりました。
こうしたことから永住許可申請のハードルが上がり、最近永住許可申請が難しくなったというイメージを持たれているのだと思います。

ではなぜ永住許可申請のハードルが10年前と比較して明らかに上昇しているにもかかわらず、ここ10年の永住許可申請の申請数と許可率にあまり変化がないのかということですが、近年永住審査のハードルが上昇しているとが永住申請者側に浸透しており、申請の段階で許可の通る見込みのない申請は自主的に控えていること、現在の永住許可申請の審査基準に申請側が合わせてきていることが考えられます。

審査の基準

永住申請の審査のポイント以下の3つです。
1.素行が善良であること
2.独立の生計を営むに足りる能力を有すること
3.国益要件

素行善良要件とは以下の(ア)(イ)(ウ)のいずれにも該当しない者を指します。
(ア)日本国の法令に違反して、懲役、禁錮又は罰金に処せられた事がある者。
ただし、刑の消滅の規定の適用を受ける者又は執行猶予の言渡しを受けた場合で当該執行猶予の言渡しを受けた場合で取消されることなく当該執行猶予の期間を経過し、
その後更に5年を経過したときは、これを該当しないものとして扱う。
(イ)少年法による保護処分(少年法第24条第1項第1号又は第3号)が継続中の者。
(ウ)日常生活又は社会生活において、違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行う等,素行善良と認められない特段の事情がある者。
上記の(ア)(イ)(ウ)以外に該当しない人が素行には特に問題がないと判断されるということになります。

独立生計要件とは、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その者の職業又はその者の資産等からみて将来において安定した生活を見込まれることをいいます。
生活保護を受給しておらず、現在及び将来について自立して生活することが可能と見込まれる必要があります。安定した生活を見込まれる際の収入はどれくらいかということですが、申請者一人300万+扶養者一人追加ごとに80万が相場と言われています。
実務上の感覚でもおよそこのくらいの収入は必要と思われます。   

国益要件とは、長期間にわたり我が国社会の構成員として居住していることです。
具体的な要件は以下の①、②となります。
①原則として引き続き10年以上日本に在留していること。ただし、この10年以上の期間のうち就労資格(「技能実習」及び「特定技能1号」を除く)又は居住資格(定住者等)をもってひき続き5年以上日本に在留している事が必要です。
②公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理管理及び難民認定法に定める届出義務)を適正に履行していることを含め、法令を遵守していることが必要です。
②に関しては以下の書類の提出が必須となっています。 
(出入国在留管理局2019年5月31日改訂)
住民税の課税証明書・納税証明書 5年分
国民年金及び厚生年金・健康保険及び国民健康保険の記録 2年分
国税の納税証明書 1年分 

以下永住許可申請に当たり注意すべき事項を挙げます。

*国益要件に関して、日本人、永住者又は特別永住者の配偶者については、実体を伴った婚姻が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留している必要があります。
実子又は特別養子については、引き続き1年以上です。
日本人、永住者又は特別永住者の実子又は特別養子については直近1年です。
日本人、永住者又は特別永住者及び養子については直近3年です。 

*税及び保険料納付に関して、納めるべき税金は全て納めてから申請すること。社会保険に関しては、必ず申請直近2年分を全て納めてから申請すること。
申請してから未納が発覚して慌てて追納しても、申請要件として定める期間に納付したとは認められず、追納した日を基準日として新たな納付が必要となります。        
*特に社会保険については1か月でも納入漏れがあればアウトなので、申請前の直近2年間は毎月期限通りに社会保険を納めて、納入漏れがないように注意すること。

以上弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が永住許可申請について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では永住許可申請について取り扱っております。
永住許可申請をお考えの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。 

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在留特別許可の申請とは

2024-10-29

在留特別許可について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.在留特別許可とは?

退去強制の対象となった外国人の異議の申出に理由がないときでも、法務大臣の裁決により在留を特別に認める制度です。
在留特別許可については、「人道的な見地から特別許可を主張することはできても、在留特別許可を請求する具体的請求権はない」とされています(参考:入管法大全474頁)。

在留特別許可については出入国管理及び難民認定法(以下法)第50条に規定されています。

法第五十条 法務大臣は、外国人が退去強制対象者に該当する場合であつても、次の各号のいずれかに該当するときは、当該外国人からの申請により又は職権で、法務省令で定めるところにより、当該外国人の在留を特別に許可することができる。ただし、当該外国人が無期若しくは一年を超える拘禁刑に処せられた者(刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者及び刑の一部の執行猶予の言渡しを受けた者であつてその刑のうち執行が猶予されなかつた部分の期間が一年以下のものを除く。)又は第二十四条第三号の二、第三号の三若しくは第四号ハ若しくはオからヨまでのいずれかに該当する者である場合は、本邦への在留を許可しないことが人道上の配慮に欠けると認められる特別の事情があると認めるときに限る。
一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2前項の規定による許可(以下この条において「在留特別許可」という。)の申請は、収容令書により収容された外国人又は監理措置決定を受けた外国人が、法務省令で定める手続により、法務大臣に対して行うものとする。
3在留特別許可の申請は、当該外国人に対して退去強制令書が発付された後は、することができない。
4在留特別許可は、当該外国人が第四十七条第三項の認定若しくは第四十八条第八項の判定に服し、又は法務大臣が前条第三項の規定により異議の申出が理由がないと裁決した後でなければすることができない。
5法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断に当たつては、当該外国人について、在留を希望する理由、家族関係、素行、本邦に入国することとなつた経緯、本邦に在留している期間、
その間の法的地位、退去強制の理由となつた事実及び人道上の配慮の必要性を考慮するほか、内外の諸情勢及び本邦における不法滞在者に与える影響その他の事情を考慮するものとする。
6法務大臣は、在留特別許可をする場合には、法務省令で定めるところにより、在留資格及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。
7法務大臣が在留特別許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、出入国在留管理庁長官は、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
8法務大臣は、在留特別許可をするかどうかの判断をしたときは、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
9主任審査官は、法務大臣から在留特別許可をする旨の通知を受けたときは、その者が被監理者であるときを除き、直ちに当該外国人を放免しなければならない。
10 法務大臣は、在留特別許可の申請があつた場合において在留特別許可をしない処分をするときは、法務省令で定める手続により、速やかに理由を付した書面をもつて、当該申請をした外国人にその旨を知らせなければならない。

在留特別許可が認められる「特別な事情」については、以下一から五まで規定があります。

一永住許可を受けているとき。
二かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四第六十一条の二第一項に規定する難民の認定又は同条第二項に規定する補完的保護対象者の認定を受けているとき。
五その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。 

2.在留特別許可が認められる場合

在留特別許可申請の典型例として、五「その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき」を理由とする日本人配偶者と結婚したことにより「日本人の配偶者等」の在留特別許可を申請する場合があげられます。
在留特別許可における「日本人の配偶者等」の該当性を判断するのに際して、①永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営んできたか(婚姻関係が客観的に安定かつ成熟していると判断される場合)②退去強制を免れるために、婚姻を偽装し、又は形式的な婚姻届を提出した場合でない。
ことの2点が在留特別許可申請の審査において重要なポイントとなります。

参考:法務省HP

3.「駆け込み婚」について

オーバーステイ等で逮捕された、あるいは入管収容施設に収容されてから日本人や永住者等と結婚することを「駆け込み婚」といいます。
「駆け込み婚」での日本人の配偶者の該当性判断については、上記①、②の観点から婚姻生活の実質があるかどうかが判断されます。 
「駆け込み婚」に関する裁判例としては次のものがあります。

①婚姻の届出は裁決の3週間前であり、同居もしていないから、その婚姻関係は客観的かつ安定して成熟しているといえない(東京地判平成22年4月28日 平成20(行ウ)484,485)。
②婚姻が届けられた日は、裁決がされた日より約10日前であったにすぎず、このような状況を考慮すると、たとえ両者の間に真摯な愛情が保たれているとしても、その家族的結合の事情は、在留特別許可の拒否の判断において、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度に至っていることはできない。(東京地判平成20年6月27日 平19(行)424)
③両者の間に同居事実はなく、週1,2回程度Aが原告宅に泊まる程度で、しかも婚姻したのは、本件裁決の約1か月前にすぎないことからすると、直ちに法的保護に値すると評価しなければならない程度にいたっているとはいえない(東京地判平成20年1月18日平19(行ウ)57」等があります。
参考:入管法大全486~487頁            

上記の判例から明らかなように、警察に逮捕されたあるいは入管施設に収容されたということで「日本人の配偶者」の身分を得るために結婚したとしても、単に「婚姻の事実」だけで在留資格が得られるわけではありません。
婚姻生活において「永続的な精神的及び肉体的結合を目的とする真摯な共同生活が存在」することが必要となります。

4.在留特別許可申請に際して注意すべき点

在留特別許可の申請は退去強制令書が発付された後は申請することが出来ません(法50条第3項)。
退去強制令書が発付された後に在留の許可を特別にお願いする方法として「再審情願」と呼ばれる在留特別許可による申請がありますが、「再審情願」は法により規定された手続きではなく、在留許可の判断における入管による裁量も法50条第1項で規定された在留特別許可よりも広いとされており、在留特別許可申請よりも入国管理局の審査はきびしくなります。      

5.在留特別許可申請の受付期間について

①又は②のいずれの時から、退去強制を発付される時までの期間です。

① 就労令書により収容されたとき(仮放免許可を受けている場合を含む)
② 監理措置に付されたとき

以上、在留特別許可申請について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は在留特別許可申請を扱っています。
なんらかの理由により在留資格がなくなってしまったが、どうしても日本に在留したい方は是非,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

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在留資格「経営・管理 」における事業所の設置基準

2024-10-22

在留資格「経営・管理」とは、事業の経営・管理業務に外国人が従事するために設けられた在留資格です。「経営・管理」の在留資格が認められるためには、事業を営むための事業所が日本国内に存在している必要があります。
「経営・管理」の在留資格を得るための要件の一つである事業所の設置要件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

1.事業規模に応じたカテゴリー

在留資格「経営・管理」には事業所の規模(カテゴリー)に応じて審査基準が設けられており、カテゴリー1からカテゴリー4に区分されています。

カテゴリー1
①日本の証券取引所に上場している企業
②保険業を営む相互会社
③日本又は外国の国・地方公共団体
④独立行政法人
⑤特殊法人・認可法人
⑥公益法人等です。

カテゴリー2
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表中、給与所得の源泉徴収表の源泉徴収税額が1,500万円状ある団体・個人

カテゴリー3
前年度分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表が提出された団体・個人
(カテゴリー2を除く)

カテゴリー4
カテゴリー1,2,3のいずれにも該当しない団体。

2.事業所の確保のための審査基準(基準省令第1号)

「事業を営むための事業所が本邦に存在すること。ただし、当該事業が開始されていない場合は、当該事業を営むための事業として使用する施設が本邦に確保されていること。」と以下のアとイの2つの要件を充足していることが必要です。

ア 経済活動が単一の経営主体の元において一定の場所すなわち一区画を占めておこなわれていること
イ 財貨及びサービスの生産又は提供が、人及び設備を有して、継続的におこなわれていること 

カテゴリー3と4では、事業所が確保されていることを証明する書類として、「不動産登記事項証明書」や「賃貸借契約書」が必要です。
要件アから事業所は独立した区画である必要があります。

3.住居を事業所とする場合

住居を事務所とすることは原則認められませんが、例外的に住居を事業所とすることが認められる場合があります。
以下、事例1から3まで住居を事業所とするが、要件アの「経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われている」と認められる事例を紹介します。

事例1
Aは、本邦において個人経営の飲食店を営むとして在留資格変更許可申請を行ったが、事務所とされる物件に係る賃貸借契約における使用目的が「住居」とされていたものの、貸主との間で「会社の事務所」として使用 することを認めるとする特約を交わしており、事業所が確保されていると認められたもの。

事例2
Bは、本邦において水産物の輸出入及び加工販売業を営むとして在留資 格認定証明書交付申請を行ったところ、本店が役員自宅である一方、
支社として商工会所有の物件を賃借していたことから、事業所が確保されていると認められたもの。

事例3
Cは、本邦において株式会社を設立し、販売事業を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、会社事務所と住居部分の入り口は別となっており、事務所入り口には 会社名を表す標識が設置されていた。また,事務所にはパソコン、電話、事務机、コピー機等の事務機器が設置されるなど事業が営まれていることが確認され、事業所が確保されていると認められたもの。

4.事業所として認められなかった事例

住居を事業所とするが、経済活動が単一の経営主体のもとにおいて一定の場所すなわち一区画を占めて行われていると認められなかった事例を紹介します。
事例4
Dは、本邦において有限会社を設立し、当該法人の事業経営に従事するとして在留期間更新許可申請を行ったが、事業所がDの居宅と思われたことから調査したところ、郵便受け、玄関には事業所の所在を明らかにする 標識等はなく、室内においても、事業運営に必要な設備・備品等は設置されておらず、従業員の給与簿・出勤簿も存在せず、室内には日常生活品があるのみで事業所が確保されているとは認められなかったもの。

事例5
Eは、本邦において有限会社を設立し、総販売代理店を営むとして在留資格認定証明書交付申請を行ったが、提出された資料から事業所が住居であると思われ、調査したところ、2階建てアパートで郵便受け、玄関には 社名を表す標識等はなかったもの。また、居宅内も事務機器等は設置されておらず、家具等の一般日常生活を営む備品のみであったことから、事業所が確保されているとは認められなかったもの。

5.事業所を設置する際の注意点

①事業所が賃貸物件であるときは、当該物件に係わる賃貸借契約においてその使用目的を事業用、店舗、事務所用等事業目的を明らかにする必要がある。
②賃貸借契約者のついては当該法人等の名義とし、当該法人等による使用であることを明らかにする必要がある。
③月単位の短期賃貸スペース等を利用したり、容易に処分可能な屋台等の施設を利用したりする場合には、それを合理的とする特別な事情がない限り、「事業所の確保」の要件に合致しているとは認められない。
④事業所は実際に事業が営まれている場所であることが必要であり、住所及び電話番号等を借り受け、電話にはオペレーターが対応し、郵便物を転送するなど実際に経営又は管理を行う場所は存在しない「バーチャル・オフイス」等と称する形態は、事業所とは認められない。

6.住居として賃借している場合の注意点

①住居目的以外での使用を貸主が認めていること
②借主も当該法人が事業所として使用することを認めている。
③当該法人が事業を行う設備等を備えた事業目的占有の部屋を有していること
④当該物件に係わる公共料金等の共用費用の支払いに関する取り決めが明確になっていること
⑤看板等を揚げていること。
参考文献:出入国在留管理局HP 

以上,在留資格「経営・管理」の事業所設置基準について解説しました。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では在留資格「経営・管理」を取り扱っております。在留資格「経営・管理」について在留資格認定証明書、更新、変更申請についてお考えの方は,弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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日本国籍喪失による在留資格申請と帰化申請について

2024-10-15

日本国籍喪失による在留資格申請手続きと帰化申請手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所がQ&A方式で解説します。
( 架空の事例です。)

参考:帰化許可申請/法務省HP

ケース1

Aさんは大学時代にアメリカの大学に留学しました。
大学卒業後、アメリカでの生活が気に入りそのまま現地の会社に就職しました。
就職先で知り合ったアメリカ人女性と結婚し、永住権を取得した後、Aさんはアメリカ国籍を取得しました。
Aさんがアメリカ国籍を取得してから数年経った頃、日本にいる両親からAさんに連絡がありました。
Aさんがアメリカに移住してから既に20年以上が経過し、Aさんの両親が高齢になってきたことからこの先実家のことをどうすればいいか相談したいという内容でした。
Aさんは3人兄弟の長男で、いずれは日本に帰って両親の面倒を見ていきたいという気持ちを強く持っています。

Q アメリカ人としてアメリカに住むAさんが、日本に戻って実家の管理や親の面倒をみるにはどのような手続きが必要になるでしょうか?
A 国籍法11条1項「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う。」
国籍法11条1項からAさんはアメリカ国籍を取得したと同時に日本国籍を喪失しています。そのためAさんはアメリカ国籍者として日本に入国する手続きを取る必要があります。
具体的な方法としては、Aさんが3か月以上日本に滞在する場合は在留資格認定証明書により、日本にいるAさんの両親がアメリカにいるAさんを呼寄せる形をとります。
この場合申請取次の資格のある行政書士等、在留申請手続きの専門家の力を借りると在留申請手続きがスムーズに進むでしょう。

Aさんの両親は日本人なので、Aさんは日本人の実子の身分となり、在留資格「日本人の配偶者等」の資格で日本に入国手続きをすることになります。
Aさんの両親のどちらかがAさんの身元保証人となります。日本とアメリカの双方でAさんの在留資格認定証明書申請に必要な書類を集めます。
Aさんが来日後に両親の住む実家で生活する場合は、実家の住所を管轄する地方出入国在留管理局に「日本人の配偶者等」の在留資格認定書を申請します。

ケース2

Aさんの手元に期限未到来の日本国パスポートとアメリカのパスポートがあったので、アメリカ人として日本に入国するより日本人として入国した方が手続きが楽だろうと考え,Aさんは日本のパスポートを使って来日することにしました。

Q Aさんが日本国のパスポートで日本に入国した場合、Aさんにはどのような不都合が生じるでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍を取得した時点で日本国籍を失っていることから、Aさんが所有する日本国のパスポートは無効となります。

Aさんは無効なパスポートを使って日本に入国したことになり、不法入国(出入国及び難民認定法3条1項)の罪により、3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは3百万円以下の罰金の刑に処せられるおそれがあります。パスポートの選択については十分な注意が必要です。

ケース3

Aさんが日本に帰国してから取り寄せた自分の戸籍事項証明書には自分の名前が記載されてありました。
Q この場合、Aさんの戸籍はどのような扱いになるのでしょうか?
A Aさんはアメリカ国籍取得と同時に日本国籍を失っているので、Aさんが日本国籍を喪失していることは間違いありません。
Aさんは国籍喪失の届出を自分が国籍喪失を知ったときから3か月以内に在アメリカ日本大使館又は自分の本籍地にある市町村役場に届け出る必要があります。
Aさんがこの届出を失念していると、Aさんの戸籍事項証明書の記載が訂正されずそのままになっている可能性があります。       
Aさんはアメリカ国籍を取得したことにより日本国籍は「実質的」に失われていますが、国籍喪失届を提出していないので、戸籍事項証明書からはAさんの名前は削除されず残っておりAさんの日本国籍は「形式的」に残っている形となっています。
そのためAさんは本籍のある市町村役場に自分の国籍喪失届を提出して「形式的」にも自分の日本国籍を喪失させる手続きが必要となります。

ケース4

Aさんは日本で仕事先も決まり、この先アメリカに戻ることなくアメリカにいる妻と子どもを呼寄せて、日本で暮らしていきたいと考えています。
Q Aさんがこの先アメリカに戻らず日本で暮らしていく場合、どのような手続きを取ればよいでしょうか?
A この場合は「日本人の配偶者等」の在留資格から帰化申請手続きにより日本国籍を取得する方法があります。
国籍法8条3項で規定されている簡易帰化の方法によります。
Aさんは元日本国籍者で日本に住所を有するものであることから、国籍法第5条で規定する一、二、四の条件を備えないときでも、帰化許可申請が可能となります。
一 引き続き5年以上日本に住所を有すること。(居住要件)
二 十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること(行為能力)
四 自己または生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること(生計要件)
以上,国籍喪失と在留資格申請・帰化手続きについて弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説しました。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、日本国籍喪失による在留資格の申請、帰化許可申請手続きについて取り扱っております。国籍喪失後の在留申請手続きについてお悩みの方は、是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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刑事・行政処分後の在留資格

2024-10-08

在留期間中に刑事処分や行政処分を受けた場合、その後の在留手続きはどうなるのか?弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が1から5までのケースに分けて解説します。

1.在留期間中に刑事事件をおこして無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられたケース

このケースでは、在留期間中に刑務所で服役することになります。服役期間中に在留期間が経過すると在留資格はなくなります。
服役中に入管審査官が退去強制手続きを進めることがあります。

どのような場合に退去強制(強制送還)となるのか,また,それはどのような手続きで進むのかは,出入国管理及び難民認定法に規定があります。

刑期満了又は仮釈放後は日本人のように刑務所から外に出られるわけではなく、刑務所から出入国在留管理署(以下入管)内にある入管収容施設に直接移送され収容されます。
収容令書により入管収容施設に収容されたまま退去強制手続きが進行します。
入管収容施設に収容される期間は原則として30日以内であり、収容されてから30日以内に被収容者に対して退去強制処分を出すか否かが決定されます。
被収容者に退去強制処分が出された場合、被収容者がどうしても帰国できない事情があって日本に在留したい場合は、入管の担当部署に在留許可申請(再審情願)を行います。
入管収容施設に収容されて収容施設から外に出て生活したい場合は、収容施設にある入管の担当部署に仮放免又は監理措置の申請をします。

2.出入国管理及び難民認定法(以下法)第24条で定める退去強制に該当する事由により刑事処分を受けたケース

法24条で定める退去強制事由により在留期間中に刑事処分を受けた場合は、仮に1年以下の懲役若しくは禁錮又は執行猶予付きの判決に処せられた場合であっても、法24条で定める退去強制事由以外の罪で無期又は1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられた場合と同様に、在留期間中に退去強制手続きが始まります。
入管で法24条が定める退去強制事由に該当すると判断された場合、入管収容施設に収容される場合とされない場合があります。
本ケースで引き続き日本に在留したい場合は、入管が退去強制処分を出す前に在留特別許可申請を行い在留許可を得る必要があります。
法24条に該当する事由があると認定され、法務大臣により在留を認めるべき特別の事情があるとの認定がされなければ退去強制処分が確定します。
退去強制処分を受けた者がどうしても日本に残らなければならない事情がある場合は、再度の在留許可申請(再審情願)を行います。
法24条で定める退去強制該当事由として、他人名義のパスポートによる不法入国、不法就労のあっせん、在留カードの偽造又は所持、在留カードの偽造、不法就労、在留期間超過、人身取引、旅券法違反、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反、覚醒剤取締法違反等で有罪判決を受けた場合、売春又は売春のあっせん、勧誘等があります。
出入国管理行政の根幹を揺るがしかねない犯罪類型を限定列挙しています。

3.法24条列挙事由以外の罪で、1年以下の懲役若しくは禁錮又は罰金に処せられたケース。

原則として在留期間中に退去強制手続きは始まらず次の在留期間まで在留資格は継続します。刑事処分後の在留更新の時に刑事処分時の在留状況を審査されます。
在留更新の審査で「素行に問題がある」と判断され在留更新が認められない場合があります。

4.法24条列挙事由以外の罪で1年を超える懲役若しくは禁錮に処せられたが執行猶予の言渡しを受けたケース。

3と同様の扱いとなりますが、4のケースでは刑事処分後の在留更新は「素行に問題あり」として更新が認められることはかなり厳しくなります。

5.在留期間中に速度超過や駐停車違反で行政処分を受けたケース。

速度超過や駐停車違反により行政処分を受けた場合、それだけで退去強制手続きに進むことはありませんが、
次の更新申請の時に「素行に問題あり」と判断され在留期間が短縮されることがあり得ます。

以上1から5までのケースに分けて刑事処分・行政処分を受けた後の在留手続きについて解説しました。
上記のケースから分かるように在留期間中に刑事処分を受けるとその後の在留更新手続きは極めて困難となります。
また行政処分のみの場合でも在留期間が従来の5年から1年に短縮したりすることもあります。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は在留特別許可、再審情願の手続きを扱っています。
在留期間中に刑事・行政処分を受けてしまいどうしていいかわからずお悩みの方は、お一人で悩まずに是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください

重国籍と国籍選択について

2024-10-01

重国籍と国籍選択について弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
                                
(架空の事例です。)

1.重国籍と国籍選択について

A子さんの父は戦前日本の統治下にあったT国の国籍で、母は日本国籍です。
A子さんの両親はA子さんの父親が日本の大学に留学しているときに留学先で知合い結婚しました。
父がT国籍でありA子さんもT国で生まれたことから、A子さんの両親はA子さんにT国籍を取得させることにしました。
A子さんの父は、A子さんの母が日本人であり日本の血を引いていること、将来A子さんが日本に行って生活することもあるだろうと考え、T国にある日本大使館でA子さんが出生後まもなくして国籍留保の手続き(国籍法十二条、戸籍法百四条)を行いました。
A子さんは小学校、中学校、高校まではT国で学び、大学からは日本の大学で学ぶことになりました。
成績優秀のA子さんは日本の国立大学薬学部に日本の一般の受験生と同じ筆記試験を受けて見事に合格しました。
A子さんはT国と日本の重国籍者でしたが、日本で生活していくには日本国籍者である方が何かと都合がよいだろうと考え大学時代は日本人で通していました。
A子さんは大学卒業後はT国に帰国して、日系の製薬会社に就職しました。
就職してからほどなくして、A子さんの自宅に日本の法務省から1通の封筒が届きました。封を開けると中には国籍選択をすべきことを催告する書面が入っていました。

国籍法第十四条一項「外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有する事となったときが十八歳に達するときであるときは二十歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはそのときから二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。」日本の国籍と外国の国籍を有する人(重国籍者)は、国籍法で決められた一定の期限までにいずれかの国籍を選択する必要があります。
この期間を失念して国籍選択の手続きを取らなかったときの手続きについては国籍法十五条に規定されています。
第十五条一項「法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期限内に日本の国籍を選択しないものに対して、書面により、国籍の選択をすべきことを催告することができる。」
A子さんは重国籍者であることから、本来十八歳になったら自ら国籍の選択をしなければなりませんが、A子さんはこの規定を知らなかったので国籍法十四条に規定されている国籍選択の意思表示をすることができませんでした。しかしながらこの期限を徒過していたとしても、重国籍者はいずれかの国籍を選択する必要があることから、T国にある日本大使館を通じて法務省からA子さんあてに国籍を選択すべきことを催告する書面が届いたのでした。
T国に家族や友人が多くおり、勤務先も日系薬品メーカーであるものの現地採用であり原則日本への転勤は原則ないことから、A子さんは自分の国籍はT国を選択することにして日本国籍は離脱することにし(国籍法十三条)、国籍離脱届をT国にある日本大使館に届けました。

2.国籍離脱後の手続きについて

A子さんが日本国籍離脱の届出をしてから数年経ちました。
A子さんは勤務する日系製薬会社で順調に昇進して管理職の立場になり、部下を数人持つようになりました。
A子さんが管理職に昇進した翌年、A子さんの日頃の実績を評価していたA子さんの上司がA子さんを日本本社の管理職に推薦しました。
日本本社は東京にあり、T国にある現地法人よりも規模が大きく、本社採用の管理職となると給与も現試採用より格段に高くなります。
A子さんは今後の社内でのキャリアを考え日本本社転勤の話を承諾しました。

Q 現在A子さんの手元には日本国のパスポートとT国のパスポートの2つがあります。A子さんは日本の会社で働くのだから日本人として日本のパスポートで入国する方がT国の外国人として生活するよりも楽だろうと考え、日本国のパスポートを使って来日する予定です。A子さんは日本国籍離脱の手続きをしているのにも関わらず日本のパスポートを使って入国できるでしょうか?

A A子さんは国籍離脱届を在T国日本大使館に提出しており、国籍離脱届を大使館に届け出た時点で日本国籍は失われます(国籍法第十三条)。
A子さんの手元には日本国のパスポートがあり、まだ有効期間が経過していないことからこのパスポートを使って日本に入国できるかが問題となりますが、A子さんは日本国のパスポートを使って日本入国は出来ません。なぜならA子さんは国籍離脱手続きにより既に日本国籍を失っており(実質的に国籍を失っている状態)、A子さんのパスポートは本来効力がありません。
無効なパスポートを使って有効であるように装って入国した場合は、不法入国(法第七十条一項)として3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
そこでA子さんはT国のパスポートを使って入国しなければなりません。

Q A子さんが日本本社で働くためにはどのような在留資格が該当するでしょうか?
A A子さんが日本本社で働くために必要な在留資格として、「企業内転勤」「技術・人文・国際業務」「研究」等が考えられます。
これらの活動の在留資格認定証明書によりA子さんを日本本社側から呼寄せます。

Q A子さんは日本本社で知り合った男性と結婚し子どもが生まれました。A子さんはこの先日本で生活していこうと考え、もう一度日本国籍を取得したいと考えています。
A子さんが再度日本国籍を取得するのはどのような手続きが必要になるでしょうか?

A A子さんが再度日本国籍を取得するためには帰化による方法があります。

A子さんは以前日本国籍をあり現在日本に住所があるので、国籍法第8条第3項により、通常の帰化手続きよりも、居住歴、行為能力、生計要件の点で優遇されます。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、国籍・帰化に関する手続きを取り扱っています。
重国籍で国籍についてお悩みの方は是非弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までお問合せください。

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